鹿野淳が東京で見つけたフェスにとって宝島のような場所ーー苦節10年以上の『TOKYO ISLAND』立ち上げの背景を語る

コンセプトは全てのコンテンツが同価値であること

――まさに新しい体験ができそうなフェスですよね。

鹿野:多くの人が興味を持つのは、どんなアーティストがライブとして参加するのかということなのはわかっているし、もちろんそれも大切なんですが、このフェスにとっての音楽ライブは、あくまでもたくさんあるコンテンツの中の一つなんです。今回の『TOKYO ISLAND』では、1日10分以上の花火大会もやる予定ですし、巨大な居酒屋や連れてきたペットを開放できる場所、サウナテントなんかも作りたいし、オリジナルの謎解きゲームも行います。色々なコンテンツが同じ価値を持って、このフェスの中にある。音楽だけを楽しむのではなくて、みんなの日常に関与している色々なものが解放される場所でお祭りを開きたいんです。

――音楽がメインで他がサブではなく、全てのコンテンツがメインというか。

鹿野:そうです。ただ、この開催場所やコンセプトの器が大き過ぎて、自分を先頭に関わっているスタッフの多くも、まだこのコンセプトを自分のものにできていないし、協賛メーカーからも「結局ライブは誰が出るんですか?」と、そこばかり訊ねられます。これが現実ですよね。だってほとんどのフェスの注目も焦点もそこにあるわけですし、そもそも開催場所自体がまだ誰も知らない場所なので、本当に「???」ばかりが並ぶフェスだと思うんです。今も「わかりにくい」という意見をたくさんいただいています。当たり前ですよね。音楽フェスからフェスブームが始まっているわけだし、その音楽フェスのノウハウを持っている人間や主催各社が深く関わっているのに、他のコンテンツも全て同じ価値だと言っているんですから(笑)。でも個人的には、2020年代に入ってコロナ禍で時代も変わっているのに、今までと同じような音楽フェスを新しく立ち上げる方がどうかと思うんですよね。2015年のプレイベントも、新しい価値観を持ったフェスをやりたいということから始まりました。当時はアウトドアブームなんてなかったから、キャンプをやること自体どうかという意見もありましたが、今はこのフェスで考えていることと時代の流れが近づいてきています。だから、世の中に求められるフェスを我々は作れるんじゃないかなと思うんです。全てのコンテンツが同価値であるというコンセプト自体がすごく難しいことだとは理解していますが、何年か続けていけば新しいフェスの在り方として認知され、新しいスタンダードになって定着するだろうと思っています。このフェスはきっと冒険です。新しい時代に対するフェスとしての冒険だし、実際に冒険するような気持ちで公園全体を楽しめる、冒険フェスです!

――では、『TOKYO ISLAND』を定着させるのに必要なことはなんだと思いますか?

鹿野:あぁ、難しい質問ですね。僕は定着って時間がかかることだと思っているし、その長い時間かければいいのではなく、長い時間ずっと裏切らず、嘘をつかず、ユーザーのことを見つめ続けることによって初めて手に入れられるものだと思っているもので。しかも『TOKYO ISLAND』は『VIVA LA ROCK』とは全く違うフェスだし、今までの論法が使わないし使えないですから。でも、東京というきわめて分かりやすい場所に、東京ドーム10個分、東京ディズニーランドと同じ大きさのスペースがあること自体がミラクルじゃないですか。そのミラクルに僕は大分やられちゃってる。小さな端末にワンタッチで全てができる便利な東京で、実際に足を運んで、ちょっと苦労して、アナログな時間を過ごして、人間とコミュニケーションをとる空間を作ることで、東京の新しいランドマークのようなフェスにすることが一番の定着への道なのかな。「この時期は『TOKYO ISLAND』に行って一杯やろうか」「今年は誰が出るのかまだわからないけど、とりあえずチケット買っておこう」みたいな参加者が生まれるポテンシャルは、場所自体が十分持っていると思っています。だから僕らはあの場所を裏切らずに失敗も最小限にとどめ、あの場所の可能性を愚直に探って、公園が求める言葉に聞き耳を立てていけば、必ず定着するはずだと思ってます。

『TOKYO ISLAND』公式サイト

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