2000年代以降に広がるガールズバンド×アニメの多様化 『けいおん!』~『ぼっち・ざ・ろっく!』に至る歴史を紐解く

 また様々な個性を持ったガールズバンドが数多く登場する『BanG Dream!』(通称『バンドリ!』)も、この流れにある作品といえる。Poppin'Partyを筆頭としたガールズバンドが音楽活動を通して青春を謳歌し、夢に向かう中での喜びや葛藤、仲間と絆を深めていくバンドストーリーが展開される。スマホアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』も人気の作品だが、アニメやゲームの中だけでなく、キャストの声優が実際にライブやCDリリースといったバンド活動を行う点も特徴的だ。その一方でRAISE A SUILENのボーカル レイヤ役を務めるRaychellは、声優経験はなく、ソロシンガーや舞台役者の活動を経て『バンドリ!』キャストに起用された。声優がバンド活動を行うだけでなく、プロのシンガーが声優を務めるという形にも挑戦している。

 さらに『バンドリ!』は、『BanG Dream! FILM LIVE』シリーズというライブ作品も劇場公開している。同シリーズは約70分ほどを全編ライブシーンで構成する画期的な作品である。作中の人気バンドが次々と入れ替わりながら演奏する様子は、実際にフェスに参加したような熱狂が味わえる。同時に3DCGとカメラワークの面白みにも溢れており、演奏シーンも含めてアニメーション表現のレベルが高い。

 バンドアニメが一般化するに従って、その表現も多様化している。その1つが『SHOW BY ROCK!!』だ。キティちゃんなどで有名なサンリオが制作に参加していることも大きな話題を呼んだが、2D調のキャラクターデザインに加えて、サンリオらしい2頭身のちびキャラのCGアニメも登場する。

 同作のCGは実際に弾いているように見える写実性とは異なり、2頭身のミニキャラが楽器を弾いているという可愛らしさに溢れた映像表現が魅力だ。アニメだからこそ表現できるデフォルメされた面白さと、楽曲の良さがミックスされ、新しい魅力を生み出している。

 そして、現在放送中の『ぼっち・ざ・ろっく!』。原作者のはまじあきが、バンド活動に興味を持ち、調べ上げた上で原作を手がけたこともあり、コメディタッチながらも所々にバンドのリアルが散りばめられていることが特徴的だ。その一つの例として、ライブハウスを中心にしたストーリー展開が挙げられるだろう。アニメにおけるバンド活動は学生が主流ということもあり舞台が学校であったり、あるいは一定の人気を持ったバンドが主人公の作品もあった中で、この選択は目新しく映る。

 もちろん、原作が連載されている『まんがタイムきららMAX』らしく、アニメも可愛らしくアレンジがされている。一方でライブシーンはライブディレクターを務める川上雄介の演出が冴え渡っており、ライブ中の音圧を揺れるペットボトルで表現したり、10話では音楽にトリップする様子をサイケデリックな映像で描いていた。これらは楽器をリアルに弾いているなどの写実性というより、ライブに出演している、あるいは聴いている感覚を、よりその場で体験しているかのように伝える試みと言えるだろう。

 2022年は音楽を大きく取り上げた『ONE PIECE FILM RED』の記録的なヒットや、海外からは『SING2(SING/シング:ネクストステージ )』(アメリカでの公開は2021年)なども生まれており、アニメと音楽が融合した作品は今後も増えていくだろう。その中でバンド×アニメのジャンルから様々な楽曲や映像が生み出されていくことは間違いない。アニメとバンド、あるいは音楽との関係性は年々深まっており、普段アニメを観ない人にも新鮮な驚きを与えてくれるだろう。

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