『Love Song』インタビュー

Uruが歌う、自分に素直であることの大切さ 細部までこだわり抜いた『推しの王子様』主題歌の制作秘話

 Uru、通算11枚目のシングル曲「Love Song」は、比嘉愛未が主演を務めるドラマ『推しの王子様』(フジテレビ系)の主題歌として書き下ろされた楽曲である。タイトル通り、心の中にある“好き”という感情に気づく瞬間をドラマチックに描いたラブソングながらも、楽曲の中の主人公である“私”や“あなた”にはそれぞれの人生があり、夢や仕事があり、大切な仲間がいることも伝わってくる、多層的な捉え方のできる楽曲となっている。夢とは何なのか。好きという感情とはどんなものか。生きがいとは、真実の愛とはーー。Uruの優しい歌声が聴き手の心に問いかけてくるテーマは、ドラマとも通じている。『推しの王子様』がまもなく最終回を迎えるにあたり、主題歌を通してドラマに寄り添ってきたUruにインタビュー。シングル制作のことから、これからに向けた想いまで、Uruはとても丁寧に答えてくれた。(永堀アツオ)

「ひたむきに生きる勇気や活力を感じられるドラマ」

ーー春から夏にかけて行われた全国ツアー『Uru Anniversary Tour 2021「Punctuation」』を終えた心境から聞かせてください。

Uru:デビューして以来初めてのツアーだったこともあって、各地を回れることがとても楽しみで。このような状況の中でも会場に足を運んでくださった皆さんへの感謝と、5年間応援してくださっている皆さんや支えてくださっているスタッフさん、サポートメンバーへの感謝など、いろんな想いが溢れたツアーになりました。「Punctuation=句読点」という意味のツアータイトルだったのですが、どの会場でも温かい句読点を打つことができて、本当に嬉しかったです。

ーーこの夏、毎週木曜日にはUruさんによる主題歌「Love Song」が流れるドラマ『推しの王子様』が放送されていました。ドラマの放送日はどのような気持ちで待っていましたか。

Uru:毎回主題歌を歌わせていただく際には、初回の放送でとても緊張してしまうのですが、今回もドキドキしながら放送前からスタンバイして、リアルタイムで観ていました。ドラマの終盤でイントロが流れ始めた時、「きた……!」と思ったのですが、その時の登場人物たちの台詞がシリアスで表情にもとても引きこまれてしまって、イントロの後から自分の曲を聴き逃してしまったので、終わってからすぐにもう一度録画を観て確認しました(笑)。

 毎話、ドラマの中で使っていただける嬉しさの方が大きいのですが、ドラマに合っているだろうか……というドキドキは、物語が進んだ今も流れるたびに感じますね。ドラマのストーリーが展開していくごとに、もっともっと密着度の高い曲になってくれたらいいなと願いながら観ていました。

ーードラマはまもなく最終回を迎えようとしています。台本を読んでいた段階ではわからなかった気づきなどはありましたか。

Uru:台本を読ませていただいた時から感じていたのですが、このドラマはただのラブストーリーではなくて、仲間と生きていくことや、日常生活をひたむきに生きる勇気や活力も感じることのできるドラマだなと思います。そして、好きなことがあるということ、仲間がいるということが、生活に潤いやエネルギーを与えてくれているんだなというのが、文字から映像になるとなおさら感じられて、毎回グッときます。このコロナ禍において、苦しい思いをしたり心が疲れてしまっている方ってたくさんいらっしゃると思うのですが、主人公や登場人物たちのひたむきさが、そういった方々にも届いてくれたらいいなとドラマを観ながらしっとりと思っています。

ーードラマでは「推しがいるから仕事が頑張れる」という部分も描かれておりました。Uruさんはこれまでの人生の中で、生きがいとなるほど何かに夢中になったものはありますか。

Uru:動物ではゴリラ、人ではスキマスイッチさんに夢中になっていました。スキマスイッチさんはファンクラブにも入っていたし、CD特典になっていたDVDのロケ地に友人と行ったりもしたし、出演される音楽番組の観覧にも行きました。私の音楽を頑張りたいという気持ちと素直に向き合うきっかけをくださったお二人です。まさに、“スイッチ”を押していただきました(笑)。

ーーゴリラの方は?

Uru:ゴリラはずっと好きな動物なのですが、どっしりとした背中と家族を守ろうとするたくましさや優しさ、人間と同じようにじゃれ合って遊んだりする可愛らしさが混在していて本当に大好きです。『Tour 2021「Punctuation」』ツアーは、「来てくださったお客様に、必ずひとつはゴリラの知識を持って帰ってもらおう!」という、別名「ゴリラ布教ツアー」でもありました(笑)。

ーー(笑)。また、夢を持って仕事を頑張っている方々の中には、仕事と恋愛の両立で悩んでいる方も多いようです。Uruさんは、仕事と恋愛の両立は可能だと思いますか。

Uru:可能だと思います。恋愛ってパワーにもなったりするし。でも、タイミングと思いやりが大事だと思っていて、やはり全力を注いで集中したい時にはどうしても相手のことを疎かにしてしまいがちですが、それでもそれを理解してくれる相手と、理解してくれていることへの感謝と思いやりが大事だと思います。

 日常の中で、感情の振れ幅とか刺激があると、そのぶん発見できることも増えていきます。曲を作ったり歌詞を書いたりする時もそうですけど、デスクにじっと座って集中していても出てこない時は、諦めて散歩したり友人に会ったりすると、フッと思いついたりして。そういういろんな潤いやシーンがあるからこそ、頑張れたり発見できたりするのかなと思っています。

アルバム1枚できるほどのデモ曲から探った“ぴったりはまる響き”

ーーそれでは「Love Song」の制作過程について聞かせてください。ドラマ『推しの王子様』の主題歌としてオファーを受けたときはどんな心境でしたか。

Uru:率直に嬉しかったです。今まではシリアスというか、バラードが似合う作品を担当させていただくことが多かったのですが、そこにコメディ要素も少し加わったラブストーリーと伺っていたので、寄り添える曲を作れるかどうかという緊張感もありました。

ーー「脚本を何度も読み」「何度も楽曲を作り」とコメントされていましたが(※1)、脚本を読んで浮かんだイメージや、そのイメージを具現化するために苦労したのはどんな点でしたか。

Uru:「人を好きになること」を忘れて、ずっと何かに没入したり夢中で駆け抜けてきた人物が、ある出会いでそういう気持ちを思い出して、なかなかその気持ちに向き合えずにいたけれど、その人と一緒に過ごしていく中で隠しきれない自分の気持ちに気づいてやっと素直になれる……というようなイメージで、アルバムが1枚できるほどたくさんのデモ曲を作りました。スロウなバラード寄りの曲、ミディアムバラードな曲、ちょっとアップテンポな曲……どれがいいのか、曲を作っては台本を開いて、そのデモを流しながら読んでみたりして。「あまり切なくなりすぎても違うし、軽くなり過ぎても違う。もっと温かくて……」というバランスを感覚的に捉えるのが、一番難しかったです。

ーー歌詞では、自問自答を経て、〈人を好きになる気持ち〉を思い出させてくれた〈あなた〉が私の中にいることに気づく瞬間が鮮やかに描かれていますね。

Uru:本当は気づいているのだけど、それを素直に受け入れられずに否定から入ってしまうことって、誰でも1回はあるんじゃないかなと思っていて。でも、結局その人と一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、もう嘘はつけない、素直になろうという、ある意味自分の壁を打ち破る瞬間がいずれやってきますよね。もしかしたら、そのまま抑えてしまう人もいるのかもしれないけど、それってとても苦しいことだし、自分に嘘をついてることも苦しくなってしまう。もし、この曲を聴いてくださった方の中に、同じような状況の方がいらっしゃったら、その気持ちを素直な方向へ導けるような曲になれ……というメッセージを込めたつもりです。

ーー細かい質問になりますが、Aメロの〈ない、ない〉と繰り返すフレーズは、紙とペンだけでは辿り着かない歌詞のように感じました。どのように生まれてきたものでしょう?

Uru:この曲はメロディが先にできた曲なので、できた段階から、ここは同じ言葉を入れようと決めていました。〈ない〉にしたのは、この曲の主人公が自分の気持ちを否定したがっている様子を表したかったのと、探していた響きにぴったりとはまったからです。2回否定しているのが、逆に肯定のような感じもあって気に入っています。

ーーその後の〈確かに今 ここにあって〉のあとに、歌詞には掲載されてないですが、「あい」を見つけた、もしくは拾ったようにも感じました。

Uru:この部分だけでなく、この曲の中にはタイトルの「Love Song」に合わせて隠れた「あい」が散りばめられています。「ない」も母音だけで聴くと「あい(A・I)」だし、否定の裏側には「あい」が隠れているということをこっそり仕掛けてあります。

ーーなるほど。その「ない」と「あい」が、後の〈出逢い〉と〈かけがえない〉、〈手を取り合い〉〈笑い合い〉へと繋がっていくことで、R&Bのようなグルーヴが作られていきますよね。曲の冒頭では、たった一人で鏡を見つめて悩んでるようにも感じられますが、イントロのピアノ含めて、少しだけ弾んでるようなサウンドにした理由を教えてください。

Uru:イントロもこの曲のアレンジも、全てトオミヨウさんがとても素敵にしてくださいました。私がアレンジを最初に聴いて感じたのは、「Love Song」らしい、少し可愛らしくスキップするような、誰かを想っている時にいつも見ていた景色が綺麗に見えるように、温かくてキラキラしたものにしてくださったんだなという印象でした。

 デモ段階にもあった曲の持っている雰囲気を、トオミさんが広げてくださったんだと思います。トオミさんには、デビューの時からアレンジなどでお世話になっていて、とっても素敵なサウンドを作ってくださるという信頼が元々あったので、私から特別こうして欲しいというお願いはなくて。ただ、「少し前の洋楽で、ヴァネッサ・カールトンやダニエル・パウターなどのような雰囲気で作りました」とお伝えさせていただきました。

【Official】Uru 『Love Song』 フジテレビ系 木曜劇場「推しの王子様」主題歌

関連記事