青山テルマ、”てっぺんからの転落”で見出した強み ありのままの自分でいることの大切さを語る
青山テルマから発せられる“ポジティブなマインド”の原動力とは何なのかーー。
今や、何事もオープンに話すキャラクターがお茶の間から愛され、自身のファッションや考え方など、SNSでの発信も支持を集めるほか、トレーナーを務めたオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』では、練習生との真摯な向き合い方が視聴者の感動を呼び、今再びその熱い人間性に注目が集まる青山テルマ。
彼女が「そばにいるね feat. SoulJa」でのブレイク当時に見ていた景色、そこからの転落と“再ブレイク”という経験を通して、現在はどのようなマインドで日々を過ごしているか、当時の心境も織り交ぜながら語ってくれた。目まぐるしく変化していく時代の中で、青山テルマが自分らしくいるために大切にしていること、プロとして心掛けていることに迫る。(編集部)
”常にポジティブ”でいるわけではなく、落ち込んだ理由にきちんと向き合う
――いつもパワフルでポジティブなバイブスを届けてくれている青山テルマさんですが、昨年はかなり気持ちが落ち込んでいた時期もあったそうですね。
青山テルマ:そうなんです。コロナ禍でライブができなくなって、ファンのみんなとも会えなくなってしまったので、音楽に対してのモチベーションがまったく出なくなってしまったんです。本当は昨年に新しいアルバムを出したかったんですけど、自分の気持ちがモヤモヤしてる中で作った曲たちを世に出すのはあまりよくないなと思って。やっぱり曲を作ることは、メロディや歌詞、声にその時の気持ちを反映した魂を入れる作業になるので。アーティストの友達と話してみると、曲が書ける人もいるんだけど、私は全然ダメでしたね。ドゥーンって落ち込んでました。
――ライブができなくなったこと以外にも不調の原因として思い当たることはありますか?
青山テルマ:もうひとつ大きかったのは、海外に行けなくなってしまったことで。普段の私は3カ月に1回くらいニューヨークかロサンゼルスに行って、そこで得たインスピレーションやバイブスで曲を作るタイプだったので、1年以上海外に行けないのは本当に辛いことなんですよ。ほんとにお手上げって感じ。ただ、年末にしっかり休んだことで今年に入ってからは気持ちを持ち直せたので、今、アルバムを絶賛制作中です。
――テレビ等では元気な姿を拝見していたので、テルマさんがそこまで落ち込んでいたのはちょっと意外でした。もちろん人間として気持ちに波があるのは至極当然なことだとは思いますが。
青山テルマ:そうですね。基本的に、みんなと同じですよ。コロナ禍になってからみんな気持ちが落ち込みがちじゃないですか。コロナ禍の初期の頃はちょっと辛抱すれば大丈夫だろうって思ってたけど、まさか2年近くも続くことになるなんてね。しかも、まだ今も状況は良くなってはいないし。
――世の中がそういう状況だからこそ、表に出るときはポジティブなマインドを保つようにしていたところもあったんですか?
青山テルマ:いえ、私は常にポジティブでいようとはそもそも思ってないんですよ。その時その時の状況に身を任せて、一番いい対応ができるように、心掛けている感じ。だからたとえ気持ちが落ち込んだとしても、そこでどうすればいいかを考えるだけ。人間が落ち込むには何かしらの理由があると思うので。そこにしっかり向き合って、一つひとつ解決していけばいいかなって。ずっと落ち込んでいても、解決はしないから時間がもったいない気がします。こういう思考になったのは年齢的な部分もありますね。今年で34歳になるんですけど、物事をすごくフラットに見られるようになってきたと思う。大人になったなって(笑)。
――なるほど。単に元気で明るい振る舞いをしてポジティブさをアピールするのではなく、ネガティブなことに対しても真っ向からぶつかっていく姿勢こそが結果的にポジティブなバイブスを世に広めることになっているんでしょうね。
青山テルマ:そうであったらいいなとは思っています。私が出演しているテレビ番組でも、SNSでも、楽曲でも、本でも、何かしらがみんなにとってのヒントになればいいなとは常に考えているので。「こうしたほうがいいよ」「こうするべきだよ」って言うのではなく、私の言動を通して、「あ、そういう考え方もあるんだ」とか「だったら私はこうしてみようかな」と思うきっかけを与えられたらいいなって思います。実際に誰かの考え方を変えようだなんて思ってはいないです。私は根本的に“いい人”になっていきたいと思って日々を過ごしているんですよ。もちろん自分も人間なので、日々を完璧に過ごせているわけではないけど、できる限り心掛けているというか。それは他人に対して思いやりを持つとか、見返りを求めないとか、誰も傷つけないとか、すごくシンプルなことではあるんですけど、それを実行していくことで自分はもちろん、周りもハッピーになっていったらいいなと思っていますね。
自分が言えなかったことに対して、他人を責めるのってダサい
――そういう思考になったきっかけはあったんですか?
青山テルマ:売れなくなったからでしょうね。「そばにいるねfeat.SoulJa」(2008年1月リリースの2ndシングル曲)でてっぺんを見て、そこから一気に転げ落ちた人間なので。ほんとにどん底でしたよ。毎週末はいろんな地方のモールに行って、きっとただ休憩しているだけであろう人の前で歌う。そんな時期が数年続きましたから。もちろん求められていることに対しては全力で向き合ってはいましたけど、ことあるごとに「あれ、私がやりたかったことってこういうことだっけ?」という感覚になってましたね。5年くらいは理想と現実のギャップに悩みました。
――華やかな場所を知っている分、余計に辛いですよね。
青山テルマ:「あのときは良かった」っていう気持ちにどうしたってなってしまって。たくさんいたスタッフさんがどんどん減っていったり。レコード会社に行けばみんな拍手しながら「おめでとう!」って言ってくれていたのに……って。そうなると私もわかるわけです、肌感で。
――シビアな世界ではありますよね。
青山テルマ:そうですね。そういう状況になると人間はつい他人のせいにしてしまう時があるんです。「この曲はあのスタッフさんが良いって言ったから」とか「ほんとはこの服着たくなかったな」とか。でも、結局すべてのことは自分の問題だなって思うようになったんです。他人のせいにするのはカッコ悪いなって。本当にイヤなことがあった時ははっきりと言えば良かったわけで。自分が言えなかったことに対して、他人を責めるのってダサいと思うんですよね。そこに気付いてからはマインドを切り替えて、すべてを自分の責任として受け止められるようになったんです。それまでの自分のダメだったことを一つひとつ改善するようにもしました。「あのとき悪い態度をとってしまったのはどうしてだろう」「挨拶ができなかったのはどうしてだろう」って、ほんとに小さいことから改善して、“いい人”になろうとしていましたね。
――ある意味、「そばにいるね」が生んだ呪縛から解き放たれようとしたのかもしれないですね。
青山テルマ:もちろんまた1位は取りたいですよ(笑)。音楽でまた売れたら本当に最高だと思う。でも、ものすごいスケジュールに忙殺されていたし、露骨な環境の変化はもう味わいたくはないんですよね。