TK from 凛として時雨、『チェンソーマン』にもたらしたカオティックな衝撃 アニメとの親和性によって広がる楽曲の世界観

 2022年10月期テレビアニメの中で、特に音楽ファンの間で注目を集めているのが『チェンソーマン』(テレビ東京ほか)だろう。オープニングテーマに米津玄師「KICK BACK」、挿入歌および第3話エンディングテーマにマキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」が起用されただけでなく、全12話の各エンディングテーマをそれぞれ異なるアーティストが手がけ、先のホルモンに加えてVaundy(第1話)、ずっと真夜中でいいのに。(第2話)、TOOBOE(第4話)、syudou(第5話)、Kanaria(第6話)、ano(第7話)、TK from 凛として時雨(第8話)、Aimer(第9話)、PEOPLE 1(第10話)、女王蜂(第11話)、Eve(第12話)と人気&気鋭のアーティストたちが、各々の個性を存分に発揮した新曲を提供している。各話のストーリーが反映されたエンディング映像含め、毎週ここを楽しみにしているというファンも少なくないはずだ。

 そんな中、個人的に強い衝撃を受けたのが第8話のエンディングを飾ったTK from 凛として時雨による「first death」だった。「銃声」と題したこの回は、束の間の休息を経て物語が後半に向けて急速に動き出す重要なエピソード。マキマをはじめ公安対魔特異課の面々に悲劇が降りかかり、早川アキのバディであり、デンジと“友達”になったばかりの姫野が命を落とすという悲劇的な結末を迎える。そんな“最初の死”をよりエモーショナルに盛り上げたのが、TK節全開のカオティックチューン「first death」だった。

TK from 凛として時雨 『first death』Music Video (TVアニメ「チェンソーマン」第8話エンディング・テーマ)

 凛として時雨名義を含め、これまで数々のアニメ作品に親和性の高い楽曲を提供してきたTK。凛として時雨では「abnormalize」(2012年)や「Enigmatic Feeling」(2014年)、「Who What Who What」(2015年)を筆頭に『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズでその名を馳せたほか、TK from 凛として時雨としては『東京喰種トーキョーグール』シリーズでの「unravel」(2014年)や「katharsis」(2018年)などで人気を博した。最近も、テレビアニメ15周年を記念して放送された『コードギアス 反逆のルルーシュ』のエンディングテーマ「will-ill」(2021年)で注目を集めたばかりだ。どちらかというとシリアスめの作品に楽曲提供する機会が多く見受けられ、そういった作品からひんやりとしながらもどこかヒリヒリ感も伝わるTKの歌詞やメロディが求められるのは、ある種必然なのかもしれない。そういった意味では、バンドおよびTKにとって大きなターニングポイントとなった「abnormalize」の存在は非常に大きなものがあり、この曲や「unravel」といったタイアップ曲がアニメ作品同様に海外でも高く評価され、サブスクなどを通じて世界中で幅広く愛聴されているという事実も頷けるものがある。

凛として時雨 『abnormalize(short ver.)』
TK from 凛として時雨 『unravel』 Music Video(Full Size)

 2000年代以降、J-POP/J-ROCKアーティストがアニメソングを手がける機会が急増したことで、メインストリームのみならずオルタナティブなサウンドまでもがどんどんアニソンの中に注入され続けてきた。その結果、アニソン自体がジャンルレスでミクスチャーな音楽文化へと進化し、時代の最先端を感じられる楽曲をアニメの中から耳にする瞬間も非常に多い。特に、アニメ作品自体がサブカルチャーからの影響をモロに受けているものであればあるほど、そこに関わる音楽のその傾向がより強まるのも明白だ。先に挙げた『PSYCHO-PASS』や『東京喰種』、そして今回の『チェンソーマン』などはアニメカルチャー、そしてアニソンシーンのみならずJ-POP/J-ROCKシーンにおける最先端を進む作品の好例と言える。

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