桐谷健太、菅田将暉、池田エライザ……篠原誠に聞く、au「三太郎シリーズ」CM曲に俳優陣を起用した背景
桃太郎や浦島太郎、金太郎など昔話の主人公をモチーフにしたau「三太郎シリーズ」。キャラクターたちの和やかな会話劇が印象的だが、アーティストのみならず時に俳優陣をも起用するCM曲にも毎回注目が集まっている。中でも桐谷健太扮する浦島太郎「海の声」は、2015年夏にオンエアされ、『第67回NHK紅白歌合戦』に出場するほどの人気に。そこでCMを手がけ、同曲や菅田将暉「見たこともない景色」、親指姫(池田エライザ)「みんなってエブリワン!」などの作詞も担当する篠原誠氏に、起用の背景や俳優陣ならではの歌の魅力などを聞いた。(編集部)
『紅白』出場も果たした「海の声」が生まれるまで
ーー2015年にスタートした「三太郎シリーズ」には松田翔太さん(桃太郎)、桐谷健太さん(浦島太郎) 、濱田岳さん(金太郎)をはじめ、そうそうたる俳優陣が出演していますが、キャスティングの際に意識していることはありますか?
篠原誠(以下、篠原):大前提として、“お芝居が上手い人”ということを大切にしています。昔話を既成概念と捉えるなら、「三太郎」シリーズでは、その既成概念を壊す、ずらすということでCMを企画しています。なので、みんなが思っている桃太郎よりはやんちゃな感じがいいな、浦島太郎はちょっと愚鈍な感じがいいな、金太郎は女々しいところがあったほうがいいななど、一般的なイメージとは違うキャラクター設定にしています。そのキャラクターを演じてもらうときに、誰が一番適任かというところで選んでいきました。
ーー篠原さんが思う“お芝居が上手い人”はどんな人でしょう。
篠原:1つは、その人が本当にいるように見えるかどうか。その人が何かを演じているように見えるというより、そういう人が本当に世の中に存在しているようにみえるかどうかかなと個人的には思っていて。かつ、悪役だろうが、とんでもないクズだろうが、そのキャラクターがどこかチャーミングに見える。そういう人にやっていただけたら嬉しいなと思って、キャスティングをお願いしています。広告なので、たくさんの人が見るし、必ずしも見たくて見るわけではなくて、急に遭遇したりするものなので、その時に「なんか嫌だな」と思われたくない。TVCMは、言ってしまうと勝手に人の家に上がって見せるみたいなメディアなので、どんなキャラクターであれ、最後は少しチャーミングに見えるというのが大事な部分かなと思います。
ーーキャラクターはもちろん、CM曲にも毎回注目が集まっていますが、2015年夏からオンエアされた「海の声」が最初だったかと思います。当時は演技のイメージが強かった桐谷さんに、歌をお願いしようと思ったのはなぜだったのでしょう?
篠原:「三太郎」CMは立ち上げ時からずっと会話劇だったんですね。そろそろ変化球を投げたいなと。ずっとアップテンポな曲をやっていたアーティストが、急にバラードを出すみたいな感じで、会話劇とは少し毛色の違うものがいいなと思っていたタイミングでした。その時のCMのテーマが、“ガラホ”というガラケーとスマホの間のような商品で、音声が良いということを訴求したかった。それなら歌と相性がいいな、と。歌を歌っているだけのシンプルなCMで音声が良いと訴求するのが、変化球としてもいいんじゃないかと思いました。さらにネットで検索していたら、桐谷さんが三線を弾いている動画があったんですね。これは運命だな、と。浦島太郎が浜辺で三線を弾きながら、乙姫への想いを歌うというのが一番いいんじゃないかと考えました。その時もう一つYouTubeで見たのが、桐谷さんが映画か何かの中で歌を歌っているシーンだったんです。もちろんうまいんですけど、それ以上にすごく気持ちが伝わってくる気がして。これはもう歌ってもらうべくして、“浦ちゃん”が桐谷さんだったんじゃないかと思うくらい、「これしかない」と感じました。プレゼンの時、普段は複数案を出すんですけど、その時は1案で「これしかない」という感じで提案しました。個人的にBEGINさんの「島人ぬ宝」という曲が好きで、三線で「島人ぬ宝」みたいな曲調で、ラブソングの歌詞を歌っているといいなと思っていたので、「島人ぬ宝」の替え歌ではじめは歌詞を考えました。なので実は「海の声」の歌詞は、1番くらいまでは「島人ぬ宝」のメロディでも歌えるんですよ。当時BEGINさんにもし作曲してもらえたら、こんなに幸せなことはないなと思って、ダメ元でお願いしたら、時間がない中だったんですが、なんと引き受けていただけて。そこから「海の声」が生まれました。