milet、リスナーへ“伝えたい”気持ち込めた歌声の牽引力 コンセプチュアルな演出で届けたデビュー3周年記念ライブ

 miletのデビュー3周年を記念して開催された『milet 3rd anniversary live “INTO THE MIRROR”』。東京ガーデンシアターで行われた一夜限りのステージは、この公演のために書き下ろされた新曲「Into the Mirror」(8月17日リリースのシングル『Always You』に収録)を中心としたコンセプチュアルなライブに。“音楽という鏡を通してなりたい姿、ありのままの姿を見てほしい”というメッセージを込めたセットリストは、miletというシンガーの多面的な魅力のみならず、一人の人間が心の中に持つ多面的な性質、光と影を感じさせる内容になっていた。

(写真=後藤壮太郎)

 登場間もなく「ARE YOU READY?」と投げかけるmiletの声は、かなりパワフルだ。「みんな会いたかったよー!」と鏡を模したLEDビジョンに映るのは満面の笑み。1曲目の「us」から客席を覗き込んだり、手を振ったり、〈あなたとだからどこへでも〉と歌いながら客席を力強く指したりと、観客と出会えた喜びを全身で表現する。各曲のリズムと呼応するような映像・照明演出も相まって、高揚感に満ちたmiletの歌声、そしてバンドの鳴らす音楽が体内に流れ込んでくるような感覚だ。

 何と言っても、一番に感じたのは歌声による牽引力だ。バンドサウンドは分厚いがそれ以上にmiletの歌声は力強く、歌われる言葉の一つひとつが明瞭に伝わってくる。サポートメンバーの演奏にノリながら、楽しそうにしている彼女が発するその歌によって、会場の一体感が増していく。ライブならではの表現に胸を熱くさせられる瞬間も多く、例えば「Flare」はギターソロと張り合いながら一緒になってラスサビに入り、「Who I Am」ではスタンドからマイクを外してアグレッシブに歌唱。「Fly High」では、声を思いきり張ったり、逆に空気に溶け込ませたりと、ロングトーンする度に異なるアプローチを見せた。そして「Ordinary days」の丁寧な歌い出しから読み取れたのは、聴き手一人ひとりに届けようという意識だ。後のMCで、3年という数字を「デビューからの年数というよりかは、みんなと出会えた記念の数字だと思っている」と語りつつ、有観客ライブがなかなかできなかった時期には「たくさんの愛でみんなが包んでくれた」と明かしたmilet。デビューしたての大切な時期がコロナ禍と被ってしまったことによる困難はあったと思うが、彼女の太陽のような存在感、“伝えたい”という気持ちがエネルギーとなり歌をさらに輝かせている様子は、そんな時期を乗り越えてきたからこそ得たものなのかもしれない。

 聴き手という他者に開かれた序盤のセクションが“光”だとしたら、深く潜り込み、ダークな楽曲を続けた中盤のセクションは“影”といった印象。9~11曲目の「My Dreams Are Made of Hell」、「Until I Die」、「Drown」に関しては、各曲が持つ濃厚なムードを表現することにmilet自身が没頭し、音楽と聴き手を一対一にさせるような空気を作った。ライブを初めて観た身としては、「Until I Die」のハードロック然とした佇まいに新鮮味を感じるとともに、いや、そもそもmiletはONE OK ROCK・Toruのプロデュース曲でデビューしたシンガーだったと思い直す。そしてトンネルを抜けて光が広がるような映像を挟み、披露された新曲「Into the Mirror」は、クールでミステリアスな雰囲気の中で時に感情を曝け出すような歌唱が印象に残った。

(写真=入日伸介)

 鏡がパリンと割れる音と映像で「Into the Mirror」を終えると、“あなたがあなたらしく人生を歩んでほしい”という想いを込めて書いたという「Walkin’ In My Lane」以降、イメージの外側へと飛び出し、再び目の前の観客と感情を交わすセクションに入った。「まだまだ3周年。これから何周年も、何十周年も、みなさんと一緒に過ごしたいです。また来てくれますか? 私は側にいますから。そんな、あなたと私だけの歌を」と始まった「Diving Board」では、ミラーボールが光を放つなか、歌もバンドも開放的に響く。観客もタオルを回したりジャンプしたりと、ライブ終盤にふさわしい幸福な光景が生まれたからか、一旦暗転すると客席からアンコールを求める手拍子が起きる。少し経ってから明かりがつき、「まだいました(笑)」とmilet。逆に言うと、ステージ上も客席もそれほどの熱量だったということだろう。本編ラストは、「私のはじまりの歌」ことデビュー曲「inside you」。MVと同じくステージ上では赤い羽根が舞い、アニバーサリー感溢れる演出で締め括った。

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