lynch. 葉月は、なぜいまソロ活動に取り組むのか ホール公演への意識の変化や配信ライブへの赤裸々な思いも明かす

 lynch.のボーカルとして活躍する葉月が、9月に自身初のソロアルバム『葬艶-FUNERAL-』をリリース。3月にフルアルバム『ULTIMA』を発売、10月25日には日比谷野外大音楽堂での有観客ライブが決定するなど、バンドとしても好調な中、ソロとしての活動に取り組む意義とは。また、配信ライブ/生ライブへの考えについても赤裸々に語ってもらった。(編集部)【記事最後にプレゼント情報あり】

「行ったり来たり出来る場所があることでモチベーションが生まれる」

ーーまず、完成した『葬艶-FUNERAL-』の手ごたえはいかがですか?

葉月:バッチリです。もっとこうすればよかった、みたいなものはない状態で完成させることが出来たと思います。

ーーもともとは1月19日にメルパルクホールで行われた単独公演『奏艶』の映像作品をリリースする予定だったところから今回の音源+Blu-rayという形になったそうですが、5月の『OVERCOME THE VIRUS』のインタビューの際にもソロの音源を作りたいといった発言があったかと思います。いつくらいから構想があったのでしょう?

葉月:ゲーム配信を始めてからだから5月くらいだと思うんですけど、その時はまだ考えもざっくりしていて、Blu-rayに音源をくっつけてとかは考えていなかったです。そこからレコーディングに入ったのが6月末くらいだったかな。

ーーということは、音源を作りたいという発言からわりとすぐレコーディングに取り掛かったわけですね。

葉月:そうですね。今回に関しては曲のレパートリーもあったし、改めて曲作りをする必要がなかったので、アレンジャーにお願いして楽譜を用意してもらって録るだけでした。

ーー選曲理由に関しては葉月さん自身も“好きだから”と“アレンジが良くて自分のことを知らない人にも届く”の二択とお話していました。その中でも第1回目の『奏艶』(2016年1月31日@高田馬場CLUB PHASE)のセットリストから歌われている曲が多い印象がありますが、これは偶然ですか?

葉月:いやいや、言ってしまえば初回の『奏艶』のセットリストって一番やりたい曲ばっかなんですよ。そこから回を重ねるごとに、例えばLUNA SEAや黒夢みたいなレギュラーのバンドのカバー曲は変わっていきましたけど、それは毎回同じ曲をやるのもなと思ってのところなので、このバンドならこの曲!みたいな自分的ベストがこの音源に全部入っている感じです。

ーーそれがLUNA SEAの「Ray」であり、黒夢の「至上のゆりかご」なわけですが、RYUICHIさんや清春さんとお話しはされましたか?

葉月:まだしてないです。でも、RYUICHIさんは1月のライブを観に来てくださって、本番後に「すごく良かった」、「葉月だけの世界だよね」ってお褒めの言葉をいただいたんですけど、RYUICHIさんさすがだなって思ったのが“上手かった”とは一言も言わなかったんです(笑)。

ーーそんな裏話があったんですね(笑)。

葉月:でも、それがうれしくもありました。去年もイベント(『RK presents Children of the New Age ~新時代の子供達へ~』)でご一緒して、横に立たせてもらって一緒のモニタースピーカーでRYUICHIさんの歌を聴きながら歌いましたけど、レベルの差はとんでもないなと実感しましたし。それでもRYUICHIさんは「葉月の声は本当にいいから自信持ったほうがいい」って言ってくださるんですけど、“上手い”という褒め言葉は聞いたことがないし、それはきっとそういうことなんだろうなと思うと自分の中には燃え滾るものがありますね。

ーー「水鏡」(Cocco)や「月のしずく」(RUI/柴咲コウ)は選曲理由でいう“アレンジが良くて自分を知らない人にも届く”楽曲に当てはまると思います。この2曲は1月のライブでも和楽器や二胡、胡弓をフィーチャーしたアレンジで披露されていましたが、和楽器を取り入れた経緯を教えてください。

葉月:昔から二胡や胡弓といったアジアンテイストな楽器には興味があって。箏とか尺八や和太鼓も大好きで、尺八はSUGIZOさんのソロの1st(『TRUTH?』)に結構入ってるんですよ。それがめちゃくちゃかっこよくて、いつか取り入れてみたいとは思っていたんですけど、lynch.ではなかなか使いどころがなくて今回試してみました。

ーーこれらの楽曲の原曲には和楽器のテイストはないですが、和楽器でアレンジしようとした決め手みたいなものはあったのでしょうか?

葉月:イメージですね。1月のライブで和楽器のセクションを作りたいっていう話をした際に4曲くらい候補を選んでほしいとアレンジャーに言われて、まず最初に浮かんだのはB’zでした。というのもB’zは和の音階が多いので絶対に合うだろうなというところで「Raging River」を選んで、それから『奏艶』の初期からやってる「月のしずく」と「水鏡」。最後の1曲はアレンジャーの提案で「Lemon」(米津玄師)に決まりました。その中から今回はこの2曲が選ばれた感じです。

ーーさらに「PHOENIX」や「D.A.R.K.」といったセルフカバー、葉月さんと切っても切れない関係であるPay money To my Painの「Another day comes」といった楽曲ではティンパニが加わり、より荘厳なアレンジとなっています。

葉月:これは竹芝NEW PIER HALLでの『奏艶』(2018年12月1日)で初めてティンパニが入るということで、それを活かして音に迫力を出せるようなアレンジを作っていきましょうというところから始まったんですけど、やってみたらそれが面白くて。ライブではやらなかったですけど、音源ではシャウトもガテラルも入れたらそれが自分の中で大ヒットでした。「何だこれ! 聴いたことねぇぞ!」みたいな。なので、こういう音楽を誰もやっていないという意味では先端となって生み出せているというのがすごい快感で、もっとやりたいという気持ちが強いですね。

ーーたしかにあのクラシカルな編成からは想像もつかない迫力ですよね。

葉月:この形態でこんなこと出来るんだ! と思いました。どうしてもロックバンドのボーカルがこういう編成でソロをやるってなると大体静かなバラードを選ぶと思うし、面白いなって。

ーーそこにシャウトが乗るとより静と動のコントラストが出て、曲の持つ内なる激しさを引き出してるように感じます。

葉月:シャウトは結構悩んで、邪魔かなとも思ったんですけど、エンジニアに相談したら絶対入れた方がいいですよって言ってもらえたのと、僕の特徴でもあるので入れてよかったと思います。

ーー楽曲のアレンジはアレンジャーとどのようなやり取りで具現化していくのでしょう?

葉月:まずは一回アレンジャーに丸投げします。そこから返ってきたものが自分の中にあるその曲のイメージとあまりにもかけ離れてる場合は伝えて直してもらいますけど、基本的には一発OKが多かったですね。たしか「至上のゆりかご」に関しては最初お洒落でカフェ感のあるアレンジであがってきたのでやり直してもらった覚えがあります。いや、これは違う! って(笑)。

ーー以前、lynch.のスタンスとして“ファンの望むlynch.でいる”といった発言があったかと思います。それとソロでの“新しいものを生み出したい”というスタンスには若干違う面があるのでしょうか?

葉月:lynch.でも未知なるものを生み出したいという気持ちはあって、そうなれてないこともないとは思うんですけど、ソロのほうが根本的に使う楽器とか物理的な意味でまったくもって新しいものだからわかりやすいというか。もちろんlynch.でももっと「何だこれ!」というものを生み出したいんですけど、あんまりトリッキーなことをやってしまうとそれこそ「何これ?」で終わっちゃう可能性もあるし、ある程度の狙いを定めておいてその中でどう実験するかというところで振れ幅が限られている中でやっているというのはありますね。でも、だからといってファンが望むことだけをただやっているだけではないはず。

ーーソロとバンドというところで言うと、葉月さん自身“バンドで出来ないことがあるからソロをやっているわけではない”と仰っていましたが、ソロ活動でバンドに還元できるものはありますか?

葉月:僕の場合は特殊なのでほかの人とは違うと思います。武者修行とかバンドのためにやるって言ってらっしゃる方が多いと思うんですけど、僕はその気持ちは全然なくて。単純に違う表現がしたいからやっています。それを踏まえてバンドに還元できるものは、少し聞こえが悪いかもしれないですけど“モチベーション”ですね。

ーーというと?

葉月:これだけ長くlynch.の曲を作っていると“もう無理、もう出来ないです”って時がどうしてもあるんですよ。ずっと出し続けてばっかりいるとインプットが追いつかないというか。それこそ最近の海外のバンドって僕の中でヒットがなくて、ヘヴィなものに関しては2014年あたりから進化がないような気がして、新たに好きなものが生まれてこないんです。そうなると自分の中にあるものから曲を生み出していくしかない状況がここ数年は続いていて、それこそ『ULTIMA』のときとかはめちゃくちゃしんどくて大変だったんですけど、ソロで別の作業をやっているとヘヴィな音楽を作りたくなってくるんですよ。

ーーなるほど。

葉月:美味いラーメン食ったから次はカレーがいい、みたいな(笑)。lynch.の曲を作りたいっていう意欲があるとないでは僕の中ではとんでもない差があるんです。15年も続けているとどうしても「やらなきゃ」って思ってやっていることもあるし、そうやってずっと同じ場所にいると限界を早く迎えがちだとも思うので、行ったり来たり出来る場所があることでモチベーションが生まれるのは助かってます。

ーーそうなんですね。

葉月:特に長く続いていてメインコンポーザーがいるようなバンドだとそういう人は多いと思いますよ。そこからはよっぽどいい音楽に出会えていればいいと思うんですけど、そうでない限りは自分の中からひねり出すことになっちゃうし、僕も色々聴くようにはしてるんですけどなかなか出会えないですね。

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