眩暈SIREN、TK(凛として時雨)を迎えてさらに拡大した世界観 アニメ『pet』主題歌「image _____」から考察

 この世界に存在するのが、自分ひとりであれば、焦燥、憧憬、欲望、嫉妬、劣等感、絶望、空虚、期待、寂しさ、多幸感などといった計り知れない感情は、生まれてこないかもしれない。しかし、他者に囲まれながら生きている以上は、どうしても、感情という波の行き交いを避けることは、不可能だ。たびたび、生まれゆく感情には、自身を生かしていく喜びへと繋がるものがあれば、一方で、自身を壊していく危うさに繋がるものもあるーー。

 厭世的な思考に悩まされる孤独な若者に、単純な光を注ぎ込もうとするのではなく、生きていくための手がかりを添えるのが、京寺(Vo)、オオサワレイ(Gt)、森田康介(Ba)、ウル(Piano&Vo)、NARA(Dr)から成る、福岡発5人組ロックバンド、眩暈SIREN。

 2019年2月に、Sony Music Recordsへ移籍して以降は、2019年2月6日にリリースされ、TVアニメ『からくりサーカス』の第2クール・エンディングテーマに起用されたシングル「夕立ち」の表題曲で、アレンジ&プロデュースに、amazarashiなどを手掛ける出羽良彰、さらに、1月22日にリリースされ、TVアニメ『pet』エンディングテーマに起用されたシングル「image _____」の表題曲で、アレンジ、エンジニアのプロデュースにTK(凛として時雨)を招いている。そのうち、今回、取り上げたいのが、TKがプロデュースに回った「image _____」についてのことだ。

TVアニメ『pet』ED/エンディングテーマ「image _____」眩暈SIREN

 彼らが、ラウドロック、メタルコアなどといったヘビィな楽曲展開をするバンドであることは確かだが、それ以上に着目したいのは、その曲調における、京寺のボーカルワークはあくまでフラットであること。一方で、今回、TKがアレンジした「image _____」は、〈『虚構にまようその背中を追い続けていても~』から続く語りにあるボーカルのフラット感は、残しつつも、サビからは高音を意識するなどして、これまでとは、一味違う作品へと昇華させている。BPMが200を超える豪快なバンドサウンドに、より、エモーショナルな京寺の歌声が重なった先に、感情的に訴える箇所が増えた。

 また、カップリングに収録されている「Gerbera」は、ボカロP、DJ、作曲家、N.I.C.Kのフロントマンでもある、ゆよゆっぺの「Gerbera」をカバーしたもの。例えば、心情を綴った本家の歌詞にはない歌詞が挿入されていたり、大サビ前の〈動かない君を見ていた〉からはドラムの音色以上に揺さぶるようなギターの音色を前面に押し出したりするなどの、彼らによるアレンジは、「Gerbera」の楽曲への没入感を強くさせると同時に、眩暈SIRENらしさを浮き立たせたといえる。

 さらに、特筆すべきは、「image _____」は、『pet』との親和性が非常に高いということである。三宅乱丈による漫画が原作の『pet』は、他者の記憶に潜り込み、記憶の消去や改ざんをおこなうことができる特殊能力を持った「ペット」という登場人物達の人間関係を描いたストーリー。漫画に出てくる単語を用いたという歌詞のほか、『pet』の映像を使用したLEDの上で演奏することで、翻弄されていく人を表現したというMVからも、「image _____」を、『pet』に寄せたことは、明瞭なのだが、『pet』に、幸せな記憶を辛い記憶に塗り替えるというシーンが存在すること自体が、他者との交わりのなかで孤独を感じるようになっていく者の心象を綴った眩暈SIRENの楽曲に通じるところである気がしてならない。

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