BTSが今、多くのARMYの心を掴んだ理由 努力の蓄積が見えた2021年からさらなる飛躍へ
2020年から続くエンタメ業界における大混乱の中で、BTSの勢いは世界的にも群を抜くものがあった。2020年8月にリリースした初の全英語歌詞で綴られたデジタルシングル「Dynamite」が大ヒット。2021年3月には韓国の歌手として初めてグラミー賞の最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門にノミネートされる快挙を成し遂げた。
5月には「Dynamite」に続いて、英語曲の「Butter」を発売。YouTubeにアップされたMVが最多同時アクセス数390万人を突破。公開から24時間で再生回数1億820万回を超えるなど、YouTubeのミュージックビデオ史上24時間での最多再生数を記録した。『Billboard Hot 100』では初登場から7週連続で首位を独走したことでも大きな話題となった。
歌うこと、踊ることが好きな青年たちが、人気グローバルグループへと駆け上がる。そのサクセスストーリーが最も勢いづいたタイミングが、ライブもなかなか開催することのできないこの時期だったというのは、かつて類を見ない動きではないだろうか。
BTSが今このタイミングで、多くのARMY(ファン)の心を掴むことができた理由。それは圧倒的な情報供給量の積み重ねだったように思う。特にライブができないこの約2年間、彼らはARMYが「追いつけない」と嬉しい悲鳴を上げたくなるほど、ネット上で様々なコンテンツを発信し続けた。
ひとつの楽曲に対してオフィシャルMVのみならず様々なバージョンのパフォーマンス動画を公開。さらに撮影やイベントの合間にスタッフが撮影した「BANGTAN BOMB」というコンテンツもYouTubeで不定期にアップしていく。またメンバーの関係性が浮き彫りになる『Run BTS!』『In the SOOP BTS ver.』といったリアルバラエティも続々とファンのもとに届けられたのも記憶に新しい。
加えて、彼らは食事を取る間やダンスを練習する間、楽曲制作をする間も惜しんで、V LIVEで生配信をしてくれた。“一体いつ寝ているのか”と思ってしまうほど驚くような時間にも、すきあらばファンコミュニティプラットフォーム・Weverseでつぶやく姿も見受けられた。会えなくても同じ時間を過ごしていること、そして「ARMYに会いたい」のだと何度も何度も伝えていく。
ときには、ステージでは決して見せないような寝起きの顔だったり、弱気な発言もする。そんな素の感情を飾らずにそのまま届ける彼らのコンテンツが、まるで日記かのようにいつでも読み返せる状態になっているのだ。新たにBTSを気になった人たちはいつでも彼らの心の中にアクセスが可能で、「ARMY」と名乗るのに十分な情報をネットを通じて知ることができる。そうした環境が年々充実していくのだから、情報の蓄積というのは大きな財産だ。
また、BTSは“謎解き“とも言いたくなるような意味深な映像を投下するのが得意なことも、多くの人の好奇心を刺激し続けた理由だ。ARMYたちはその考察をこぞってSNSで発信する。「この数字はこういう意味があるのではないか?」「あのときの作品と繋がっているのでは?」。そんな声を聞けば、彼らにまつわる数字や作品をまた掘り返してみたくなるもの。
そうして彼らのことをもっと知りたい欲求が常に刺激され、その気持ちに寄り添うだけの情報に手が届く環境が整っているだけでなく、新鮮な情報としてBTSメンバーも積極的に生配信でヒントや正解を示していった。そのやり取りがまた振り返りたくなる思い出として蓄積され、様々な国の言語に翻訳されて多くのARMYの心を掴むきっかけにもなった。
オフラインでの接触が難しい時期だからこそ、積極的にオンラインでコミュニケーションを取り続けてきたBTS。だが、その圧倒的な供給量によって、むしろオープンな空間でファンを開拓することができたように思うのだ。