カメレオン・ライム・ウーピーパイに聞く、活動を通じたライブ表現の変化 アルバム『Orange』に与えた影響も
オレンジ色の髪がトレードマークのChi-によるソロユニット、カメレオン・ライム・ウーピーパイ(以下、CLWP)。2016年の始動以来、Chi-と仲間のWhoopies1号・2号とDIYで独自の表現を築き上げてきた。その音楽は国内のみならず海外にもじわじわと広がり、海外アーティストとのコラボも次々と実現。昨年8月には『SUMMER SONIC 2022』に出演、今年3月にはアメリカ・オースティンでの音楽見本市『SXSW 2023』でのパフォーマンスで熱狂を生み出すなど、その勢いはますます加速している。Chi-のパーソナルな体験や思いがリアルに綴られた歌詞と、それを料理するWhoopiesの音楽的センスとこだわり、そしてそのすべてを超アッパーで楽しいバイブスとともに放出するライブパフォーマンス。彼らが作るポップミュージックは、間違いなく世界で唯一無二のものだ。
今回のインタビューではChi-にCLWPのライブ表現の変化と、多くのオーディエンスに出会った経験が作品に及ぼしている影響について聞いた。5月にリリースされた記念すべき1stアルバム『Orange』を聴きながら読んで、改めてカメレオン・ライム・ウーピーパイとは何なのかに思いを馳せてほしい。そして7月には大阪・東京で初のワンマンライブも開催。ぜひその目で今のCLWPの姿を目撃してほしいと思う。(小川智宏)
やっぱり自分が楽しまないとお客さんが楽しめない
――前回2nd EP『MAD DOCTOR』のときにインタビューして以来、約1年ぶりになります。その間、カメレオン・ライム・ウーピーパイはかなりいろいろなチャレンジをしてきたと思います。Chi-さんはこの1年、どんなことを感じながら過ごしてきましたか?
Chi-:やっぱり自分たちの周りの環境が良くなってきたというか。仲間も増えてきましたし、その中でも自分たちらしさを忘れずにやっていこうという、より内にというか、自分たちの色を濃くしていこうみたいな気持ちがすごく強くなってきたなと思いますね。自分たちがやりたいことを貫くという気持ちをもっとしっかり持っていかなきゃいけないな、とすごく思いました。
――楽曲制作の上でもライブの上でもそれを意識して進んできた?
Chi-:そうですね。テレビとかもそうですし、アメリカでライブするとかもそうなんですけど、新しい環境でやる時に萎縮するというか、ビビってやるより、いつも通りの自分たちを出そうと。テレビだからテレビ用にきれいに歌おうじゃなくて、ライブが好きだからいつもやってるライブをテレビでも表現するとか、アメリカに行ってもいつものパフォーマンスをやって盛り上げるみたいなことを意識していました。
――ライブを観ていると、もちろん演出も変わってきたし、3人のパフォーマンス自体も変わってきたところがあると思うんですけど。
Chi-:ライブは、今までは世界観みたいなものを大切にしてきたんです。そこは今も大切にはしてるんですけど、プラス、コロナが落ち着いてきてお客さんも声を出せるようになってきたので、ライブならではの熱さ、エネルギーが伝わるようなライブ、お客さんとどれだけ一緒に盛り上がれるか、みたいなところは、前よりも強く思うようになりました。
――映像で初期のライブも拝見したんですけど、おっしゃったとおり、当初は自分たちの表現したいものをプレゼンテーションするという方向に目が行っていたのかなと思うんです。そこがシフトチェンジしたのには何かきっかけがあったんですか?
Chi-:だんだん慣れてきたっていうのもあるんですけど……バックのVJとかで見せたりするのも好きなんですけど、ライブならではと考えると、世界観も大切だけど、生で見ないと伝わらない空気感は大切にしたいと思っているので。そこでだんだん自分たちのエネルギーを伝えたいなっていう感じになっていきました。
――VJとか映像演出もどんどんグレードアップしていますけど、それに負けないぐらい、フィジカルな熱も増してきていますよね。
Chi-:世界観だけじゃなくて「ちゃんとライブもできるんだぞ」みたいなところも見せていきたいなと思っていたので、そこを今は意識してますね。映像を使って見せる部分とちゃんと熱を伝える部分を分けて考えています。
――その中でフロントパーソンとして意識してることはありますか?
Chi-:やっぱり自分が楽しまないとお客さんが楽しめないなって。こっちが「疲れてるな」とかいうのは一切出さずに(笑)、本当にライブが楽しいって思ってやるとお客さんも楽しんでくれるなと感じたので、自分たちが楽しんで、その上で「一緒に楽しもうよ」みたいな感じでやるというか。昔だったら盛り上げる時はそのことに必死になりすぎちゃって空回っているような感覚が結構あったんですけど、それはなんでなんだろう? と思った時に、自分がまず楽しめてないなって思って。とりあえず自分がめちゃくちゃ楽しんだらそれがお客さんにも伝わるし、今では「楽しそうにライブやるね」と言ってもらえることがすごく多くなりました。
――確かにめちゃくちゃ楽しそうに遊んでるなって感じがするんですけど、そういう気持ちはもともとあったものではあるんですか?
Chi-:そうですね、ライブは好きだったんですけど、最初は経験もなかったので。自分的には楽しくやってるつもりでも、緊張してるように見えちゃっていたと思うんです。本当に心の底から楽しんでるんですけど、それをどう見せるかを考えてやってます。手を動かすにしても、小さく動かすんじゃなくて大きく動かすみたいな、本当に簡単なことなんですけど、そうやるともっと楽しんでるように見える。端っこに行くにしても、ステージの端っこじゃなくて、そこを飛び越えちゃってさらに端っこまで行ったほうがより楽しんでそうに見えるなとか、リハの時とかから考えてやってますね。失敗することもあるんですけど、失敗したらしたで「あちゃあ」って(笑)。
――アクシデントとかトラブルもひっくるめて全部ポジティブに転化していくようなムードが作れてるんだなって思います。
Chi-:トラブルはできるだけ起きてほしくないですけど、起きたら起きたでそれも面白いと思ってやってますね。
――たとえば昨年出演した『SUMMER SONIC』や『ODD BRICK FESTIVAL』のようなフェスだと、当然ながらカメレオン・ライム・ウーピーパイを初めて観る人とか、知らない人もたくさんいるわけじゃないですか。そういう人の前でやるのはどうですか?
Chi-:基本的にどこでライブするにしても変わらず楽しむ、いつもやることは変わらないよね、と言ってやってるんですけど、フェスとかではよりこっちが楽しんでないとわからないじゃないですか。初見でも伝わるように、いつも以上に楽しんでやることは考えていますね。
――それにしてもサマソニはめちゃくちゃ盛り上がってましたね。
Chi-:そうですね、思った以上にお客さんが来てくれて、全然知らない人もいるはずなのにすごく踊ってくれたりしたのでびっくりしました。自分たちがやってきたことは間違ってなかったんだな、ちゃんと届くんだなと思いました。意外とみんな踊ってくれる感じがして、世の中捨てたもんじゃないなって(笑)。ライブをやるたびにすごく希望があるというか。まだまだわかってくれる人っていっぱいいるんじゃないかなと最近は思ってます。
――音源を聴いている以上に、ライブで初めてわかるカメレオン・ライム・ウーピーパイの姿というのもありますよね。
Chi-:思ったよりも泥臭いというか。私、初めて会った方とかによく「意外と喋るんですね」と言われるんですけど(笑)、みんなの想像より全然尖ったやつじゃないというか、「みんなで踊ろうよ」みたいな気持ちがすごくあるので。楽しむことに対してスカすことができないというか、格好つけずにやるみたいなところはめちゃくちゃあると思います。
――そういうライブに対する姿勢やパフォーマンスのことって、Whoopiesの2人とも話すんですか?
Chi-:話しますね。2人もすごくライブが好きなので、お客さんよりも私たちが楽しんでそこについてきてもらうことは3人とも意識していると思います。ただ、大きいステージとかになると、2人もちょっと「緊張するね」みたいな感じになっちゃうんです。そういうときは最終的に私がいつも「やることは変わらないから」って言います(笑)。それで2人も「確かにそうだよね」となって結局は楽しんでやれていますね。私が1人でライブをやっていた時よりも、3人でライブをするようになってからのほうが楽しいです。
――つくづく、3人でライブやり始めたのがターニングポイントだったんだなと思いますよね。
Chi-:自分でもそう思います。やっぱり1人でやってる時はどう頑張って楽しもうとしても限界があったというか。自分の中で無理やりエンジンかけてやってる感じがしていたので、そこがお客さんにも伝わっちゃってたのかな、というところがあったんですけど、3人だと本当に自然な感じでできるので楽しいですね。
――どこに行ってもやることは同じっていうのは、それこそ『SXSW』でのライブを観ても思いました。本当にいつも通りのカメレオンらしいライブなんだけど、お客さんが半端じゃなく盛り上がっていて。
Chi-:めちゃくちゃ盛り上がってくれたのでびっくりしたんですけど、なんとなく気が合いそうというか(笑)、がっちり噛み合ったらすごく盛り上がりそうな感じはしていたんです。ライブ前にチラシを配ったりしてお客さんを集めたんですけど、そのチラシを持って観に来てくれてる人は私たちの曲とかもまず知らない人ばかりじゃないですか。だからどうなるんだろうと思ったけど、曲を知らなくても踊ってくれたりとかして。そこは日本とも一緒なんですけど、こっちが楽しんでいれば、お客さんもすごく楽しんでくれるというか。私、全然英語とか話せないんですけど、それでも音楽で通じ合えてる感じがしてめちゃくちゃ楽しかったです。
――そうやって、いろんなライブでいろんなお客さんのリアクションを目の当たりにしたり、Chi-さん自身のライブに対する向き合い方が変わってきたりする経験は、曲を作る上でフィードバックされている部分もありますか?
Chi-:たとえば「Stand Out Chameleon」とかはみんなでジャンプしたいなと思って作ったんですけど、ライブバージョンだとお客さんがしゃがむところを作ったりしていて。「Where Is The Storm」もそうなんですけど、声を出すためのパートを作ったりとか、ライブバージョンに置き換えることが多くて。曲を作る時もライブを念頭において、どれだけ乗せられるか、踊れるかというのは常に考えてますね。