BiSH、“パンクロックボーカル”としての魅力 「星が瞬く夜に」6人の歌声から考察

 2番の〈問題 あっけらかんに見えてるならば oh 乱心でひっきりなしに刻みたい〉〈正解 嘘つきだらけ問題ありの キツネちゃんたちも ここに来ればパラダイス!〉を歌うリンリンとモモコグミカンパニーの歌声にも、好対照な魅力がある。ふたりともメンバーの中でも特にあどけない雰囲気のある歌声だが、その本質は全く正反対。壊れ物のような危うさや浮遊感のある儚さが魅力的なリンリンに対し、モモコの歌声はより力強く、躍動感や無邪気な可愛さを感じられる。

 また、大サビ前のハシヤスメアツコが担当する〈ギンギン好奇心の目たち クソの命は如何に?〉も楽曲の中で大きな役目を背負っている。涼しげで落ち着いた、大人っぽい彼女の歌声が最も盛り上がる大サビの前に配置されることで、楽曲にどっしりと落ち着きが表れてその後のサビの盛り上がりがより際立つのだ。ライブパフォーマンスでは男前なシャウトも聴かせてくれるアツコの存在感は、オーディエンスをカタルシス感ある大サビへと引き上げていく役割も担っている。

 デビュー以来、“楽器を持たないパンクバンド”としてアイドルグループとパンクロックバンドのハイブリッドスタイルを提示し続けてきたBiSH。その唯一無二の楽曲性はサウンドやパフォーマンスだけでなく、メンバー個々のボーカルスタイルにも明確に表れているように思える。グループ名が曲名に冠された『BiSH-星が瞬く夜に-』は、そんな彼女たちの魅力が前面に押し出されたいわば名刺代わりともいえる楽曲だろう。

 今回の『ミュージックステーション』には、『アメトーーク!』に出演した“BiSH芸人”も出演することが告知されている。『アメトーーク!』でBiSHを知った視聴者にも、彼女たちの魅力がストレートに伝わるベストな選曲に違いない。

 ロックボーカルには歌唱力はもちろんだが、それ以上に楽曲に込められたエモーションを的確に表すための高い表現力や唯一無二の個性が求められる傾向にある。その点でBiSHは、いわば様々な魅力を持つ女性パンクロックボーカルを6人も集結させた最強のグループだといっても過言ではないだろう。個性あふれる6人の歌声がお茶の間にインパクトを残すことに期待しつつ、今回のオンエアで初めての披露となる新曲「KiND PEOPLE」ではどんな歌声を聴かせてくれるのかも楽しみにしたい。

■五十嵐文章(いがらし ふみあき)
音楽ライター。主に邦楽ロックについて関心が強く、「rockinon. com」「UtaTen」などの音楽情報メディアにレビュー/ライブレポート/コラムなどを掲載。noteにて個人の趣味全開のエッセイなども執筆中。ジャニーズでは嵐が好き。
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