アイドルが“恋愛禁止”とされる背景は? 移り変わる時代に問われるタレント/ファン双方の意識

アイドルを応援する楽しい時間を過ごすために

 理想的にはルールだからでなく、ファンを大切にすることも含めてアイドル活動に全力を注ぎ、自ずと恋愛が眼中にないのが、アイドルとファンの双方が幸せな状態。実際、ファンたちと疑似とはいえ相思相愛のまま、活動をまっとうしたアイドルも少なくはない。

 一方、岡田のように真面目に活動に打ち込んできても、恋愛に気持ちが向けば蓋はできないのが現実でもある。では、どうすればいいのか? システマチックに言えば、ルールをはっきりさせたほうがスッキリはするだろう。たとえば「グループ在籍中は恋愛禁止」「交際するなら脱退する」「隠れて交際していたら発覚時点で例外なく除籍」など。

 だが、若い女性の恋愛にこんな縛りを掛けることは、人権うんぬんは別にしても、何か嫌な感じはしないだろうか。ファンの側も、アイドルに半ば強制で自分たちに向き合ってもらって嬉しいものなのか。どこからが恋愛なのかも、内面の話で定義は難しい。

 結局は個々のアイドルの意識の問題となる。仮に恋愛解禁になっても、活動で高みを目指すため、あるいは自分の人気を上げるため、自主的に控えるメンバーも多いだろう。逆に恋人がいると宣言したうえで、それでも応援するか、ファンに委ねるのもいい。

 そう考えたら、いっそ解禁したほうがベターな気もするが、それで離れる疑似恋愛志向のファンも多いはずで、ビジネス的にはリスクが大きい。というように堂々巡りとなり、この問題に誰もが納得する最適解は存在しない。

 ただ、時代が移り変わる中で、何より問われてくるのはファンの側の意識かもしれない。アイドルを疑似恋愛にこだわって見続けるのはどうなのか?

 昨年、ハロー!プロジェクトで屈指の歌唱力を持っていたJuice=Juiceの高木紗友希が交際報道から活動終了となった際、モーニング娘。’21(当時)の小田さくらがブログでこう綴っていた。

「私は最近のアイドルの在り方に対して違和感をおぼえる点があります。今は「女の子」そのものが武器になっている感覚です。高木さんのように歌声という最大の武器を持ち合わせていた人ですら、戦えない事があるという現実に、音楽が1番大事ではなかったんだとすごく悲しかったです」(※1、中略あり)

 岡田奈々も今年1月の『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』で優勝し、来年1月からソロで初の全国ツアーも予定されている。卒業がいつになるのか不明だが、10年間、真面目に高めてきたパフォーマンス力が、AKB48で発揮できなくなるのは悲しい。

 彼女に裏切られたと感じるファンの心情も想像できるが、アイドルの恋愛をそこまで咎めるのは、お互いの辛さを増すだけではないか。あるファンから「もしかしたらアイドルを苦しめているのは自分たちなのでは……と心が痛む」と聞いたこともある。

 先述の小田さくらのブログでは「アイドルが個性や音楽で評価される世の中になったら良いなぁと思います」とも書かれていた。結局はそのほうがファンも楽しい時間を過ごせる気がする。

※1:https://ameblo.jp/morningmusume-10ki/entry-12657294088.html

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