SNSが結びつけた3つの強い個性 新世代バンド SpendyMilyが大切にする、受け手に考えることを促す音楽

 ポストロックやマスロック、ラップミュージック、ポップスなど、様々なジャンルの要素が混ざり合った唯一無二の音楽性で、現在注目を集めている3人組バンド・SpendyMily。

 松永瀀(Vo)のずば抜けた歌唱力と作詞センス、yukirie(Gt)の奏でるテクニカルなサウンド、平井文(Groove activator)が手掛ける洗練されたグルーヴと芸術的なビジュアルなど、彼らはあらゆる面で新世代を感じる存在だ。今年1月にリリースした3rdデジタルシングル「後悔」はドラマ『シジュウカラ』(テレビ東京系)のエンディングテーマに抜擢され、いよいよ活動の場を広げようとしている。

 SNSで出会い、曲作りもすべてオンラインで完結するという彼ら。取材中には互いに初耳の情報が飛び出し驚く様子も見受けられた。メンバー同士でもまだ知らないことが多いという彼らに、結成の経緯や曲作りのプロセス、今後の展望について聞いた。(荻原梓)

今はジャンル関係なくスマホを使って色々な音楽を辿って聴いている(松永)

松永瀀(Vo)

ーーまずは3人それぞれの好きな音楽の変遷や、影響を受けたアーティストについて教えていただきたいです。

松永瀀(以下、松永):最初に音楽が好きだと思ったのは幼稚園くらいの頃。母親がピアノの講師をしていたり父親がジャズを嗜んでいたので、わりと子供の頃から音楽には親しんでいました。

yukirie:そうだったんだ。

平井文(以下、平井):知らなかった。

松永:父親はミュージシャンではないんですけど、サックスが好きだったみたいで家にありました。学生になってからは色々聴くようになって、影響を受けたアーティストとしてはアウル・シティーとか、最近だとエミネムもよく聴いてます。今はジャンル関係なくスマホを使って色々な音楽を辿って聴いているので、かなり雑食な方だと思いますね。

ーー平井さんはどうでしょう?

平井:私は楽器を始めたのが高校生の頃でした。その頃よく聴いていたのはRadioheadやSyrup16gなどのバンドの音楽です。当時は7つ〜8つくらいバンドを掛け持ちしていたんですけど、そうなると幅広い音楽を知っておかないといけないから、先輩に色々なバンドを教えてもらってました。

松永:すごいな。そんなにたくさん掛け持ってたの。

平井:インストバンドも組みたいなと思って、バンド募集の掲示板を使ってまた追加で2つ、3つインストのバンドを組んだりして。なので週に2回は必ずライブがあるような生活をしてました。the cabsを知ってからはアングラ寄りになっていって、ブライアン・バッツのプロジェクト・Sleep Party Peopleにハマったり、そこからドリームポップやシューゲイザーを聴き漁るようになったり。

yukirie:僕は国内外問わずマスロックやポストロック、あとは海外のプログレッシブメタルのようなギターがメインのテクニカルなインストものをよく聴きます。個人的に影響を受けたのは凛として時雨のTKさん。彼のように自分のスタイルを強く確立している人に憧れがあります。

TKさんとの出会いが自分の中では大きなターニングポイントでした(yukirie)

yukirie(Gt)

ーーyukirieさんのギターはかなり独特ですが、ギターの奏法で影響を受けた方はいますか?

yukirie:やっぱりそれもTKさんです。ギターを始めたての頃、TKさんとの出会いが自分の中では大きなターニングポイントでした。あとは国内のNUITOだったり、the cabsといった<残響レコード>のバンドもどこかTKさんに通じるものがあって、影響を受けてると思います。きっかけはTKさんでしたが、ここ数年は独創的でテクニカルなインストを作っているギタリストが世界中にたくさんいて、彼らのスタイルも積極的に吸収出来たらと思ってよくチェックしていますね。そういったインプットを重ねて、「自分らしさ」をより追求できるように常に試行錯誤しています。

ーーちなみにギターは何本くらい持ってるんですか?

yukirie:今は6本。全部基本的な6弦ギターです。ストラトキャスタータイプのソリッドボディのギターが好きで。

ーーMVで担いでいるのはアイバニーズですよね。メインはあの一本?

yukirie:そうですね。アイバニーズのAZシリーズです。数年前に購入したんですけど、プレイアビリティに優れたかなり万能なギターなんです。ストラトほど癖が強くなくて、どんなジャンルにも対応できる音が出せる。今の自分の曲作りにおいてAZのサウンドは欠かせない存在です。

ーーインスト以外ではどんな音楽が好きですか?

yukirie:最近だと澤野弘之さんが好きです。彼もやっぱり独自の世界観を持っていて、劇伴作家でありつつも、歌ものまで幅広く作れる方なので憧れがあります。それと今どういうサウンドが流行っているのか、音作りのトレンドや、最新のコード進行を研究するためにも、チャーリー・プースや、ラウヴ、ジャスティン・ビーバーのような海外ポップスを聴いて研究していますね。

ーーSpendyMilyの活動はオンラインでのセッションから始まったそうですが、最初はどういう風に出会ったんでしょう?

松永:元々僕は一人で活動してたんですけど、バンドってカッコいいからやってみたいなと思ったんです。それでまず最初にTwitterでyukirieを見つけて声を掛けました。他にも何人か候補はいたんですけど、やっぱり彼が群を抜いてカッコよかったので、DMを送ったのが始まりです。

ーーyukirieさんのどんな点に惹かれましたか?

松永:やっぱりギターですよね。多分ギターマニアが聴いても驚くと思うし、僕みたいにギターをあまり知らなくてもすごいと感じられるのが彼の一番の魅力だと思うんです。かなりマニアックなことをしてると思うんですけど、あらゆる人に響くところに大きな可能性を感じました。音楽性も幅広いし、とても勉強熱心なのも良いなと。

yukirie:松永が一人でやってた頃の動画を見ると、すごく歌が上手くて、色々な人が彼の歌を聴いて楽しんでたので、すごい人に声を掛けられたと思いました。送ってくれる歌も毎回独創的なものばかりなので、いつも刺激を受けてます。

「yukirieと一緒にバンドをやれるなら」と思って(平井)

平井文(Groove activator)

ーー平井さんとの出会いはどのように?

松永:yukirieに「知り合いでイケてるドラマーがいる」って教えてもらって紹介してもらったんです。そしたらほんまに多才なドラマーだったから、これは面白いと思って。

平井:私とyukirieはTwitterでお互いに“いいね”し合ったりする関係でした。彼の投稿してるギターの演奏動画が好きだったんです。そしたら「こういう話があるんだけどやらない?」と言われたので、「yukirieと一緒にバンドをやれるなら」と思ってOKして。すぐに松永から「よかったら友達になりませんか?」って直接DMが来たんです。「僕、友達少ないんで友達になってこれから頑張りましょう」って。

松永:変な汗止まらんわ。

一同:(笑)。

平井:でもいざ一緒にやってみるとめちゃくちゃ熱のある人だし、歌もすごくて、今となっては本当に入って良かったなと思ってます。

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