藤澤ノリマサ×松井五郎『La Luce-ラ・ルーチェ-』対談
藤澤ノリマサ×松井五郎対談 この時代に歌うべき“歌”に向き合った、新たな音楽を探す旅
「La Luce」は、結局「地球は丸い」という話なんです(松井)
――歌い方のほかに、もう一つ重要な要素として、ノリマサさんのメロディメイカーとして素晴らしさを挙げたいと思います。個人的には、「Only A Smile」「こんなに」のようなスタンダードなポップス感、たとえばバート・バカラックを思わせるような、気品あるメロディラインにとても惹かれました。
藤澤:それは全部、松井さんに教えていただいたんです。
松井:彼が38歳で、僕が63歳なんですが、彼のファン層はその中間にいるような人が多いんです。そうすると、僕が若い頃に聴いていた音楽で、その方たちがちょっと背伸びして聴いていたような音楽がぴったりハマる。おっしゃるように「Only A Smile」や「こんなに」は、バート・バカラック、バリー・マニロウ、ビリー・ジョエルとか、70~80年代初頭ぐらいのテイストがあるんですね。ノリマサくんはちょうどその頃、音楽を聴き始めた感じだよね?
藤澤:そうですね。LP盤で父に聴かせてもらっていました。
松井:そういった、ある種の懐かしい匂いもあるといいなと思っていたんです。あの頃、メロディがたくさん溢れていた時代の良さを、僕は最近あまり感じなくなっていて。やっぱりきちんとメロディを作れる人になってほしいなと、彼に対しては思うんです。
――ノリマサさんが個人的に「いいメロディが書けた」と自賛したい曲は?
藤澤:それは、いつも聞かれて困る質問なんですけどね……(笑)。
松井:その日によって違ったりするでしょ。今日はどんな気分?
藤澤:9曲目の「漂泊」は、ちょっとクラシカルな、イタリアっぽいメロディに仕上がったかなと思っていて、気に入っています。「雨」も好きですね。あとは、やっぱり「La Luce」は、これから自分が歌っていく中で代表曲の一つになったかなという気がします。
松井:「La Luce」は、レトリックを使っているから、ストレートにわかりにくいところもあるんですけど、結局「地球は丸い」という話なんです。歩いていけば自分の後ろに道は続いていくという、自分の位置付けのようなことを歌えるといいかなと思っていました。たとえば僕が若い頃には、地球の平和、未来、環境問題とか、そんなに気にしてなかったんですね。ジョージ・ハリスンが『バングラデシュ・コンサート』(1971年)をやることで、「そういう問題があるんだ」と思ったことはあるけれど、日常の中で流れてくるニュースとしては、対岸の火事のように思っていた。でも今は、たとえば駅からここまで歩いてくるだけでもすごく暑いし、温暖化や自然破壊が日常の中ですごくリアリティを持ってきている。だから、「僕らはこの星で暮らすんだ」も、「誰か僕に名前をもください」もそうなんだけど、昔はすごく硬派なテーマだったものが、このアルバムではすごく日常的に、ラブソングと同じ位置付けで歌われているんです。
――そう思います。
松井:今日は彼女とどこに行こうかな、と思っている時にゲリラ豪雨も来るし、感染対策で密にはなれないとか、今はそういう状況じゃないですか。だから、単純に「あの子を好きでどうのこうの」という歌にはなりきらない。「こんなに」という歌も、言葉はすごくシンプルだけども、あれをどこでどういう風に聴くかによって、質感が全然変わってくるだろうと思います。
藤澤:「こんなに」は、歌い方がすごく難しかったですね。ウィスパーを使っているので。松井さんがすごくこだわっていらっしゃいました。
松井:この言葉をどういう感じで聴きたいか? というものがあるから。得意技を持っている人って、全曲に入れたくなっちゃうんですよ。そうすると、さっきの話に戻るんですけど、予定調和になってしまう。
藤澤:「ああ、またそこでhigh C(※鍵盤楽器における真ん中のドの1オクターブ上のド)に行くのね」みたいな(笑)。
松井:おそらく、ファンにとってはいいんですよ。でも今回のアルバムには、新しいファンの方を増やすというテーマもあるので、彼を知らない人が聴いた時に「この歌いいね」と思ってくれないと、広がっていかない。そういうこだわりはありました。
松井さんの詞の中ある”メロディ”に、いつも「いざなわれる」(藤澤)
――ノリマサさんにもう一つ聞きたいのですが、詞が先にあって曲をつける場合、言葉の流れの中にあるメロディを読み取るんですか?
藤澤:松井さんの詞の中には、もうあるんです。僕はいつも「いざなわれる」という言い方をしているんですけど、メロディが湧いてくるというか、言葉が歌っているから、書きやすい。もちろん、そのように書いてくださっているとは思うんですけど。
――たとえば「手紙」は、いわゆるAメロ、Bメロ、サビという構成とはまったく違いますよね。言葉の繰り返しと、メロディの変奏で、ぐっと引き込んでいくような。
藤澤:それも今回のテーマなんです。日本のポップスのようなAメロ、Bメロ、サビという構成にこだわらなくても、海外の曲のように、最初からサビのようなメロディが出てきたり、AとBの繰り返しだったり、シンプルでリフレインできるような曲を作ろうというのが、松井さんからいただいたテーマでした。
松井:どっちがいいという話ではないんですが、60~70年代まではメロディの時代というか、たとえば「あの頃の洋楽を歌ってみて」というと、大体みんな出だしを歌うんですよ。海外の曲には「サビ」という感覚があまりなくて、いわゆる「ブリッジ」というか、特にダンスミュージックやR&Bだと、サビに当たる部分は本人は歌わずに、コーラスに任せていたりする。そういう意味で、出だしのメロディが良い曲が本当にたくさんあるんです。一方で日本の80~90年代のJ-POPは、とにかくサビを大事にしたわけです。CMやドラマでよく使われたという背景もあるんですけれど、メロディの流れで作るんじゃなくて、構成で積み上げていく作り方をしていたと思うんですね。でも、最初からいい曲だったら変にいじる必要はないわけなので。そういう曲が作れたらいいなと思いますね。
――お二人のコンビネーションには、まだ続きがあると期待しています。
松井:今また、この作品の延長線上で曲を作っているんですけど、さらにまた難しいリクエストをしているところです(笑)。
藤澤:また全然違う作品ができるんじゃないかと思います。
――楽しみにしています。ノリマサさんは9月と10月には初の舞台『RUST RAIN FISH』に、役者としての出演がありますね。
藤澤:はい。今までは歌ばかり歌ってきて、ミュージカルにも出演したことがなかったんですけど、来年デビュー15周年ということで、新しいことにチャレンジしたい気持ちがある中で、舞台のお話をいただきました。会話劇のミステリーなんですが、とにかくセリフを忘れないように頑張ります。今年一番の挑戦だと思っていますけど、違うことを経験した上でまた歌の世界に戻ると、より多くのものが得られるんじゃないかと思うので、頑張っていきたいと思います。
――そして9月5日に東京、11日には大阪で、『藤澤ノリマサ La Luce クラシカルコンサート 2021』が開催されます。
藤澤:これは前代未聞の編成で、「弦6」なんです。弦楽器6本と僕のピアノという編成で、東京は紀尾井ホールで、大阪は住友生命いずみホールで開催します。アップテンポの曲もすべて弦でリアレンジしてもらうので、ドキドキしますけど、すごく楽しみですね。それと、東京公演と同じ9月5日から、ようやく『La Luce』の楽曲のストリーミング配信がスタートします。もう一つ、9月15日から放送される韓国ドラマ『悪い愛』(BSフジ)のエンディング曲に「La Luce」と「雨」が決まりまして。長いクールのドラマなのですが、前半が「La Luce」で、後半が「雨」になります。ぜひ多くの方に聴いてもらいたいなと思っています。
サイン入りチェキプレゼント
藤澤ノリマサ・松井五郎 サイン入りチェキを1名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。
応募方法
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※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
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<締切:9月26日(日)>
■リリース情報
藤澤ノリマサ約3年ぶりのオリジナルフルアルバム
『La Luce-ラ・ルーチェ-』
2021年5月19日発売
配信URL:https://fujisawanorimasa.lnk.to/laluce
【初回限定盤】
品番:FRCA-1307
価格:¥4,180(税込)
・BOX仕様
・24Pのピクチャー・ブック付き
【通常盤】
品番:FRCA-1308
価格:¥3,520(税込)
■舞台情報
【RUST RAIN FISH】
演出家・西田大輔が描く本格派ミステリ作品「ONLY SILVER FISH」シリーズの第三弾。
舞台は、第二次世界大戦時の日本。「ONLY SILVER FISH」「+GOLD FISH」から引き続く“上質なミステリ”をテーマに、史実とファンタジーが混ざり合うワンシチュエーション会話劇として上演。
〈東京公演〉
2021年9月23日~10月3日
紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
〈大阪公演〉
2021年10月15日~10月17日
COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
HP:https://www.mmj-pro.co.jp/rustrainfish/
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