『IDOL舞SHOW』インタビュー

『IDOL舞SHOW』プロデューサー×斎藤滋×冨田明宏×木皿陽平 座談会 コロナ下で顕著化したアニソン/アイドルコンテンツの課題

アイドルに文学的な曲をもっと歌ってほしい

ーー木皿さんは今後、X-UCで挑戦してみたいことはありますか?

木皿:テーマとかそういうのは工藤さんから全体を見ていただくものなので、そこに対してはないんですけど、この『IDOL舞SHOW』に限らず……漠然としているんですけど、アイドルってもっと文学的であるべきなんじゃないかなと、普段思うことがあって。もちろん等身大というのも大事なんですけど、昔のアイドル像ってそういう軽いものじゃなかったじゃないですか。僕はアイドルに文学的な曲を、もっと歌ってほしいなと個人的に思うんです。

 もちろん、可愛い女の子たち10人が歌うX-UCに対して、その側面を付き詰められるといいなという思いもあります。例えば、ライブで盛り上がるのも大事だし、お客さんにとって共感を得やすいものも大切なんですけど、本当はアイドルはもっと神々しくあってほしいですし、もっと神々しく刺さる曲を歌ってほしいなと思うことが多くて。

工藤:例えば20年経ってから聴いても良い思えるものとか?

木皿:そうですね。だから、音楽が消費されるのってつらいですよね。そういう意味では、例えばどこか別のアイドルグループがX-UCの曲をカバーして、「これ誰の曲? 『IDOL舞SHOW』なんだ」みたいなのが一番目指したい形で。音楽をやる以上は一期一会で最高の評価をもらえるようにはしたいし、そういう曲が作れるようになりたい。かなり漠然としているんですけど、そこをもっと大切にしたいなと最近特に考えています。

 アイドルの子たちが苦労してきたストーリーに感動するっていうのも楽しみ方のひとつだし、すごい近距離で会って可愛いと思うのもそうだし。だけど、スターがいた時代ってその神々しさが重要だったじゃないですか。その魅力が今でも通用できるようにする術があるのかなって……10人組のX-UCとは真逆の発想ですけど(笑)、別に10人の神々しい神様がいたっていいわけですから、そこが突き詰めたいポイントかもしれないと思いました。

工藤:いやいやいや。

このコロナ禍はアニソン業界が変わるチャンスでもある

ーーコロナの影響により、エンタメ業界において変化を求められる状況になってしまいました。『IDOL舞SHOW』も4月のライブ中止を経て、7〜8月には3ユニットそれぞれがオンラインイベントを実施しましたが、これも予定外のことだったと思います。まだ先が見えない状態ではありますが、ここからどういう展開を考えていますか?

工藤:実現する/しないは置いておいて、私の今の考えだと……別にライブありきじゃなくてもいいので、曲をもっと出して、キャラクターとキャストたちと私たちのストーリーがもっと進んで、クロスしていかないといけないなと思っています。それこそ、作業量が増えれば増えるほど、いいものになっていくのかなと。作業というのはレコーディング、リハーサル、ライブ、撮影、なんでもいいので、その回数が増えれば増えるほど、作品全体のストーリーも広がっていくんじゃないかなと思っています。

 でも、そのためにはまずコロナに振り回されず、慌てないことが大事かなと。作業量が増えて、それが地続きになっていって、その間に時代が動いて結論が出てきたら、改めて次のアクションを考えればいいかなと思います。

ーーライブというお話がありましたが、キャストのひたむきさや熱量がダイレクトに伝わる有観客ライブとは異なり、無観客や配信ライブだとそれがなかなか伝わりにくい難点もありますよね。

冨田:確かに難しいですよね。僕もスマホなりブラウザでライブを観ると、リアルタイムで行われているものかもしれないけども、YouTubeとかにアーカイブされている映像と明確な違いを出せていないんですよね。たぶんお客さんっていろんなライブの楽しみ方があるとは思うんですけど、ライブってよく「何連番いけますか?」とか気にするじゃないですか。ひとりでは行かないけど友達と行きたい、そのひとたちと集合して、グッズに並んで、買って着替えて、連番で観て、終わって打ち上げで酒飲んで「よかったね!」と話すところまでが、これまでのライブのサービスだったんだと思うと、今までと同じライブの形をそのまま配信するのは違うのかもしれないなと、すごく思いました。

工藤:非日常と体験を求めるわけですからね。家でテレビやモニターで観るのは日常の延長ですし。

冨田:しかも、ひとりで観るとなると、ひとり用のコンテンツのほうが刺さるんですよ。だから、ひとりで楽しむ小説を原作にした楽曲が最近盛り上がっているのは、たぶんそういうことなんだろうなって。そう考えると、ひとりで楽しむタイプのライブで盛り上がるという音楽を、我々の業界は今まで作ってこなかったんですよね。

木皿:ライブに依存し過ぎましたよね。「ライブ映え」とかよく言うじゃないですか。それを逆手に捉えると、「ライブ映え」のフォーマットが一回崩れてくれるほうが、新しいものが生み出しやすいと僕は思うんです。もっと言うと、テレビアニメの(テーマソングの)フォーマットも89秒じゃなくて、もう少し幅があっても良いんじゃないかと。。もちろん様々な都合もあるけど。89秒のオープニングで決められちゃうと、だから同じような曲になってしまいがちですよね

冨田:89秒のフォーマットとライブビジネスに寄りかかったしわ寄せが、このコロナで特に顕著になった気がしますよね。

木皿:みんなマンネリを打破しようとしているんでしょうけど、現状はうまくいっていなかった。でも、コロナによってこれまでやれていたライブやイベントができなくなってしまった。音楽業界全体的にそうですけど、アニソン業界も今変わらざるを得ない状況なわけです。

冨田:だから、このコロナ禍は前向きに捉えるとチャンスなんじゃないかな。ライブをビジネスの終着点というか、そこで全部回収するモデルを一回やめるということは、音楽業界が変わるチャンスでもあると思いますよ。

木皿:それこそ、さっきの文学性の話じゃないですけど、昔の曲は「ライブ映え」なんて考えなくてよかったわけですから。原点に立ち返る、良いチャンスなんじゃないかな。

冨田:ひとりで聴いてもいい曲という、当たり前のことに立ち返るのはいいことかもしれないですよね。

木皿:音楽を体だけじゃなくて、一回耳と脳で感じられるものにね。

■リリース情報
NO PRINCESS 2ndシングル『MUST BE GOING!』
2020年10月7日(水) 発売
初回限定盤CD+DVD 1,800円 +税  POCE-92107
通常盤CD 1,200円 +税  POCE-12155
NO PRINCESS
不破ひかる(CV.Machico)、星野しほ(CV.倉知玲鳳)、 明瀬亜美(CV.堀内まり菜)、 胡桃坂らぶ(CV.阿部寿世)

三日月眼 2ndシングル 『キミシダイ Our future』
2020年10月7日(水) 発売
初回限定盤CD+DVD 1,800円 +税 POCE-92108
通常盤CD 1,200円 +税  POCE-12156
三日月眼
綾瀬双葉(CV.木戸衣吹)、若月美鈴(CV.岡咲美保)、金剛寺ゆい(CV.中島由貴)

X-UC 2ndシングル 『Papier Mache IDOL』
2020年10月7日(水) 発売
初回限定盤CD+DVD 1,800円 +税  POCE-92109
通常盤CD 1,200円 +税  POCE-12157
X-UC
羽美野りさ(CV.諏訪ななか)、猿野さくら(CV.花谷麻妃)、星月小春(CV.豊田萌絵)、掛川こころ(CV.長谷川玲奈)、安奈あき(CV.酒井美沙乃)、百合ヶ丘みさき(CV.鈴木杏奈)、霧野しおり(CV.北原侑奈)、八村かをり(CV.青山桜子)、伊佐山エリナ(CV.二ノ宮ゆい)、清見みさ緒(CV.石飛恵里花)

Fool’s End 『~はなあらし~』
2020年10月7日(水) 発売
初回盤CD+CD 1,800円+税 POCE-92111
通常盤CD 1,200円+税 POCE-12159
Fool’s End
佐久間志のぶ (CV.悠木碧) / 森なが穂(CV.竹達彩奈)

ドラマCD『IDOL舞SHOW エピソードZERO』
2020年10月7日(水) 発売
3,182円 + 税  PROP-1064
※アニメイト限定販売

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