「カップラーメン・プログラム」インタビュー
フィロソフィーのダンスは“コンプレックス”とどう向き合う? 児玉雨子、CHAI ユウキら参加作で描く“最強のシスターフッド感”
人に言えないコンプレックスを抱えて悩んでる人にはフィロソフィーのダンスのメジャー2ndシングル『カップラーメン・プログラム』をお勧めしたい。昨年9月にリリースしたメジャーデビューシングル曲「ドント・ストップ・ザ・ダンス」ではディスコファンクにのせて、〈愛しきコンプレックス〉と歌っていた彼女たちだが、深夜に食べるカップラーメンをモチーフにした先鋭的なエレクトロR&B「カップラーメン・プログラム」では〈絡まってしまったコンプレックス〉と一人一人が個として向き合い、カップリングの「フォーカス」では、“コンプレックスをアートに”を掲げるバンド、CHAIのユウキ(Ba)とのコラボも実現。「自己肯定感の強い女の集まり」と誇る彼女たちにコンプレックスの向き合い方についてたっぷりと話してもらった。(永堀アツオ)
自分へのご褒美=深夜のカップ麺から生まれた楽曲
ーー2ndシングル曲「カップラーメン・プログラム」では自分のコンプレックスとの距離感が前作「ドント・ストップ・ザ・ダンス」とは違ってます。歌詞はどんな発想から生まれたものなんでしょうか。
佐藤まりあ(以下、佐藤):次の曲をどうするのかをメンバー全員で集まって話し合ったんですね。いろいろな意見が出た中で、私は「自分に厳しいことだけが偉くて立派みたいな感覚がしっくりこない」という話をして。自分にお洋服を買ってあげたり、好きなものを食べに行ったりする日があってもいいんじゃないかって。私は頑張った自分へのご褒美に好きなカップラーメンを深夜に食べるっていう日常があるので、そんなことをテーマに歌詞を書いていただけたらいいなっていう話をして。
奥津マリリ(以下、奥津):一同、「わかるわかる」っていう感じでしたね。1stシングルでは、自己肯定感高めの私らしさを前面に出していたので、次はもうちょっとファンのみんなに寄り添ってあげられる曲にしたいねっていう話をしていて。
日向ハル(以下、日向):私たちもステージに立っていない時は、家でダラダラしていることもあるし、深夜にカップラーメンを食べちゃうこともある。オンとオフがあって、ダメな部分もある同じ人間なんだよっていう角度から出したいよねって話があった中で、すごくキャッチーでインパクトのあるカップラーメンをモチーフにして。今、私たちが伝えたいことを歌詞にしていただいたなと思います。
ーーちなみに、佐藤さん以外のメンバーにも頑張った自分へのご褒美を聞いていいですか。
十束おとは(以下、十束):私は頑張った日も、どんなに疲れている日もゲームをする時間が一番好きです。ゲームをしている時は、頭の中が一回リセットされるし、嫌なことも忘れられる、すごく大切な時間ですね。今、みんな気を張るような日々が続いていて、その中で頑張ってる方々にも今回の曲が届いて欲しいなと思っています。
日向:私のご褒美は、ライブ後の飲酒です。
奥津:パチパチパチパチ(笑)。
日向:次の日が朝早い時や歌う時はあんまり飲まないようにしているので、ライブが終わって、ビールやハイボールをたらふく飲むぞ! っていうのが楽しみです。
奥津:私もお酒をご褒美にすることも多いですけど、サウナは疲れた体を癒してくれますし、気持ちもリセットしてくれるので、私の中のリラックススポットとして、ご褒美に行きますね。
ーーありがとうございます。話を戻すと、頑張った自分へのご褒美=深夜のカップラーメンというテーマで制作されたんですね。
日向:そうですね。今回、作詞家の児玉雨子さんと直接会って、打ち合わせもして。カップラーメンというテーマでここまで話を広げられたのに感動したし、私たちが、発信した点を全て線として戻してもらえたなって。細かいニュアンスとかワードにもフィロソフィーのダンスらしさを出して頂けて、今回も自分たちの哲学を詰め込むことができたなと思います。
十束:カップラーメンというテーマを投げて、返ってきたのが、「カップラーメン・プログラム」だったんです。プログラミングで使われる言葉で、ロジックがぐちゃぐちゃに絡まり、第三者が読み解くことができない状態のソースコードを指す「スパゲッティプログラム」という言葉から連想して、カップラーメン・プログラムというタイトルに辿り着いた児玉さんのアイデアにも感動しましたし、情景がちゃんと頭の中に浮かぶ歌詞もいいなって思って。〈なんだか眠れない〉という始まりから、みなさんハッとすると思うし、すごく共感できる歌詞を考えて作ってくださったなって思います。
奥津:優しい言葉に溢れていますよね。「ドント・ストップ・ザ・ダンス」は、メジャーデビューというタイミングで自分たちの決意を見せつけるようなイメージでしたが、今回は包容力がある。私たちもずっと自己肯定感が高かったかといえばそうではなくて。それぞれの人生があって、いろんな苦難があって。自己肯定感が低いところから、ここまで育つのに、結構な時間もかかっているんです。だから、私は昔の自分が聴いたらうれしい、あの時、聴きたかった優しい曲だなって思います。
ーーこの曲ではコンプレックスが絡まって、身動きが取れなくなってますよね。
日向:私も学生時代はコンプレックスがたくさんありました。でも、それを個性として受け入れて、武器にすることを知った。だから、今この4人でステージに立っているんですけど、コンプレックスってそう簡単に受け入れられて愛せるものじゃないと思うんです。一人ひとり、体型もお顔も声も全て違っている。他人と比べて羨んでしまうところがあると思うんですけど、そこを私にしかない個性だと思えるようになったら、きっとみんな、少し楽になれるんじゃないかな。この曲を聴いて、いつもより少しだけ自分のことを愛してあげてほしいなと思います。
十束:フィロソフィーのダンスって強さの象徴というか。「今、一番強いアイドルグループは誰だ?」って言ったら、個人的にはフィロソフィーのダンスかなって思っていて。(笑)そんなフィロソフィーのダンスが、いつもより優しく語りかけてくれるみたいな感じの歌い方をしているのがすごく印象的だし、新しい扉が開いた感じで良かったなって思いますね。