アイナ、チッチ、アユニ・D、ハシヤスメ……BiSH、メンバー6人のソロ活動から見える個性

  BiSHはパンキッシュであり個性が強いアイドルグループである、というイメージを持っている人は多いだろう。その認識はきっと正しいだろうが、それはグループを構成しているメンバーが個性的だからである。そんなBiSHのメンバーは今、個々のソロ活動が活発化している。そこでこの記事では、それぞれのソロ活動から見えてくる個々の側面に光を当てながら、各々の個性に迫ってみたい。

アイナ・ジ・エンド「死にたい夜にかぎって」

 まず、アイナ・ジ・エンドにスポットを当ててみよう。アイナはBiSHの歌声においても柱的な存在であり、声そのものに圧倒的な個性を宿している。聴けば一発でアイナの歌声とわかるそのハスキーボイス。その歌声からは独特の深みと説得力を感じさせられる。歌うだけで、どんな歌も自分のものになるような個性があるわけだが、アイナのソロ作品は必ずしも自分の個性そのものを武器にしているようには見えない。というのも、アイナはMONDO GROSSOやジェニーハイを始めるとする外部アーティストとコラボをしたり、企業のTVCMソングなども担当している。つまり、意図的に外部と混じり、場合によっては擬態するような周到さも持っているのだ。ここでポイントなのはアイナの場合、仮に擬態をしたとしても個性がにじみ出てしまっているところにある。演じていても個性になるし、演じることそのものが、すでに個性になってしまうような部分があるのだ。

アイナ・ジ・エンド / 死にたい夜にかぎって [Official Video]

 次は、アイナとある種、コントラスト的な立ち位置にいるセントチヒロ・チッチについて見ていきたい。チッチがソロ活動としてリリースした作品は一曲のみだ。「夜王子と月の姫」という銀杏BOYZのカバーである。現状、このカバー曲だけしか音源が発表されていないので、この曲でチッチのソロ活動の個性を見極めるのは難しいが、注目したいのは、この曲に対するスタンス。チッチ本人は、この曲が自分の人生においてとても大切なものであると公言している。つまり、銀杏BOYZのファンであり、原曲を聴きに聴きまくった人間なのである。その気になれば銀杏BOYZに寄せることもできた中で、チッチの歌い方はわりと原曲と距離を置いたものになっている。サウンドも、同じロックバンドのアレンジではあるものの、チッチの「夜王子と月の姫」はノイジーで、どこか幻想的なものを感じさせるのである。00年代の青春パンクロックというよりも、90年代UKロック的な部分があるのだ。これは演奏・アレンジをリーガルリリーに手掛けてもらったところが大きいだろう。思えば、チッチは自分の主催イベントに、リーガルリリーをはじめ、GEZANや突然少年など、同じ「バンド」の中でも、流行りとは違う方向に進む“尖端”のバンドを積極的に招聘している。開拓の精神がそこにあるように感じるのだ。そしてその精神こそが、チッチのソロ活動の個性に繋がっているように思うのである。

セントチヒロ・チッチ (BiSH) / 夜王子と月の姫 [OFFiCiAL ViDEO]

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