どんぐりず、飄々としながらもドープなスタンス 海外でも中毒者続出の“多面的な面白さ”
どんぐりずは、群馬県桐生市出身の幼なじみで結成されたユニットだ。2015年に1stアルバム『世界平和』を発表以降、編成や音楽的変遷を重ね、現在は森とチョモの2人編成へ。2020年以降はビクターエンタテインメント内の<CONNECTUNE>に籍を移してリリース攻勢を開始、今年2月には4部作となるEPシリーズ『4EP』の第1弾『4EP1』を発表したことも記憶に新しい。また、森はRed Bullが主宰する人気サイファー企画『RASEN』にLil Soft Tennis、NENE(ゆるふわギャング)とともに出演し、大きなインパクトを残している。
飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進する彼らだが、このレビューを書いている最中にも、『4EP1』収録楽曲「NO WAY」が中南米を中心とした16カ国の音楽ストリーミングサービスのバイラルチャートに軒並みランクイン、という奇報が入ってきた。なかでも、8月中旬にはコロンビア、スペイン、ペルーなどの10カ国でトップ10圏内、チリ(※1)、メキシコ(※2)、アルゼンチン(※3)にいたっては首位(!)を飾っている。どうやらTikTokでのバズを契機にインフルエンスされたようで、TikTokでは中南米を中心に12万本以上もの動画が投稿されているとのこと。いよいよよくわからない展開になってきたが、彼らへの注目が国内のみならず、ワールドワイドなものになってきつつあることはたしかだろう。
閑話休題、肝心の本題に入る。そんなどんぐりずによる全5曲収録の最新作『4EP2』が8月18日にリリースされた。前作『4EP1』では“ダンス”をテーマに、オルタナティブでエレクトロニックなサウンドを標榜したのに対して、今回のEPでは全体の建て付けを“インディーポップ”に設定。とはいえ、やはりテーマへの向き合い方も一筋縄ではいかないのが彼らだ。字面から連想させる“インディーポップ”的な明快さというよりも、“インディーポップ”のサウンド的なムードを抽出し、オリジナリティへと昇華、やはり今回も他に類を見ない音楽を作り上げている。EP全体のムード作りは、ここ最近の酷暑の影響……ではないだろうが、クーラーの効いた部屋のなかで夢想するフィクショナルな夏を想起させたりもする。
EPの冒頭を飾る「Just do like that」はUKブロークンビーツからの影響も感じ取れるジャジーな楽曲で、前作のダンサブルな要素は残しつつ、よりクールな印象。リリックではナイトクラブとアルコールによるハングアウトの香りを感じさせ、なんとも小気味よい。
続く「8 hole」はリズムボックスのシンプルな導入から、サスティンとディレイの効いたシンセの音色が印象的な佳曲で、ヴァースやフックに関しても、ボーカルのリバーブ演出がなんとも粋である。空間演出も含め、ムードという観点では、どんぐりずのこれまでの楽曲のなかでも随一の魅力を持った1曲ではないだろうか。