THIS IS JAPAN、コロナ禍を経て改めて見出したバンドの方向性 「このディストーション」で両立した新しさとらしさ

「短ければ短いほどいい」 全員の意見が一致した

一一わかりました。そして新曲「このディストーション」。これはドラマ主題歌としての書き下ろしですか?

THIS IS JAPAN『このディストーション』【MV】/テレビ東京系 ドラマ24「シガテラ」OPテーマ

杉森:もともとある程度ラフスケッチはあって、それも自分で気に入ってたんです。ただ、もう一個何かピースがはまったら完成するぞって思いながら、頭の中で温めてた感じですね。そこに『シガテラ』の話がきて、「うおっ?」と思って。で、改めて原作を読み返して、今の自分の年齢で読み終えた感覚のまま、詞をリライトしたり歌もちょっと変えて。それでようやく完成した曲ですね。『シガテラ』に向けてはもう一曲作っていて。「このディストーション」はめちゃくちゃ激しいし僕もシャウトしてる曲で、もう一曲は、ドラマ主題歌だし、みなさんのお耳に差し支えないような曲ってこんな感じかなぁと思った曲。かなり対照的な二曲を出したら「このディストーション」を選んでもらえたから、最高じゃないっすか! って。

一一嬉しいですね、それは。

杉森:うん。友達に聴かせたら「こんなに声歪んでてドラマ主題歌ってイケるの?」って驚かれた。BPMもめっちゃ速いし。でも自分たちらしい、今は自分たちしかやらないだろうっていうくらい激しい曲だから、それを選んでくれたのは、お互いの魂をぶつけ合う感じで嬉しかったです。

一一コメントにもありますけど、原作は以前から熱心に読んでいたとか。

杉森:そうですね。大学生の頃、すごく読んでた。

かわむら:モロ世代。大学の部室にもあった。同じ作者(古谷実)の『行け!稲中卓球部』をゲラゲラ笑いながら読んでて、そういう作者だっていうふうに認識してたら『シガテラ』にびっくりして。

一一『稲中』から『ヒミズ』、『シガテラ』っていう衝撃ですね。

杉森:そうそう。読んでる人はみんなそうだったと思うけど、めちゃくちゃ影響を受けましたね。人生観の指針であり、いい意味でのノイズ、歪みを与えられる作品だったなと思う。こないだ読み返した時も、その影響はいくつになっても変わらないなって思いましたね。

一一具体的に、どんなものを受け取ったんでしょう?

杉森:いわゆる一般的な善と悪、小さい頃から言われてる「こうすべき」「ああしちゃダメ」とか、二項対立みたいなものがあると思うんですけど、そのどっちにも当てはめられないものは絶対あって。誰かにとってイビツなことが、誰かにとっての正解でもあったり。かといって、どちらかだけで生きていられるほど人生って簡単じゃなくて。そういう不条理さ、ですよね。受け入れるか受け入れられないかは別として、不条理っていう存在を感じた作品。でも、それがあっても幸せになれるかもしれない。最終的には自分次第なんだなって、そういうポジティブなメッセージを受け取りましたね。

一一この曲で何よりびっくりしたのは2分13秒という尺の短さ。あとは、AメロからBメロ、サビ、サビ、サビっていう展開で。

杉森:最高でしょ? これがいいんですよ。

一一これはタイアップ用にグッと縮めたのか、もともとこういう展開だったのか、どちらでしょう?

杉森:いや、タイアップ用に、みたいなことではないですね。単純に短いほうがカッコいいと思ったから。だってkoyabinもギターソロ弾きたくないでしょ?

koyabin:僕「Cメロとか絶対やりたくないです」って言いましたね。

かわむら:うん。なんか蛇足でしかない。確か、杉森は「もう一個くらい展開つけようか」って言ってたんですけど、小山が「やりたくない!」って。このままスパンと終わるほうがいい、短ければ短いほどいいでしょうって。そこは珍しく全員の意見が一致したんですよね。

杉森:「ギターソロとかないんだ?」って感想の人もいるかもしれないけど、逆に全部がソロみたいな感覚で、最初から最後までギュッと固めて。刹那的というか、今この瞬間っていうものをドン! ってやるだけなんで。Aメロがもう一度戻ってきたり、Cメロがついてくるのって、曲のテーマに合ってないと思うんです。

koyabin:杉森さんの原液感がありますよね。原液そのまま、みたいな感じ。ストレートに出てるし、なおかつ、誰もそれを邪魔してない。

一一無駄のない一筆書き、という感じですよね。

杉森:そうですね。これ、メロディも今までで一番難しいんですよ。自分で作ったんですけど、ありえないくらいキーが高くて。演奏もマジで速い。水元くん腕ちぎれるんじゃないか、みたいな感じになってて。落ち着いてやれるものじゃ全然ないんですね。でもそこをなくしちゃうと、この曲が持ってる一番大事なものが損なわれる感じがして。

一一確かに。あとはこの曲、めちゃくちゃポップでもあります。

杉森:メロディがいい曲はやっぱり大好きなんで。自分から出てくるものとか、自分の中のものを磨いていったら、結局ポップなメロディが出てくるなってことが最近わかってきた。ただ、この曲に関しては、別にポップにしようととは考えず、ただカッコいい、いいメロディにしようっていう感じでしたね。

一一杉森さんの中で、いいメロディとポップは違うもの?

杉森:ちょっと違うような気がしますね。ポップっていうのは、多数の人に届くもの。届くことを目的にして作られたものだと思ってて。このキーも……ポップを目指すならもうちょい下げたほうがいいと思うんです。むちゃくちゃ高いし歌いづらいから。でも、このキーでしか出せない自分の声の張り詰めた感じ、このBPMでしか出せないバンドの緊張感、そこが一番大事だっていう確信があったから。ポップに届けよう、開かれたものにしようって感覚はなくて。バンドにとって一番大事なところを考えたらこのアレンジになったんですね。

一一ギリギリの音域、もしかすると声が裏返ってしまうかも、ぐらいまで自分を追い込んだほうがよかった。

杉森:そうですね。マジで演奏もキツいんですよ。水元が特に大変。

水元:正直、弾けないっす(一同爆笑)。弾けてんのかわかんない。

杉森:歌えないし弾けない曲を作ってしまった(笑)。「これもう無理かもな」みたいな感じで作ってました。でも作るしかなかったんだよなぁ、って。

一一面白いですね。そうやって追い込まれて作ったバンドらしい曲を、私は今までで一番ポップだと思ったんです。

杉森:あぁ、嬉しい。いいと思います。なんでかって言うと、やっぱ追い込まれたりヤバイなって思う時に、それをヘラヘラして楽しめるのがこのバンドのいいところだなと思ってたから。その意味では一番THIS IS JAPANらしいなって思う。シリアスな曲をシリアスにやるのもいいですけど、めちゃくちゃカッコいいことをふざけてやるとか、大ピンチの時に大笑いしちゃうとか、そういう究極の楽観主義というか。「だってバンド名がTHIS IS JAPANでしょ? バカなの?」っていうところ。そこが一番このバンドのカッコいいところだと僕は思ってるから。それがちゃんと出てる曲だと思う。

かわむら:うん。短いのがやっぱりいいですよね。THIS IS JAPANはポップなバンドだと思ってるんですよ。ただ、ここまで思い切りのある構成の曲って意外にやってきてなかったから。そこは新しい踏み出し方。それを出して、結果ポップに聴こえるんだったら、すごくいいことだと思ってますね。

■リリース情報
THIS IS JAPAN
3rd Digital Single 「このディストーション」
4月26日(水)配信リリース
https://kmu.lnk.to/THISISDISTORTION

THIS IS JAPAN オフィシャルホームページ:https://thisisjapan.net/
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