マカロニえんぴつ、全国のファンに会いに行った『マカロックツアーvol.11』完遂 横浜アリーナ公演で叫んだ音楽の“価値”

 マカロニえんぴつの全国ツアー『マカロックツアーvol.11 ~いま会いに行くをする篇~』が6月16日大阪・オリックス劇場にて幕を閉じた。今回のツアーはコロナ禍の影響によりツアー日程に一部変更が生じた。本稿では、本来ならばツアーファイナルに位置していた5月23日に行われた横浜アリーナ公演(19時スタート)の模様を振り返りたい。

 2020年4月に2ndフルアルバム『hope』をリリースし、11月に1st EP『愛を知らずに魔法は使えない』でメジャーシーンに進出。今年4月には「はしりがき」(『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』主題歌)を含むニューシングルをリリースし、地上波の音楽番組にも数多く出演。コロナ禍のなかで一気に躍進したマカロニえんぴつは、バンド史上最大規模となったツアーのハイライトとも言えるこの日のライブ(14時30分~/19時~の2回公演)で、ロックの凄みとポップの魔法をダイレクトに響かせる圧巻のステージを見せた。

 開演前のSEはThe Beatlesの「Hey Bulldog」。田辺由明(Gt)、長谷川大喜(Key)、高野賢也(Ba)、サポートドラムの高浦''suzzy''充孝(Dr)がゆっくりとステージに登場し、客席から大きな拍手が巻き起こる。最後にはっとり(Vo/Gt)が姿を見せ、ギターをかき鳴らしながら〈僕が僕を愛し抜くこと/なあ まだ信じてもいいか?〉というフレーズを響かせた。オープニングナンバーは、昨年秋に配信リリースされた「生きるをする」。次の瞬間、爆音のバンドサウンドが疾走しはじめ、オーディエンスが「このときを待ってた!」とばかりに体を揺らし、手を挙げる。

 ワウギターによるリフ、ソウルフルなグルーヴ、しなやかでポップなメロディがぶつかり合う「遠心」、そして「ついにツアーファイナル、こんなにたくさん集まってくれてどうもありがとう。すごい景色だ!」(はっとり)という言葉から、「眺めがいいね」へ。ブルースロックをポップに昇華したサウンド、田辺の豪快なギターソロが共鳴し、会場のテンションはさらにアップ。「今日、2ステージ目なんですけど、2回戦でもビンビンでいくぜ!」と叫ぶはっとりも絶好調。初めてのアリーナ公演とあって、メンバーの興奮度もかなり高そうだ。

 青春時代特有のもどかしい思いを儚げに歌うバラード……と思いきや、楽曲の途中でテンポアップし、緻密なアレンジメントとともに激情を放ちまくる「溶けない」、中期ビートルズ的なサイケデリアと90年代UKロックが混ざり合うサウンド、あまりにも切ない恋愛感情を映す歌詞が一つになった「恋人ごっこ」と、このバンドの独創性が露わになった楽曲が続く。ライブ前半のピークは「STAY with ME」。キャッチーにして奇妙なシンセ、ノリやすい4つ打ちと個性的なフレーズが絡み合うアンサンブル、オーディエンスへのメッセージ(のように聴こえる)が込められた歌詞が響き合い、観客が思い思いの動きで楽しむシーンには、マカロニえんぴつのライブの魅力が凝縮されていた。

 ここではっとりが「今日、マカロニえんぴつのライブに初めて来た人?」と問いかけると、大勢が挙手。初参加のオーディエンスが多いのはつまり、最近、彼らの音楽を好きになった人が増えたことの証左だろう。観客を座らせたはっとりは、時間をかけてメンバーを紹介。これも「初見の人にも身近に感じてほしい」という気持ちの表れなのだと思う。

 「春の嵐」「mother」「メレンゲ」と歌をじっくり聴かせる楽曲を続けた後は、5月28日に配信がスタートした新曲「八月の陽炎」を初披露。ギミックを抑えた真っ直ぐなアレンジ、エモーショナルな歌声、真夏の風景と若き日の葛藤が混ざり合うリリックを軸にしたナンバーだ。「ジリジリとした蜃気楼の向こうに、10代の頃に残していた後悔が燃えているようなイメージ」(はっとり)というこの曲には、ロックバンドとしての彼らの魅力が強く押し出されていた。

 観客のハンドクラップによって心地よい一体感が生まれた「ルート 16」からライブは後半へ。エキゾチックなシンセと鋭利なサウンドがぶつかり合い、この日一番の高揚感を演出した「ノンシュガー」を披露した後、モータウン的なグルーヴとともに、はっとりが観客に語り掛ける。

「みんな、すごく幸せそうな顔をしているし、自分たちもたまらなく幸せです。でも、明日になればつまらない日常が戻ってくる人もいるでしょう。なんであんなに優しさをもらったのに、ポケットから零れ落ちてしまうんだろうとか、上手くいかないことばっかりで。それは俺たちも同じ。でも今日だけは、言わせてください。あなたたちが落としてきた幸せや後悔、全部引き受けにきました!」

 そんな言葉とともに演奏されたのは、代表曲「ブルーベリー・ナイツ」。悲しい失恋、失ってしまった愛を洗練されたポップチューンに昇華したこの曲は、マカロニえんぴつの真骨頂と言っていい。

 エレクトロのテイストを取り入れた「カーペット夜想曲」、そして、「エンターテインメントなんかじゃない。生きる糧、生きる希望、生きる目的。音楽にはそれだけの価値があると思います」「ロックバンドはあなたがいないと、ライブがないと死んでしまう。それを痛感したツアーでした。お願いです、また出会ってください」(はっとり)という強いコメントに導かれた「ミスター・ブルースカイ」でライブ本編は終了した。

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