『風の音さえ聞こえない』インタビュー

JUNNA、ロックを歌うことで磨かれる自由な歌唱表現 ステージ上での成長やさらなる挑戦への意欲も語る

 JUNNAが6thシングル『風の音さえ聞こえない』を2月16日にリリースした。表題曲とカップリング曲「フラクタル」は、TVアニメ『錆喰いビスコ』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマと挿入歌に起用されており、どちらも思い切りロックに舵を切ったヘヴィな楽曲に仕上がっている。低音の力強い歌声はもちろん、命の一瞬の煌きを内包した高音のコントラストも必聴だ。まもなくデビュー5周年を迎え、シンガーとしてますます充実の季節を過ごすJUNNA。自身で作詞を手がけた「僕のむこう」も含め、新たな挑戦がたっぷり詰まったニューシングルについて、本人に話を聞いた。(編集部)

予期せぬことすらも楽しめる感覚に

ーー年明けすぐの1月7日から愛知、大阪、東京の3都市を巡ったツアー『JUNNA ROCK YOU TOUR 2022 〜風の音さえ聞こえない〜』はいかがでしたか?

JUNNA:めちゃくちゃ楽しかったです! 各会場でみんなに直接会えて、みんなの反応を感じられるのは最高だなって思いました。新曲「風の音さえ聞こえない」を初披露できたのも嬉しかったです。毎回ライブでは、どんな表現をすれば来てくれるみんなに喜んでもらえるかをたくさん考えるんですけど、今回のツアーではしっかり伝えられたかなと思います。

ーー今のJUNNAさんがライブで大事にしているのはどんな部分でしょうか?

JUNNA:言葉にすると難しいんですけど……「ライブは自由でいいんだ!」ということのような気がします。これまではライブ前に「これやろう」「あれやろう」といろいろ考えて、それをひとつずつ実行するのがミッションになっていたところがあったんです。でも今回のライブでは、段取りとかではなくて、来てくれる方の反応や熱量を感じながら一緒に作り上げて、皆さんとの一体感を感じながら自由に動くことができました。周囲のスタッフさんにも「今までと全然違って見えたよ」と言ってもらえましたし、JUNNAとしてのライブパフォーマンスがちょっと変わってきたんだと思います。

ーーライブの経験を重ねてきたことで、その場その場の対応力が鍛えられたのかもしれないですね。

JUNNA:そうですね。例えばステージ上で予期せぬことが起きたとしても、今はあまりそれに引っ張られなくなったというか。逆にそれすらも楽しめる感覚にはなってきていると思います。以前は何かうまくいかないことがあるとショックを受けてしまっていたんですけど。

JUNNA 「Here」Music Video (short ver.)

ーー今はライブに対しての不安は一切ないですか?

JUNNA:いや、不安はあります(笑)。今回のツアーでは1曲目に「Here」を演奏したんです。1コーラスを私の歌とギターだけで届けました。ギターの弾き語りはインスタライブやTikTokなどで挑戦しているのですが、今回のツアーではオープニングで演奏するということもあり、正直言うと毎公演が不安でした。緊張感のある挑戦を公演最初に乗り越えてからは、ありのままの自分でみんなにぶつかっていけたように思います。

ーー「風の音さえ聞こえない」はライブでも大きく盛り上がったんじゃないですか?

JUNNA:アーティスト写真やCDのジャケットが公開されただけでも「ここまでロックに振り切ったJUNNAは初めて見る!」という感想をいただいたりしていたのですが、実際にライブで披露したら、みんながすごく喜んで盛り上がってくれて、熱量がビシビシと伝わってきました。私自身も今回のような突き抜けたテンションの高い楽曲を歌えて、会場全体の一体感を感じることができてがすごく嬉しかったので、これからも「風の音さえ聞こえない」のような楽曲をどんどん増やしていきたいです。

ーーそんな「風の音さえ聞こえない」はTVアニメ『錆喰いビスコ』のオープニングテーマとして起用されていますが、このお話をもらったときはどんな気持ちでしたか?

JUNNA:昨年秋に放送されたTVアニメ『海賊王女』(TOKYO MXほか)から、そんなに月日が経たずに今回の作品に関われることがすごく嬉しかったです。しかも偶然にも東京地区では、「海と真珠」がオープニングテーマになっていた『海賊王女』と、今回の『錆喰いビスコ』は同じ月曜日の24時30分からの放送なんです。私の曲を使っていただいたアニメが2クール連続で放送されているということで、本当に嬉しく、ありがたいことだなって思います。

ーーしかも今回はJUNNAさんの大好きなロック調の楽曲ですし。

JUNNA:そうなんです。熱い少年漫画のようにかっこよく突き進んでいくストーリーの作品なので、楽曲の方向性も熱いロックになりました。「またロックが歌える。やった!」って思っちゃいました(笑)。

ーー「風の音さえ聞こえない」の作曲とアレンジはR・O・Nさんが手がけられています。

JUNNA:R・O・Nさんはかっこいい曲をたくさん書かれている方というイメージがあったのですが、私の想像を超えていたというか。「ここまで振り切った曲になっているとは!」ってすごく感動しました。ギターもめちゃくちゃかっこよくて、熱量と疾走感を激しく感じる曲なんです。でも、ただ熱いだけじゃなくて、立ち止まるようなパートや全力疾走してるようなパートが差し込まれたりもしていて。1曲の中でその強弱がいいアクセントになっているので、私としては本当に大好きな楽曲のひとつになりました。

JUNNA 「風の音さえ聞こえない」Music Video (short ver.)

低音歌唱やラップにも積極的に挑んだ1曲

ーー作詞はeijun(THE BACK HORNの菅波栄純)さん。1stアルバム『17才が美しいなんて、誰が言った。』に収録されていた「世界を蹴飛ばせ!」以来のコラボですね。

JUNNA:はい。「世界を蹴飛ばせ!」のときは、17才当時の私が考えていたことや気持ちを詰め込みたいと思っていたので、想いがストレートに伝わるような歌詞を書いていただいたんです。でも今回は、アニメ作品のタイアップということもあり、作品の世界の登場人物の想いと今のこの時代の私たちに向けた想いも詰め込んでもらいました。

ーーアニメの世界観にしっかり寄り添いつつ、同時にリスナーの感情を鼓舞してくれるメッセージが込められていますよね。

JUNNA:そうですね。歌っている私ですら鼓舞される感覚がありました。特に〈問いかけろ 自らに〉から始まる3行には本当に気持ちを奮い立たせられましたし、サビではその感情を一気に解き放つような言葉が並べられていて。eijunさんが歌詞に込めてくださった強い意志をしっかり受け取った上でレコーディングに臨むことができました。

ーー今回のJUNNAさんの歌声は、サウンドと歌詞のインパクトに負けないパワフルなものになっていますよね。

JUNNA:言葉一つひとつを聴いている方の心に突き刺していくような歌い方を意識しました。とは言え、細かいところまでいろいろ考えながらではなく、曲と歌詞から受け取ったものをしっかり感じながら、ありのままにぶつかっていったような気がします。とにかくテンションを振り切った状態の声を乗せられたらなって。

ーーエモーショナルな部分を重視したボーカリゼーションですよね。

JUNNA:サビは特にそういう歌い方になりましたね。もちろん音程を間違えないようにはするけど、そこにばかりとらわれない歌い方というか。みんなの前で堂々と歌っているライブでの自分の姿をイメージしながら、「声が潰れてもいい!」くらいの勢いで歌い切りました。

ーー低いトーンの魅力を感じられる部分も多いなと感じました。

JUNNA:キーが低いところはとことん低いですからね。この曲では下で支えているような低い歌声を意識しながら歌ったところもありました。以前は低いトーンに苦手意識があったんですが、この1年、ボイストレーニングを欠かさずしっかり続けてきたことで、あまり苦戦はしなくなってきた気がします。トレーニングで学んだことを実際に試せる場がレコーディングだったりするので、今回は曲の雰囲気に合うように、自分なりに狙った歌い方ができたと思います。

ーーBメロの頭はかなりドキッとする低さですよね。

JUNNA:そうですね。Bメロで曲の雰囲気が一気に変わるので、声の重さみたいな要素をプラスするように歌いました。なので、より一層低く感じるのかもしれません。

ーー逆に高いトーンはどんなイメージで歌ったんですか?

JUNNA:この曲は低いところに一点集中していたので、高いパートは自然と歌えました。ただ、この曲単体で歌っていたレコーディングの時はあまり感じなかったんですけど、ライブでやってみたときに「ちょっと待って。かなり高くない?」と思っちゃいました(笑)。今回のように低いところから一気に高いところまで行く曲は今まであまりなかったので、前後の曲の流れの中で歌うライブではなかなか大変で。その分、歌いきれたときにはめちゃくちゃ気持ちいいですけどね。

ーーこの曲にはラップパートもありますね。

JUNNA:ラップは難しかったです。音がないところに対して、しゃべる感覚に近い歌を乗せるというのはあまり挑戦したことがなかったので、自分の中で苦手意識があったんです。でも、弱気な気持ちを振り切ってかっこよく歌うことだけに集中しました。感覚としてはちょっと英語っぽく、単語同士が流れるように繋がって聴こえる表現をした感じです。

ーーこの曲を通してラップにも自信が出たんじゃないですか?

JUNNA:ラップに対しての抵抗は全くなくなりました。特にライブでこの曲を歌っていると、ラップの部分の表現の自由度が高いというか。「今日はこう歌ってみようかな」とか、いろんな遊びができるので、めっちゃ楽しかったんですよね。でも、1曲全部をラップで歌ってと言われたら、ちょっとやめていただきたいとは思うんですけど(笑)、こうやって曲の途中にアクセントとして盛り込んでいくのは、またやってみたいです。

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