ライブ中盤にはバラード曲をいくつか披露したが、まずハイライトと言えるのが「Jupiter」だろう。6声になったことでさらに色彩豊かに生まれ変わったこの曲では、冒頭のアカペラパートでたっぷり余韻を残しながら歌う姿が印象的だった。と同時に、新メンバー3人のこれまでになかった声が加わったことにより、過去の歴史を継承しつつ新しい形へとバージョンアップさせていく姿勢も感じ取ることができた。もちろんこれは「Jupiter」のみならず、ほかの既存曲も同様なのだが、特にメンバーの声にスポットが当たる「Jupiter」のような曲ではその傾向がより濃く表れていたのではないだろうか。

　また、この日のライブでは4thアルバム『FLAVA』（2019年）に収録されながらも、これまで一度もライブで歌われる機会のなかった「君のこと」もライブ初披露。6人で歌い分け、コーラスも再編成されたことにより、ほかの楽曲以上に新曲を聴く気分で楽しめたガオラーも少なくなかったはずだ。

　さらに、昨年11月の新メンバー最終審査ライブで候補者がかれん、MAYU、アサヒと一緒に歌唱した「Waves」なども披露された。オーディション時もすでに新メンバーから完成度の高さが感じ取れたが、この日のパフォーマンスは正式メンバーになった自信も影響してか、よりクオリティの高い歌とダンスを体感することができた。2カ月にも満たない短い期間でここまでの成長が伝わるには、それ相応の努力も必要だ。改めて、彼女たち3人のスポンジのような吸収力には驚かされるものがある。

　ライブ後半には、新体制で初となるEPが3月22日にリリースされることもアナウンス。『Fanfare』と題されたこのEPには、12月14日に配信リリースされた「Join Us!」のほか、『SUZUKIスポーツスペシャル 2022 富士山女子駅伝』テーマソングとして話題の「Million Miles」に加え、さらなる新曲も収録されるとのこと。さらに、初回限定盤にはこの公演（1月7日の第1部）の模様を収めたライブBlu-rayも付属すると知らされると、客席からは歓喜の拍手が沸き起こった。このサプライズ発表に続いて、先の新曲「Million Miles」もライブ初披露。スケール感の大きなこの曲は、サビでの突き抜けるような歌声が印象に残るアンセミックな応援ソング。随所に散りばめられたハーモニーワークは楽曲本来の壮大さを引き立てると同時に、キラキラした空気を会場中に充満させていった。

　ライブ終盤、かれんは「前回の『Journey』ツアー最後のMCで『リトグリの明るい未来を期待して待っていてください』とお伝えしたと思います。そこからオーディションを経て、たくさんの音楽を愛するみんなと出会って、私たち3人もオーディション期間中に学ぶことがありましたし、みんなにいろんなことを伝えたりとか、教えたりとか、そういうことを経て、私たち3人も成長して強くなったなと思います」と前置きしてから、「とても素敵な、明るい3人が入ってくれたからこそ、リトグリはより最強に、パワフルになったと思います。ファンの皆さんもここまで一緒に見守ってくれて、いろんな思いもあったかと思うんですけど、皆さんがいるおかげで今日は6人で皆さんの前に立てています。2023年もこの6人と、そしてガオラーの皆さんと明るく元気に楽しく過ごしていきたいなと思います」と客席に向けてメッセージを送る。そして、ライブの盛り上げに欠かせない定番曲を連発して、新生リトグリ初の単独ライブを締め括った。

　通常の彼女たちのライブよりも1時間近く短かったものの、再出発の第一歩としては上々の仕上がりであり、次への期待感がさらに高まる形になっていたと筆者は感じたが、会場でその光景を目撃したガオラーの皆さんはいかがだっただろう。かれんの言葉ではないが、「リトグリの明るい未来」がどんどん楽しみになったのではないだろうか。そのほかの東京公演や大阪公演を経て、より逞しく成長した6人がここからどんな音楽を届けてくれるのか。そして、どんなステージを作り上げていくのか。2023年の彼女たちがどんなストーリーを作り上げていくのか、その活躍に期待したい。