Dannie May、結成4年をかけて強固になった“バンド”としての結束力 1stフルアルバムから溢れ出す新たなフェーズへと向かう意志
「沸々としていた意志が“笑わせらぁ”で爆発した」(マサ)
ーーあとひとつ、この曲(「笑わせらぁ」)を聴いて思ったのは、マサさんの中でも壁が壊れた感じがするんですよ。〈4畳半から世界をロック〉っていうワードはDannie Mayのマサからは出てこなかったと思うんです。
Yuno:(笑)。
マサ:確かに。
ーー竹原ピストルさんをリスペクトしているマサからは出てきそうな言葉だけど、それをDannie Mayでやろうとは思考回路としてなっていなかったんじゃないかって。
マサ:絶対になっていなかったですね。この曲を書いたおかげで、制作における怖さみたいなものはなくなったと思います。このあとも何曲か書いているんですけど、とても出来もいいし、自分で何回も聴いちゃうし。「曲は自分の子供」とか言うじゃないですか。これまではあまりイメージが湧かなかったけど、今はわかる。自分の分身っていうのはこうあるべきだよなっていうのを4年目にして……「遅くね?」と思うんですけど(笑)。これって最初からできる人はできるんですよ。まったくそういうのに引っ張られない人っていて。だけど僕はめちゃくちゃ引っ張られちゃうので。そこから抜け出せなかったら、たぶんDannie Mayの未来はなかったなって思います。
ーー今作はそういうふうにメンバーの素顔みたいなものがどんどん見えてくるアルバムなんですよね。Yunoさん作詞作曲の「もういいって」もそうですよね。
Yuno:僕の曲をアルバムに入れると決まったのは、少しあとのほうだったんですよ。最初は3人で1曲作ろうかって話していたんですけど、いろいろな制作が追いつかなすぎてできなくて。だったら初アルバムだし1曲作ってもいいんじゃないということで、じゃあやろうかなと。それでアルバムにはないラインナップで考えた曲だったんです。この曲は僕のコーラスの下で出す成分をうまく使って、ちょっと気だるい感じで意図的に歌っていて。ピッチもあえて合わない感じにしてるので、これもある意味、等身大だと思います。歌詞も僕の実体験を脚色してます。
ーーそうなんですね。
Yuno:パッと聴くと、女の子が彼氏なのか彼氏じゃないのかわからないような男に翻弄されてるって話なんですけど、この主人公の女の子には20歳頃の僕が投影されているんです。僕の中の「イシ」って何だろうなと考えた時に、当時の出来事が衝撃的な印象として残っていて。何年経っても、もやもやする記憶だったんです。それをここで消化したいなと思って。
ーー曲を作ることでその過去に対してケリがついた感じもありますか?
Yuno:ありますね。僕の感覚としては、その記憶をこの曲にしまった感じなんです。それを思い出したい時というと少し語弊はあるんですけど、そういう時はこの曲を聴けばいい。もう僕の心の中からは出すことができたので、整理整頓したっていう感じですね。
ーーそれが〈許さないからね〉って終わるのがいいですよね。きれいに終わらせない感覚がリアルだなって。それに続くのがタリラさん制作の「マママ」ですが。
田中:なんか、恋愛する中で何でもないことが全部愛おしく思えるっていうような曲なんです。たとえば恋人が置いていたゴミとか、飲みかけのペットボトルとか、帰ったあとにそれを見るだけで「楽しかったな」と思うじゃないですか。そういうところからできた曲ですね。
マサ:え、俺、〈Oh Shining Shining DAY〉のところにすごくタリラのルーツを感じた。いきなり洋楽になる。
Yuno:タリラの曲にコーラスを入れるのって、マサの曲にコーラスを入れるよりやりやすいんですよ。聴いているものとかが僕とちょっと近いから。
マサ:俺、全然わかんない。歌謡曲がルーツだから。
田中:俺も「もういいって」をアレンジしてる時に同じことを思った。洋楽のつもりでアレンジしたんですけど、歌詞はゴリゴリの日本語だから、その塩梅がおもしろい。
ーーこの辺の曲たちもやっぱり「Dannie Mayってこういう感じだね」という箱から取ってきたわけではなくて、全然違う引き出しの中から持ってきている感じがします。そういう意味では「KAMIKAZE」も、スタイルとしてDannie Mayらしさの正反対の方向に行くというか。挑戦だなと思いながら聴いてました。
マサ:シングルカットの曲を打つ時に、EQ的に下にコミットする曲があまり今まではなかったというか。スタイリッシュだし、声がクリアに聴こえますね。すごく難しかったな、書くの。でも要所要所に歌謡曲的なメロが入ってくるんで、結構気に入ってます。タリラがアレンジで結局、洋楽っぽくしてくれるし。
田中:でもこれ、そんなにアレンジしてないんだよね。マサが作ってきたデモの音色とかをアップデートしただけで。もともと音数を少なくしたいと思っていたので、そこまでできることはないなと思ってた。
ーーこれと「OFFSIDE」が対になっているわけですが。
Yuno:そうですね。2月・3月にリリースする曲のMVはアニメーションにしようと話していたので、単体で出すよりつながった話のほうがいいんじゃないかと思いました。「OFFSIDE」は結末を塗り替えていくがテーマです。
ーーうん。その「ハッピーエンドが想像どおりじゃなかったら塗り替えればいいじゃない」っていうメッセージは、「笑わせらぁ」とか「ただ生きる」にも通じるものがありますね。
Yuno:このトラックの勢いに任せて、ちょっとメンタルマッチョな主人公がここにはいるので。これはこれで俺は好きですね。
ーー「KAMIKAZE」でも〈まだまだ終われるか〉と歌っています。そのひっくり返す返してやるぜみたいな、まさに意志が貫かれているなと。
マサ:沸々としていた意志が、「笑わせらぁ」で爆発しちゃったみたいな感じですね。その気持ちはもともと「めいびー」を出した頃から強くなっていって。あと「OFFSIDE」はワールドカップの日本対スペインの試合を観て作ったんですよ。深夜に終わって……すごく劇的な試合だったじゃないですか。うわーってなって、3時間ぐらいで作りました。勝ち負けがエンターテインメントになるって、スポーツ以外はあまりないじゃないですか。それを観て沸き上がるものがありましたね。