金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」

Yasei Collective 松下マサナオ、2020年代に託すミュージシャンのあり方「外に出て何でもチャレンジしたらいい」

「日本にはいまだに“ここが最先端”みたいな思想が根深くある」

――ここまで同世代、あるいは上の世代について話してきましたが、近年は石若駿くんがCRCK/LCKSとしても活動しながら、今年(2019年)Answer to Rememberを始めたり、あるいはWONKのようなバンドもいたり、ジャズを背景に持ちつつ、ジャンル的にも形態としても非常に自由な活動をする下の世代が目立つようになりました。彼らのことはどのように見ていますか?

松下:単純に、羨ましいですよ。俺らが始めたときは同期ってほぼいなくて、先輩にも頼れなくて、ドラマーとしてもそれこそmabanuaくらいしか見つけられなかったから、俺たちだけで道を作っていかなくちゃいけないと思っていて。でも今は、WONK、CRCK/LCKS、ものんくるとかは、確かなテクニックがありつつ、それを武器にするんじゃなく、必要だから使うって感じで、自分たちのやり方でポップシーンにアプローチしてるし、メジャーシーンで言うと、King Gnuとかもそうだし。そういうバンドがいっぱいいて、ちゃんと横の繋がりもあるっていうのは、ホント羨ましい。

――SNSがより一般的になったり、時代性も絡む話でしょうね。

松下:やっぱり石若駿の存在はすごく大きいと思ってて、彼が灯台になってみんなの道を照らしてると思うし、彼は俺の道も照らしてくれたんです。俺はあいつのことを年下だと思ったことは一回もなくて、ツインドラムよくやるけど、死ぬ気でやらないと殺されると思うし、あいつの作品は全部聴いてるし、外タレみたいな感覚っていうか。年下で、一人のドラマーとして敵わないなって思うは、駿とビートさとし(skillkills)かな。他にも素晴らしいドラマーがいるし、今はさらにその下の世代も出てきてて、彼らともつながっていきたいと思うんですけど。

――変に持ち上げるわけじゃないけど、ヤセイであり、松下さんがやってきたことは、きっと石若くんにとっての灯台にもなってたと思うんですよね。

松下:だといいんですけど、みんな必死こいてやって来ただけだとは思うんです。それを後から見てみると、「こことここが繋がってて、あのときのあのライブがあいつらを繋げたんだ」みたいな、それは面白いですよね。まあ、歴史とも言えないくらい短い歴史だとは思うけど、でもこの10年は大きな10年だったと思うし、これから先を考えたときに、ここで間違った方向に行っちゃうと、ホントにアジアの中で取り残されると思う。日本にはいまだに「ここが最先端」みたいな思想が根深くあるけど、実際にアジアでツアーすると、向こうの方がリズムに対して圧倒的に強いんですよ。シンガポールとか韓国はそうだし、中国もフリージャズが盛り上がってるらしいし、このままだとどんどん差が付いちゃう。

――その意味では、ヤセイが海外のミュージシャンと共演してきたのは大きなことで、Kneebodyもそうだし、特に2017年にマーク・ジュリアナと共演したのは、外への意識、や距離感の変化を促した、非常にエポックな一日だったと思います。

松下:あれは自分たち的にもデカかったですね。みんなもっとフランクに世界のミュージシャンと関わっていけばいいと思うんです。ビザのこととかあるけど、そういうのは大人たちに任せて、まずはやってみればいい。俺らにできたんだから、もっとバジェットが大きくなれば、もっと面白いことができるはずだし、昔に比べれば、絶対イージーになってるはずなんです。あとはチョイスさえ間違えなければ、絶対もっと面白くなると思います。

――下の世代に対する意識は、昔以上に強くなっていると言えますか?

松下:今36歳なんですけど、僕がこれからやっていくべきこととして、自分が何を残せるのかっていうのはすごく意識するようになりました。これまで底上げをやってきたつもりだけど、ここからは今の俺たちのレベルを最低限にしていかなくちゃで、そのためにはもっと教育レベルを上げないといけない。国内で専門学校に行くんだったら、俺のところに先に来てほしいなって思います。力になれると思う。MONO NO AWAREのヤナ(柳澤豊)とか、木(KI)のナイーブ、ドラムテック始めた長島健は俺のところにローディーとして来てくれて、どこか目立つし、残っていくなと当時思った。そういう積極的なやつが増えてくれると嬉しいなって。

――アメリカから帰国した松下さんがいろんな人と繋がって、繋げていったように、それくらいの気合いを持って動けば、その分の結果もついてくるというか。

松下:とても失礼な言い方ですけど、先輩を道具として捉えた方がいいと思うんです。ポンタさん(村上“PONTA”秀一)にしろ、沼澤尚さんにしろ、超尊敬してますが、自分を高めていくためのツールとして歴史を作ってくれた存在として見てましたし、今でも海外のアーティストに対してそういう感覚を持ち続けてる。その人がドラマーとして培ってきたものを、どうやったら自分に落とし込めるのか。それをずっと考えながらいろんな人と接してきて、もちろん合わない人もいたけど、それってやっぱり実際に会ってみないとわからないんですよね。だからこそ、下の世代にとっても、SNSやYouTubeを使う一方で、「人に会いに行く」っていうことは絶対に必要だと思う。今はめっちゃフレッシュな動画が見れちゃうけど、実際に体験することで、何かに開眼して、人生が変わることってあるはずで。家にいて何でもできる世の中だからこそ、外に出て、何でもチャレンジしたらいいと思うんですよね。

■松下マサナオ
長野県飯田市出身。17歳でドラムを始め、大学卒業後に渡米し、Ralph Humphrey、Joe Porcaro等に師事。 現地の優れたミュージシャン達と演奏を重ねながら、2年間武者修行をする。 帰国後はストレートジャズからパンクロックまで様々なジャンルで活動。
2009年に自身のバンド、Yasei Collectiveを結成。 2012年にFUJI ROCKFESTIVAL出演、2013年にはグラミー賞にノミネートされたUSジャムバンド、KneebodyとのWリリース・ライヴを実現。2014年には日本を代表するドラマー、村上"PONTA"秀一氏率いるNEW PONTA BOXと異色のツインドラムセッションを行う。また同年、凛として時雨のドラマーであるピエール中野氏のソロプロジェクト『Chaotic VibesOrchestra』への参加。2017年には、デビッド・ボウイ最後のドラマー、マーク・ジュリアナとツインドラムでの共演、ベニー・グレブやブレインフィーダーのルイス・コール等の来日公演でゲストアクトを務めるなど、海外との交流も深い。 2018年、NYレコーディングによるヤセイコレクティブ5枚目のフルアルバム"statSment"をリリース。同年9月にはリズム&ドラム・マガジン9月号の表紙を飾る。

TAMA Drums,MEINL Cymbals,Evans Head,Canopus Snare Wire,DW Pedals,STANCE Soxのエンドーサー。

<現在の主な参加バンド>
Yasei Collective
Gentle Forest Jazz Band
HH&MM(日向秀和×松下マサナオ)

<過去のサポートアーティス>
二階堂和美、東京03、バナナマン、cero、mabanua、kid fresino、前野健太、NakamuraEmi、Toku、ASH DA HERO KAGERO 他多数

■ライブ情報
『Yasei Collective 10th Anniv. Kick-Off Party feat. Special Guests !!!』
2020年1月19日(日)
1st ステージ
開場15:30/開演16:30
2nd ステージ
開場18:30/開演19:30
2020年1月20日(月)
1st ステージ
開場17:30/開演18:30
2nd ステージ
開場20:30/開演21:30

<出演>
Yasei Collective

2020年1月19日(日):
宮川純、Sakina(NINGEN OK)、類家心平、Kid Fresino、古谷淳、小西遼、吉田沙良(ものんくる)、沖メイ(ZA FEEDO)井上銘、DAWA(FLAKE RECORDS)

2020年1月20日(月):
大木伸夫(ACIDMAN)、Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、日向秀和(STRAIGHTENER,Nothing’sCarvedInStone)、村上”PONTA”秀一、タブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)、河原太朗(TENDRE)、長塚健斗(WONK)、桑原あい、松丸契、仙波清彦、DAWA(FLAKE RECORDS)

チケット:サービスエリア¥6,900、カジュアルエリア¥5,900(1ドリンク付き)
※飲食代は別途精算
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Billboard Live公式Web
Yasei Collective オフィシャルサイト

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