4thアルバム『コトバアソビ』インタビュー

TRUE、『コトバアソビ』に込められた歌い続ける決意 アルバムを通して伝えたい、13曲の“音楽”と“言葉”

 TRUEが前作『Lonely Queen’s Liberation Party』から3年ぶりとなるニューアルバムをリリースした。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』やTVアニメ『転生したらスライムだった件』(TOKYO MXほか、以下『転スラ』)第2期の主題歌などに加え、音楽を存分に楽しむ姿勢を示したリード曲「MUSIC」などの新曲を収録した通算4枚目のアルバムに、唐沢美帆名義で作詞家としても多方面で活躍する彼女は、『コトバアソビ』というタイトルをつけた。“音楽”と“言葉”。作詞家として、ボーカリストとして、アーティストとして、現在のどのような心境を反映した作品になったのか。(永堀アツオ)

「私にとって、今、歌うことが本当に必要」

ーーニューアルバムが完成した心境から聞かせてください。

TRUE:やっと完成したという感じですね。実は去年の5月くらいから曲集めを始めて、9月から具体的に動き出して。長い期間をかけて制作したものがやっと形になったことには感慨深いものもありますし、ここからが新たなスタートというか、“加速”のきっかけになればいいなと思ってます。

ーーフルアルバムは3年ぶりとなりますが、どんな作品にしたいと考えていましたか。

TRUE:コロナ禍に立ち止まっているのがどうしても嫌だというのが最初のスタートでしたね。だから、たくさん音楽制作をしましょうと。『転スラ』のオープニング主題歌「Storyteller」含め、色々な楽曲を制作していて。その流れでアルバムに突入したので、気持ちが途切れずに制作をし続けているなっていう感覚ですかね。

ーーコンセプトを設けてから制作を始めたわけではないんですね。

TRUE:『コトバアソビ』というタイトルがついたのは、もう少し後ではあるんですけど、制作の始めの段階から、言葉を綴り伝えるものとして、今何ができるかということは考えていて。作家としても歩んできた上で、たくさんの言葉と出会って、愛して、時には憎んできたので。何度も何度も循環してきた私だからこそ、今伝えたいことってなんだろうと思ったんです。そこから始まった制作でしたね。

ーー“言葉”がテーマになっていたと言ってもいいですか。

TRUE:そうですね、なっていると思います。

ーーその“今、伝えられること/伝えたいこと”とは何でしたか。

TRUE:曲によっても違うんですけど、私が一番に表現したかったことは、「MUSIC」に込められていると思っています。やはり“共鳴”ですかね。独りよがりの音楽ではなくて、私が生み出した音楽が誰かの元に届いて、そこでまた何かの感情が生まれて共鳴していく。そうやって楽曲は成長して、より大きな意味を持つものに育っていくと思うので。アルバムのリード曲として制作するのは、独りよがりな言葉や音楽ではなく、きちんと聴き手を意識して作る“共鳴”の歌だと思ったんです。

【TRUE】「MUSIC」Music Video

ーー歌詞の中にある〈君〉というのはリスナーなんですね。

TRUE:私の曲を受け取ってくれるすべての方ですね。本当にこの3年間、様々なことがあって。その度に私は音楽を届けてきたし、みんなはその音楽を聴いて、たくさんのものを返してくれた。そうやって、音楽を通して想いを伝え合えるんだと体感した3年間だったんです。

ーー歌う理由や歌う意味、歌い続けていく決意も込められていますよね。

TRUE:そうですね。どれだけ届かなくても、どれだけ無力さを感じても、私はやっぱりステージに立つだろうし、また音楽を作るだろうし。そういった決意みたいなものも反映できたんじゃないかなと思います。

ーーまた、〈何度でもここに立つ〉とライブのことも示していて。TRUEさんにとっては、作詞やレコーディングだけでなく、ステージに立つというのも重要な要素の1つなんですね。

TRUE:私にできる唯一のことで、一番生きてるって実感できる場所だなと感じてて。一番怖いけど、一番ホッとする場所でもあるんですよね、ステージは。

ーーもう歌いたくないなと思ったことはないですか。

TRUE:何度もあります。言葉の無力さを感じたこともあるし、なんて伝えていいのかわからないっていうこともたくさんありました。自分の言葉や音楽がすごく無力だなと思ったことも何度もあります。でも、そういうものを経て、ステージに立ち続けることを選んだんですよね。特に2019年は、リリースをしないで、ライブだけを続けた1年間だったんですけど、その1年を通して、ひたすら歌を届けることで、逆に皆さんからもらったものがたくさんあって。音楽には力があるってこともわかっていたつもりだったけど、足元が揺らいだ時期でもありました。そんなとき、皆さんから音楽には力があるよ、大丈夫だよって教えてもらったんですね。だから、ずっと信じてやってこられたわけではないです。たくさん疑ったし、自信も失ったりしたので。

ーー今は、自分の言葉や音楽についてどう考えてますか。

TRUE:今も葛藤は続けているけど、その葛藤をやめたら、伝えることもやめちゃいそうだなと。だから、葛藤し続けていくべきだと思うんですね。今回のアルバムを通して、自分自身の表現、それに私自身の心の深い部分も変化し続けていると思っていて。これからも自分を取り巻く環境や、それこそ音楽シーンもどんどん変化していくと思うんです。その変化に対してすごく素直でいたいし、変化し続けていきたいなと思う。なので、ステージに立つことや音楽を作ることには終わりがないんだと覚悟しています。

ーーその覚悟はいつ決まりましたか。

TRUE:作家としては10年以上お仕事させていただいているんですけど、2014年にシンガーとしてデビューしてから得たものはとても大きいですね。作家としてのお仕事だけでは見えない景色がたくさんあったので。特にこの3年間は一番感情が動いて、あがいて、それでも手を伸ばし続けた期間でした。

ーー今、とても肝が据わっているように見えるんですよね。作詞家として、シンガーとして、心の底から一生続けていく覚悟が決まっているように見えるというか。

TRUE:確かに、自分が優れているとは思っていませんが、自分が伝えていいんだという自信はつきました。私が信じる、私にしか作れないものを生み出したら、必ず受け取ってくれる人がいることがわかっているから、そこは迷いなくいられる。ただ、その自信も日々努力して更新し続けないといけないし、伝えることを諦めてはいけないとも思っています。

ーー先ほどおっしゃっていた、ご自身の心の奥底の変化というのは? 

TRUE:優しく強くなったと思います。デビューした頃は、歌えることがとにかく嬉しくて。「自分はこう見られたい」とか、「こういう音楽を作る人でいたい」ってことを強く意識していたんですね。でも、今はどう見られるかはあまり意識してなくて。それよりも、何を伝えるべきか、何をすべきかに重きを置くようになりました。そうなったことで、気持ち的にも変化してきたように思います。あと、少し俯瞰で周りを見る冷静さも身についたかな。

ーー自分よりも相手を見てるってことですよね。少し重複する質問になりますが、改めてリード曲が音楽を意味する「MUSIC」になっているのは?

TRUE:言葉を綴ることも、歌を唄うことも、私の中ではすごく当たり前のことなんですね。だから、「私にとって音楽とはなんなのか?」ということをそれこそ言葉を使って、「MUSIC」で表現できたという感覚ですかね。

ーー「WORD(=言葉)」ではなかったんですね。

TRUE:私にとって、今、歌うことが本当に必要だからだと思います。もちろん言葉を綴ることも生きていくために必要だと思って始めたことではありますが、でも、やっぱりTRUEとしての私にたくさんのものを与えてくれた人への感謝は、音楽で返すべきだと思ってます。

ーーレコーディングはどうでしたか。気持ちが晴れるような歌いっぷりですが。

TRUE:とにかく自由に伸び伸びと歌いました。あと、作曲・編曲のトミタカズキさんとの出会いも大きくて。わかってはいたものの、改めて声は1つの楽器になりうるんだなってことを再確認させられたような感覚ですね。コーラスワークも含めて、これまで以上にボーカリストとして試された1曲だったと思います。

ーー歌唱力と表現力、それにパワーも遺憾なく発揮してます。

TRUE:ただただ気持ちよかったですね。タイトル、歌詞、ボーカル、それに新しい技法を使って撮影していただいたMVも全てが潔くて。自分でも私らしいなと感じています。

ーーリード曲であり、アルバムのオープニングナンバーでもあります。

TRUE:出会った瞬間から1曲目だなと思っていました。クライマックス感もあるんですけど、この曲から始めないとアルバムはまとまらないなと思って。1曲目で私の持つ音楽観と言葉への向き合い方をきちんと皆さんにお伝えした後に、各楽曲を楽しんでいただけるような構成にしました。

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