10-FEET、大らかな歌と演奏で届けた“ライブハウスに立つ意味” ロックバンドの真髄を更新した25周年ツアー
ネット上での誹謗中傷や炎上が絶えない昨今だが、相手と直接顔を合わせて、表情や声のトーン、場の流れも踏まえながら言葉を届けることで、誤解も解けていくはずだし、何よりもライブにはそうさせる力があるーーこれは3月に行った対談取材でTAKUMAが実際に話してくれたことである。コロナ禍で「ライブとは自分にとって何なのか」を考え直していた矢先、ホールツアーを行ったことで明確に再認識できたのだとか(※1)。たとえ言葉の説明が不足していても、ライブでは音楽がその行間を満たしてくれるし、意見の相違も“リスペクト”としてそれぞれの人生に持ち帰ることができる。終盤に披露された「アンテナラスト」、とりわけ〈言葉足らずのあなたの言葉 たくさんの思いがあったでしょう〉という歌い出しは、そんな10-FEETのバンドマンシップを象徴する歌詞として鳴り響き、この日のライブのハイライトの1つになっていたことは言うまでもない。
前述した「FUTURE」を終えると、ステージから立ち去ることなくそのままアンコールに突入。最後は「蜃気楼」「その向こうへ」「ヒトリセカイ」という怒涛の3曲で締め括られた。特に「ヒトリセカイ」は、〈言葉〉をキーワードにして「アンテナラスト」に違う角度から光を当てたような曲でもあり、この日のライブのエンディングにふさわしい役割を果たしていた。だが、このツアーはまだ終わりではない。「蜃気楼」を終えたところで、真のツアーファイナルとして11月に京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージでワンマンライブを行うことがサプライズ発表され、場内は歓喜の嵐に包まれた。目前に迫っている『京都大作戦』と同じ会場でのライブ開催となるが、夏フェスの成果がどのようにツアーファイナルに活きてくるのか、非常に楽しみなところだ。
少年時代の夢やもどかしさから、大人になって言葉を知るほど理解し合えなくなるやるせなさまで、一筋縄ではいかない感情をロックに織り混ぜてきた10-FEET。そのごちゃ混ぜ度合いが高ければ高いほど、音楽としての純度が研ぎ澄まされるというのはミクスチャーロックの面白いところだし、10-FEETはそのことを第一線で鳴らし続けてきたバンドだ。そして柔軟性も合わせ持つ彼らは、アンサンブルの組み方、言葉の立たせ方を細やかに変化させながら、2022年に最適なライブの在り方をしっかりと見せつけた。
混沌とした感情を音楽で解きほぐし、価値観の異なる一人ひとりの人生にスポットライトを当てることで、互いを認め合い、前に進んでいく活力が生まれるーーライブハウスはそんな場所だということを今一度思い出させてくれた。まさに、“10-FEETのど真ん中”が更新されたライブだったと言えるだろう。
※1:https://realsound.jp/2022/03/post-992936.html