『TOBARI』インタビュー

SOMETIME’S、2人組音楽ユニットでの活動に至るまで 人気プレイリストにも選出、追求するのは“王道のポップス”

 2017年に結成された2人組ポップユニット、SOMETIME'Sの1st EP『TOBARI』がリリースされる。これまでにリリースされた配信限定シングル「Honeys」「Take a chance on yourself」「I Still」の3曲を含む6曲入りの本作は、SOTAによるソウルフルなボーカルと、TAKKIのテクニカルなギターサウンドを基軸としながら、ポップスやロック、ソウルなど様々なエッセンスが散りばめられたバラエティ豊かな作品である。

 「あくまでも王道のポップスを追求したい」とSOTAが公言するように、洋楽からの影響を受けつつもJ-POPのフォーマットへと落とし込んだ親しみやすい楽曲が並んでいるのが印象的だ。Spotify「Early Noise Japan」やApple Music「ブレイキング:J-Pop」など人気プレイリストにも選出され、確実に注目を浴びているものの、まだまだべールに包まれている部分の多い彼ら。今回リアルサウンドでは、SOTAとTAKKIの2人に音楽的ルーツやSOMETIME'S結成までの経緯、楽曲制作のプロセスなどたっぷり話してもらった。(黒田隆憲)

別々の道を歩んできた二人が再会を果たすまで

ーーまずは、お二人が音楽に目覚めたきっかけを教えてもらえますか?

TAKKI:中学2年か3年の頃、文化祭でバンドをやったのが直接のきっかけです。それまでサッカーをやっていたのですが、Bチームに落とされた時にふてくされてロックに向かったというか(笑)。体力がないので長距離を走るのも苦手だったし、体力を使わずに楽しめることはないかなと思ってギターを手に入れました。それと、「字」を書くのが小さい頃からすごく好きだったんですよ。クラスメイトたちが教科書に絵を描いて遊んでいた頃、僕一人だけ「あ」をめっちゃ書いているという。

SOTA:変な子だな(笑)。

TAKKI:そう、すごく変わってた(笑)。とにかく「きれいな字」が書けるようになりたくて、ずっと「あけましておめでとうございます」ばかり書き続けるとか。それも僕の中では、絵を描いているような感覚だったのだと思います。

 あと、父の会社の方に、僕の後ろにはきれいな字が見える、と言われたことがあって。当時僕はバンドを組んでいたんですけど、その言葉に影響されて歌詞を書くようになったんですよ(笑)。そしたら評判が良くて「俺が歌詞を書けば、このバンドは売れるんじゃないか?」と思ったこともありましたね。

SOTA:僕は子供の頃から歌うのが好きで、小学校の休み時間などにしょっちゅう歌ってたんです。友達からも「お前、歌上手いな」と言われて「そうか、俺は歌が上手いのか」と思ったのが、音楽に目覚めたきっかけでした。聴いている音楽に関しては、小さい頃は親父が家や車の中で流していたものが全てでしたね。松任谷由美さんやMr.Children、洋楽だとスティーヴィー・ワンダーやビートルズ。そういう王道の音楽をたくさん聴いて育ちました。

ーー高校では同級生ながら面識はなく、SOTAさんはラグビー部に所属し、TAKKIさんは軽音楽部でバンドを組んでいたそうですね。

TAKKI:中学の文化祭と卒業式の2回だけバンドで演奏したのが楽しくて、高校ではその延長で軽音楽部に入って。その時はさほど熱心にやっていたわけじゃないんですけど、卒業する頃に「まだバンドやりたいな」と思って本格的にバンド活動を始めました。それとは別に、中3の頃からギター教室に通っていて、そこの先生に大学生くらいまでずっと師事していたんです。今でも一緒に仕事をするくらいお世話になっていて、プレイスタイルなどはかなり影響を受けていますね。

SOTA:僕は最初、ラグビーではなくサッカーをやっていたんですけど、朝練が嫌になって辞めてしまって(笑)。本当はそのタイミングで音楽をやりたかったのですが、親父から猛反対されたんですよね。「今は心身を鍛える時期だろ」って。それでラグビー部に入ったんです。なので、本格的にバンド活動を始めたのは大学に入ってからですね。ROTTENGRAFFTYやFLOWのような、ツインボーカルでゴリゴリのミクスチャー系をやっていました。

TAKKI:僕はその頃、ピアノ&男性ボーカル、ギター、ドラムというベースレス編成のバンドをやっていました。元々はボーカルの子のサポートで始まり、当時は青山の月見ル君想フや代官山の晴れたら空に豆まいてなどでライブをしていました。実はそのボーカルとSOTAが知り合いで、SOTAが横浜のライブハウスで企画していたイベントに呼んでもらったんです。そこで同じ高校出身ということに気づいたんですよ。その頃はもう、SOTAのバンドは横浜で人気があったんですけど、そこからちょくちょく対バンをするようになっていきましたね。

ーーそんな2人がSOMETIME'Sを結成することになった経緯は?

SOTA:当時やっていたバンドはもともと4人組で、そこに僕が後から加入する形だったんですね。正直自分がやりたい音楽性からはちょっと違っていたのでバンドが解散した時は、それまでずっとやりたくて自分の中に溜め込んでいた音楽をやろうと思ってTAKKIにすぐ声をかけました。

TAKKI:僕は2015年にバンドを解散して、バンドを組みたいと思いつつもなかなかメンバーが見つからず、他のバンドのサポートなどしながらのらりくらりと過ごしていました。なかにはバンドに誘ってくれる人もいたのですが、それまでやっていたピアノ&ボーカルの子もめちゃくちゃ歌が上手かったこともあり、なかなか一緒にやりたいと強く思うボーカルに出会えず断り続けていたんですよね。でもSOTAから話をもらった時は、「あいつとならやってみたいな」と。

ーー対バンしていた頃からSOTAさんのボーカルを評価していたのですね。

TAKKI:前のバンドでSOTAが披露していたフロウの独特さというか、英語の歌い回しの独特さみたいなものがすごくいいなと思っていて。それを曲の中で生かしていきたいとは、組んだ時から思っていましたね。

ーーそこで「バンド」という形態にしようとは?

TAKKI:思わなかったですね。知り合いのミュージシャンもたくさんいるし、僕は1年間スタジオミュージシャンとして活動して、そこでの輪もすごく広がっていたんですよ。「別に2人でもどうとでもなるよな」と思いました。かつてのバンドは、メンバーの事情で解散しちゃったんですよ。「2人組」という形にこだわっているわけでもないんですけど。

ーー「同じくらいの熱量で一緒にやれる人たちと活動しよう」と。

TAKKI:ただ、その「熱量」も僕自身めちゃくちゃ高いわけでもないんですよ(笑)。「死ぬ気で活動して絶対に売れてやろうぜ」みたいなテンションでもなくて。当時はまだSOTAもサラリーマンだったし、「仕事を辞めてバンドで人生をかけてみようぜ」みたいな感じで誘ったわけでもないんですよね。もちろん、いい作品が作れる自信はありました。

ーーSOTAさんは、「日本のポップスのど真ん中で勝負したい」という気持ちがあったそうですね。

SOTA:さっきも話したように、僕はずっと王道のポップスをずっと聴いてきたし、それが自分の音楽性を形成してきたので、やはり目指すのはそこなのかなと。あまり音楽に詳しくない人にも響くような曲が歌いたいとずっと思っていたので、そこは逃げずに向き合いたいなと今も思っています。

ーー「良質で王道なポップスを作りたい」という気持ちがまずあって、その先に商業的な成功があると。

SOTA:そうなんだと思いますね。

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