『World』インタビュー
レイラ、激動の2年間で生まれたバンド活動への意志 成長と進歩を刻んだ『World』を語る
横浜を本拠地とする4人組、レイラが、CDリリースとしては約2年ぶりとなる2ndミニアルバム『World』を完成させた。骨太のオルタナティブロックをベースとした力強いサウンドは相変わらず、エモーショナルなメロディと切実な感情が滲む歌詞も相変わらず。だが、今までは使われていなかったピアノやシンセベースの音が取り入れられていたり、新たなサウンドデザインが導入されていたり、挑戦心もふんだんに注ぎ込まれた1枚となっている。CDリリースのなかった2年のあいだにバンドに訪れた変化、そして2020年を通してバンド活動に大きな制約を課してきたコロナ禍が与えた影響。まさに激動となったこの2年間を象徴するような、成長と進歩を刻んだミニアルバムである。本作にこめた思いとこれからのバンド活動に向けた意志を、メンバー4人に語ってもらった。(小川智宏)
作り方を変えて生まれた「Happy end」「Flyaway!」
ーーCDとしては2年ぶりのリリースになりますね。みなさんそれぞれ、手応えのほどはいかがですか?
牧野ウスシオ(Ba):僕は曲作ってないんですけど、聴かせてもらったときにだいぶ変わったなと思って。今までよりもポップだなと感じます。でも、ポップのなかにオルタナ感があって。
有明(Vo/Gt):コメントがファンじゃん(笑)。
すわ(Dr):確かに、今までやってこなかったことを結構取り入れていて。具体例で言うと、今までまったく使ってこなかったピアノを、ほんのちょっと入れたりとか。そういう新しい挑戦もしつつ、でも今まで培ってきた自分たちらしさも残っている。そのバランスがすごくいいんじゃないかなって思ってます。
有明:うん、いろんなことができたと思います。このアルバムの大きなきっかけになった「Flyaway!」という曲は違うタイプの曲を作ろうと思って作ったんです。それがきっかけになって、他の曲の方向性も決まっていったんだと思います。それこそキーボードが入っている「Happy end」も、初期のレイラを聴いている人からしたら「ん?」ってなると思うんです。渋谷系みたいな雰囲気もあって、全然違うから。「熱帯夜」もループ系の曲で、そういうのも意外となかったし。いろんな挑戦ができたなって。
三浦太樹(Gt):久しぶりのリリースだし、僕ら史上一番収録曲も多いし。コロナ禍でリリースが難しかったところもあって、曲はいっぱい溜まってたけど出せない状態が続いてたんです。そのなかから厳選しました。ずっと出したかった8曲だし、出せて嬉しいですね。
ーーその8曲はどういう基準で選んでいったんですか?
三浦:めっちゃ話し合って「これだよね」ってなったかっていうとそうでもなくて。デモのやりとりをしているなかで「やっぱりこれ入れたいよね」ってなった感じ。だからこそゴチャゴチャ感というか、結構振れ幅がある印象になったかなって。
ーーみなさんのおっしゃるとおり、新しい音が入っていたり、ギターアレンジやリズムパターンも、これまでのレイラにはなかった要素がたくさん入った作品になっていて。それは曲ができた段階からそういうイメージがあったんですか? それともアレンジを詰めていく過程でそういうものが入ってきた感じ?
有明:「ふたりのせかい」と「つまらない」は私が弾き語りを送って三浦がアレンジした曲だから、あまり今までのパターンとは変わらない感じですけど、「Happy end」と「Flyaway!」は作り方をちょっと変えたりしましたね。
ーー「Flyaway!」はいつごろ作った曲なんですか?
有明:去年の7月ぐらいですね。私、今まであまりアレンジはしてこなかったので、ちょっと簡単なのからやってみようって思ってやったら、メンバー内で意外とウケて(笑)。そんなに難しいことはやってないんですけど、これでいいんだって思えました。「Happy end」はすごく前からあったんですけど、せっかくなら良くしたい、もうちょっとやりたい音楽に近づけようみたいな感じで詰めました。
ーーじゃあ、そのやりたい音楽というか、こういうことをやりたいっていうのはもともと有明さんのなかにあったんですね。
有明:っていうよりも、作った曲を突き詰めようみたいな感じでしたね。こういうことやりたくてやりたくて仕方ないから、それに合わせてこの曲を作ろうっていうのはあんまりないんですよね。
ーー曲自体はずっと作ってきたわけじゃないですか。その詰め方が変わってきたのはどうしてなんでしょう?
有明:大人になったのかな(笑)。いろんなものを受け入れるようになったのかなと思います。最初はキーボードを入れるなんて発想はなかったけど、いろいろなバンドを見たり聴いたりして、視野が広がったというか。
ーー牧野さんとすわさんは、今回のアレンジについてはどうですか?
牧野:今回「熱帯夜」と「Flyaway!」は、シンセベースを初めて入れたんですよ。レコーディング当日に。僕はそれぐらいしかしてないんですけど(笑)。
有明:「いらない」とかフレーズも考えたじゃん。楽しかったでしょ、絶対。
牧野:楽しかった。「いらない」は結構前に録った曲で……僕、音色とかにはあんまりこだわってこなかったんですけど、初めて「こうしたい」というアイデアが出ましたね。
有明:ね、フレーズも考えたしね。
牧野:強調すんな(笑)。
有明:言っとけ言っとけ!
牧野ウスシオ:……めっちゃ頑張った!
ーーシンベを入れるっていうのは自分的には大変化ではないんですか?
牧野:大変化っていうよりは、ポップスは重低音が強いイメージがあって。こういう曲になるなら、めちゃくちゃ気持ちよくしたいなって。で当日にふわっと、「ツール上でもっと低音をぶち上げたりできないかな」って言ったら「じゃあ弾きなよ」って。
三浦:だから、ベースのアレンジ的な部分っていうよりは、もっと引いた視点だったんですよね。
ーーそれもその曲に対して「こういう音がハマるんじゃないか」というのがあったっていうことですよね。曲自体がどこか変わってきたっていうことなんですかね。
牧野:そうですね。いつもより、塩コショウを多く入れた、みたいな……。
有明:今、決め台詞風に言ってなかったか?
牧野:そういう感じがします(笑)。
ーーなるほど(笑)。すわさんはどうですか?
すわ:今までもそうだったんですけどドラムに関してはわりと任せてくれてるので、僕個人としては今までとあんまりやり方は変わってなくて。もらった曲に対してどうアプローチしたらいちばんいいかをただ考えてやるっていう感じでした。
ーー三浦さんは今回の曲作りについてはどういうことを考えながらやっていましたか?
三浦:アレンジしていると、ついギターのかっこいいフレーズみたいなものを入れたくなるじゃないですか。でも今回は全体的にそれを抑えて。「Flyaway!」に関してはほぼリードギターを弾いてないんです。そういう意味で大人に感じる部分はあるかもしれないですね。
ーーそうですよね。もっと「ファズかましてやれ!」って感じでしたもんね。
三浦:そうですね。ギターを聴かせたいっていう感情よりも、たとえば間奏をやるとしても、コーラスで何か見せるとか、ギターソロじゃない部分でやるっていうのをここ2年くらい考えてて、一番それが出た感じがします。
ーーさっきもちらっと話に出ましたけど、特に2020年はコロナ禍で、今までのようなバンド活動がままならなかったわけじゃないですか。その影響というのも今作には出ていると思います?
有明:あるかもしれないです。今までは恋愛の曲がめっちゃ多かった。なんなら恋愛じゃない曲ってなかったと思うんですけど、今回は生活とかの方にシフトしてるし、自分自身と向き合う曲も多くて。それはコロナの影響で人と会わないからこそなのかなとも思うし、単純に歳取ったのかなとも思うし。ちょっとわかんないです(笑)。
ーーさっきから大人になったとか歳取ったとか言ってるけど、そんな歳じゃなくないですか?
有明:いや、全然若いんですけどね(笑)。10代の頃と比べたら。