花澤香菜、竹達彩奈、伊藤美来、佐倉綾音、水瀬いのり……『五等分の花嫁∬』で声優達が表現する、五つ子の個性と成長

中野家の五つ子『五等分のカタチ/はつこい』

 1月から放送中のTVアニメ『五等分の花嫁∬』(TBSほか、以下『∬』)。本作は1人の男子高校生が新たに転校してきた五つ子の女子高生の家庭教師を務めるというラブコメディである。そのヒロインにあたる中野家の五つ子を演じるのが、花澤香菜・竹達彩奈・伊藤美来・佐倉綾音・水瀬いのりの5人だ。本稿では、この5人の演技面に注目。五つ子それぞれの個性についてはもちろん、1期から今までの5人の変化や成長をどう表現しているのか、2期である『∬』の終盤オンエアを前に改めて振り返っていきたい。

本編で、主題歌で……一作丸ごとを用いての人物描写

 まずは、長女・中野一花を演じる花澤香菜。長女らしい余裕と小悪魔さを持ち合わせた雰囲気に軸足を置いた芝居である点は、登場当初から変わらないもの。だが一方で、物語の進行とともに一花の中には本作の主人公・上杉風太郎への恋心が膨らみ始める。それを場面ごとに出力し分けることが、一花を演じるうえでのポイントのひとつだと考える。

 恋心は、自分ではコントロールしきれないもの。前述した余裕感とは真逆のものである。しかも一花は、他の姉妹の風太郎への好意を知ってからは、自身の想いに蓋をするのに必死になるのだ。だが、それでも余裕を装わなければならない場面も多々存在。その視聴者側だけが認識できるあざとすぎないぎこちなさが、普段の余裕さとのコントラストとなっていじらしさを感じさせる。モノローグなどでの心情吐露も含めて、花澤は作品全体を通して“中野一花”として生きているのだ。

 また、それは五つ子が歌う『∬』のOP・EDテーマでも同様。OPテーマ「五等分のカタチ」ではポップなサウンドをひょいっと乗りこなすように歌えば、EDテーマ「はつこい」ではバラードに乗せて胸に秘めた温かな感情をにじませたりと、それぞれの楽曲に応じてみせる的確な表情も必見だ。

「五等分のカタチ」Music Video Full size (歌:中野家の五つ子)

 一方、ストーリー展開も相まって『∬』でぐいっとキャラクター性の幅が広がったのが、竹達彩奈演じる次女・中野二乃。元来の勝ち気な性格に加え、特に序盤においては風太郎との折り合いが非常に悪かったということもあり、一言一言のアタックがとにかく強かった。そんな彼女は、1期終盤から一気に変化・成長し、新たな表情を次々みせる。林間学校での“キンタロー”への一目惚れからの乙女モードや突然の風太郎への告白などは、序盤では予想だにしなかったものだろう。

 こういった二乃の行動や、もしかしたら理論だけでは説明のつかない部分もあるかもしれない。だが、それらを演じるうえで竹達は二乃の心情変化を咀嚼し、嫌な突飛さや不自然さを感じさせることなく“中野二乃”というヒロインを演じてみせた。ただツンケンしているだけの嫌な奴に終わっていないという事実が、その成功を何より物語っている。

 その他にも、五女・五月との喧嘩で、自らの落ち度を自覚しながらも強い口調で押し切ろうとする姿から二乃の“つよがり”と“弱さ”といった重要なファクターを感じさせてくれた点も、改めて評価したいポイントだ。

変化した姿も新しい表情も、これまでの連続性のうえに

 口数少なくクールな三女・中野三玖は、五つ子の中で最初に風太郎に心を開き、好意を抱いた存在。なので姉妹の中で心情変化が最も現出しやすい存在でもある。同時に、それが表現されていくなかで、演じる伊藤美来が“中野三玖”へ当初以上にハマっていく深化の過程も感じることができた。

 ただ、その要素は1期と『∬』では若干異なるもの。1期で深堀りされたのは、主に三玖の内面の表現。引っ込み思案であり、他の姉妹も案じるためなかなか行動に移せないなか、想いを抱えたいじらしさをセリフを通じて形にし、視聴者を惹きつけた。その一方で『∬』では、その想いが源泉となる言葉を他者に向けて発する場面で印象深いシーンがより増加。それを最も感じられたのが、二乃が風太郎手製の問題集を払い除けたシーン。抑えめのトーンの中に最大限の圧を込め、噴火寸前のマグマのような熱のうごめきをも感じさせた。また『∬』6話で二乃に自作チョコの出来を貶された際の、情けなさと恥ずかしさと悲しさがない混ぜになった「うるさい……」という一言も、渾身のか細さで表現。涙を瞳にためて必死にこらえる三玖の姿にドンピシャであった。今後、さらなる心情変化を演技の面からどう表現してくれるのか、非常に楽しみでならない。

 四女・中野四葉については、まず主題歌の時点で彼女を演じる佐倉綾音が、キャラクター性を見事に表現しているという点に触れておきたい。明るく前向きな姿を想起させるように歌っていく四葉。しかも、ただ元気いっぱいなわけだけではなく、音階が一気に上下する部分で勢い余って音程的にはみ出しそうになるという点がポイント。それも完全に踏み外すわけでなく、歌として成立させているのだ。そのうえで“らしさ”が込められた歌声をもって、“中野四葉”という人物像を十二分に理解できるものとなっている。

 また、四葉の弱い部分が物語のなかで徐々に描写されるようになった際に、従来の明るさとの断絶なく表現している点も注目。特にそれが顕著にみられたのは、テスト前に陸上部に巻き込まれた際のエピソード。周囲を心配させないよう、無理を感じさせずに無理しようとした微妙な違和感のある空元気や、一花に思わずこぼす本音などを通じて、初めて“元気”のフィルターを取り払った姿を感じられた。だがもちろんそれは、全くの別物ではない。あくまでも四葉としてそれを発することで、よりリアルで魅力的な少女として感じさせてくれたのだ。

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