3ピースバンド UlulUに初インタビュー 旅するように鮮やかなガレージロックで描く、互いの歩みを認め合う世界
ライブハウスで培った刺激と反骨精神がUlulUの音楽性に
ーー今のガレージロック的な音楽性はどのように定まっていったんですか。
古沢:初期の頃、SoundCloudに上げた「3分間だけ愛されたい」とか「日曜日の彼女」あたりから、ポップさのあるロックンロールに落ち着いていきました。The Libertinesとかにハマってたのが大きかったよね?
大滝:うん、ハマってた。ギターが特別上手いわけじゃなくて、決して綺麗な音ではないんだけど、それがかっこいいなって。
ーー大滝さんが弾くギターの音もデカいですもんね。
大滝:むしろ当時はデカい音で演奏したいという想いだけで、バンドをやっていたかもしれないです(笑)。
横山:ライブハウスで生でバンドを観ていたことも大きいよね。1960〜70年代のバンドにも影響を受けていますが、ただそれを家で聴いているだけだったら、UlulUはこういうバンドになってないと思います。新宿のライブハウスで、ロックやってる人たちの衝動を肌で感じながら、同じ空間にいられたことはめちゃくちゃ大きかったなって。
ーーなるほど。大滝さんが小学生の頃にやっていた音楽への反動が、爆音で鳴らすロックに直結しているのかなと思いましたが、どうですか。
大滝:それは確かにありましたし、そういう反骨精神は3人それぞれにあると思います。
古沢:たぶん“ガールズバンド”だから余計に感じていたことも大きかったです。7年前くらいだと、ジェンダー意識も今より薄かったじゃないですか。女の子だから嫌な意味で優遇されることも多いし、ライブハウスでも「舐められてるのかな?」って感じることが多くて。
大滝:「もっとMCでいっぱい喋ったほうがいいんじゃないの?」とか言われたり。
横山:「もっと物販を頑張ったら?」とかね。
ーー自分たちはちゃんと音で勝負してるのに、という悔しさですよね。
大滝:そうです。「チクショウ!」って思いながらライブやってました。
古沢:自分たちは3ピースバンドとは言うけど、絶対にガールズバンドとは言いたくない気持ちが強かったかもしれない。
横山:3人集まったら、たまたまみんな女の子だった、という意識です。
ーー今回の1stアルバム『UlulU』も、まず歌と演奏のスケールで届けようという想いがしっかり感じられる作品ですよね。シンプルな曲もありますけど、音の厚みが以前よりかなり増していて。歌を支えるだけでなく、3人のアンサンブルで聴かせるパートが多いですが、そのあたりは意識的でしたか。
大滝:コロナ禍になって家で録る作業が増えたから、歌以外にもフォーカスできるようになったことは大きかったと思います。
古沢:2019年に出した「旅に行こうよ」で、ギターソロの後にちょっとテンポダウンするパートがあるんですけど、そこでやったことの感覚が深まって、「イルミナント」みたいに長い演奏で聴かせようって思えたのかなと。以前は弾き語りベースで作っていたけど、今回はバンドサウンドベースで作れたから、楽器で聴かせるパートが増えたような気がします。
ーー演奏することに対する意識も変わったのではないでしょうか。
大滝:そうですね。歌詞に詰め込んだ気持ちが、例えば何色なのかとか、どんな風景なのかとか、言葉だけでは伝えきれない部分が音になって広がっているイメージです。だから曲ができて2人に伝える時も、「これは青い感じ」とか「海でできた曲なんだよね」とか、いろいろ伝えてますね。2人とも察知が早いので「こんな感じね!」とすぐわかってくれて、演奏するとバチッとハマるんですよ。
横山:デモと一緒に送られてくる歌詞を見て、「あの時の会話で言ってたことかな?」ってわかったりするので、なんとなく大滝語録を共有している部分は大きいかもしれないです。
古沢:映画の脚本があっても、どういう映像で見せるかはまた別の話じゃないですか。それを表現することが楽器の役割だと思うんです。(大滝は)旅行がすごく好きだから、新しい世界を見たいっていう感覚が強いと思うので、その気持ちを汲み取って演奏したりとか。
大滝:私、バックパッカーなんです。インドとか結構好きで、何度か行きました。
ーー「Terminal」や「指定席」をはじめ、大滝さんの歌詞にはどこかへ出発する心境を書いたものが多いですよね。しかも生活と旅が地続きになっていて、しっかり準備するわけではなくふらっと旅に出ていく感覚が強いと思ったのですが、いかがでしょう?
大滝:そこまで伝わってるなんてめっちゃ嬉しいですね。「指定席」なんて“家の中が嫌だ”と言って投げやりに飛び出している感じで書いていて。
ーー〈洗濯物を取り込んだ/炊飯器が壊れてた/五感に振り回されて/覗き込んだ残高〉〈飛び出そうか 居直そうか〉と歌っていますもんね。
大滝:はい。話していて今思い出したんですけど、andymoriの解散ライブが終わった日の夜、いてもたってもいられなくなって、そのまま弾丸で京都に行ったんですよ。
古沢:え、そうだったんだ!
大滝:直前のラブシャを観て大号泣して、最後の武道館まで観終わったらなんだかとりとめのない気持ちになってしまって……このまま家に帰りたくないなと思って、九段下から新宿のバスターミナルまで行って、翌朝京都に着くみたいな(笑)。「指定席」はその時にできた曲というわけではないんですけど、その感覚が根強くあるってことだと思います。