『INTO THE PURGATORY』インタビュー

GALNERYUSが究める、ヘヴィメタル×ポップスの融合「最新作が最強というバンドでありたい」

ソロを経たことはすごく刺激になっている(SYU)

左からSYU、Masatoshi “SHO” Ono、YUHKI

ーーMVにする楽曲というのは広くいろんな人に聴いてもらうという意思も込められていると思いますが、そこに「THE FOLLOWERS」を選んだというところにGALNERYUSとしての攻めの姿勢が強く表れていると思いました。

SYU:「MY HOPE IS GONE」や「THE END OF THE LINE」あたりの“ザ・GALNERYUS”というような盤石な楽曲をMVに選ぼうと思えば選べたんですけど、そうなると自分たちが楽しめないというか。もっと刺激が欲しいなと考えたんですね。アルバムを通して聴くと、どうしてもこいつ(「THE FOLLOWERS」)が際立っているな、という感じがしたし、メンバーもみんな気に入っていていたので。

 「THE FOLLOWERS」はまず、7弦ギターを使ったあのリフが書けた時点では「これはGALNERYUS風ではないな」と感じたんですけど、それと同時に「これをGALNERYUSで揉んでいったら、どうなるんだろう?」とも思って。探り探りやっていったら、うまくハマったなという印象ですね。

ーーソロアルバムにも7弦ギターを使った楽曲は存在しましたし、それまでGALNERYUSでやってきたこととは若干毛色の違うことにもチャレンジしていた。その実験の成果が、今回の『INTO THE PURGATORY』にちゃんと形として表れているように感じました。

SYU:うん、ソロを経たことはすごく刺激になっていますね。久々に7弦で録音したときも「ああ、やっぱりローB(7弦)の響きはええなあ」と改めて思ったし、それもあってGALNERYUSでも久しぶりに7弦ギターを使ってみようと思ったのは確かですね。

 毎回ね、アルバムをパッと通して聴いたときに同じ感じがしてしまわないように意識していて。どれだけ美味しいものでもいつか飽きるみたいなもので、何かしらアクセントがないと面白くないじゃないですか。そういう意味では、いいアクセントになったかなと思います。

ーー特にパワーメタルやメロディックスピードメタルのジャンルって、スタイルが凝り固まってしまいがちですものね。作品を重ねれば重ねるごとに新しいことに挑戦するのが難しい、伝統を重んじるジャンルでもありますし。

SYU:看板を守らなあかん感じもあるし、あとはネタとの戦いもあるし。

ーーでも、この『INTO THE PURGATORY』はそこをしっかりクリアしている作品だと思いますよ。

SYU:ありがとうございます。そこが毎回すごく大変なんですけどね(笑)。とはいえ、「MY HOPE IS GONE」で聴けるようなメロディがひとつでも出てくると、作曲者としては「これでやっとアルバムが作れるわ」という気持ちにはなりますよね。「ちゃんとメロスピで締めておけば、何をやってもいい」というわけではないですけど、多少は冒険もできるのかなとは思っています。

GALNERYUS以外でひとつのことが20年続いたことがない(YUHKI)

ーーGALNERYUSは2018年10月にメジャーデビュー15周年を迎え、今年は小野さんとTAKAさんが加入してまる10年経ちました。

SYU:一言で言い表すのは難しいかもしれないですけど、各時期にさまざまなドラマがあって。その中で最高の音楽をお客さんに聴かせたいという、その思いだけで続けてきました。それこそ2009年からの10年間は……ドラムがJun-ichiさんからFUMIYAに交代はしましたけど、ほぼ変わらずにずっとやってこられたのは、自分たちのやりたい音楽を表現するに当たってこのメンバーが適任だと全員がわかっていて、なおかつやりたいことがちゃんとできている状態であると。それに加えて人間関係が非常に良好だということ、その2つがやっぱり大きいと思うんです。それこそ、YUHKIさんに関しては15年どころか20年ですから。

YUHKI:そうなっちゃいますね(笑)。僕はGALNERYUS以外のことで、ひとつのことが20年続いたことがないんですよ。なんでも3年ぐらいで飽きちゃうので、それを考えるとプロデューサーもディレクターも20年一緒にいることって、なかなかないですよ。

SYU:知らん間に時間が経ってたよね。

YUHKI:本当に。僕らが好きな音楽を好きなようにやらせてもらえるというのは、当時の環境ではあまりないことだったし、それをメジャーシーンでやらせてもらえてここまで来られたのは、本当に幸せなことだと改めて思います。だから、応援してくれるお客さん含め、すべての支えてくれる人たちがいたからこそここまで来られたんだと、今改めて思っています。

SYU:僕は2000年で20歳だったんですけど、その前はまだメタルにとって氷河期が続いているような状態で。でも、そのあたりから大きな山ではないかもしれないですけど、少しずつ復権し始めて、僕もその波に乗ったところもあります。今もGALNERYUSみたいにメロディックスピードメタルをやっているバンドは依然として多くはないんですけど、こういった音楽をするバンドがもっと増えて、しのぎを削り合う戦国時代じゃないですけど、そこから頭角を現すバンドがたくさん出てきて、シーンを大きくしていかないといけないと思っていて。いいライバル意識を持って活動できるようなバンドがたくさん出てきてくれないとなと、まだまだ思っていますね。

僕は照らしてもらわないと光らないタイプ(SHO)

ーー小野さんとTAKAさんが加入した2009年以降、バンドとしては上り調子な印象が強いですが、当の小野さんはそのへんどう感じていますか?

SHO:僕は歌うのが好きでずっと歌ってきていたので、そういう意味では……自分にこなせるかどうかは別として、あんまりジャンルにこだわりがないんですね。でも、そうはいってもデビューしてから長くポップスを歌ってきて、そこからGALNERYUSに加入してメタルを歌うことになった。ある程度長く歌ってきていい意味で自分の歌唱スタイルが定まってきた中で、パッと歌ったときにSYUくんや周りの人から「そこはもうちょっとこう歌ったほうがいいんじゃないの?」とか「ここをこうしてみたらどうか?」と言われると、そういうシンプルな提案が自分の中にないものだったりするから、歌い手としてさらに幅が広がるんです。そこは非常にありがたいし、僕はいいときにGALNERYUSに入ったなと思っています。

SYU:小野さんがそう言ってくれるのはうれしいですね。前任ボーカリストが抜けた頃は、僕らはここからどうなっていくのか常に不安で。そんなときに、プロデューサーの久武(頼正)さんが小野さんと知り合いだと聞いたんです。僕は1992年の「You're the Only…」をもちろんテレビで観て知っていたし、シングルも買っていたので、「あの小野さんですか!」とビビっちゃって(笑)。でも、FORT BRAGG(※小野が80年代に在籍したハードロックバンド)もやっていたからメタル側の人でもあるし。

SHO:あはははは!(笑)。

SYU:それで「歌ってもらえるのなら歌ってもらいたいです!」とダメもとで連絡したら、快くOKしてくれて。だから、上り調子になったのは必然的なことなんです。小野さんが歌うと自然と多くの人に響くと思うし、透明感のあるハイトーンボイスはすごく貴重だし。

YUHKI:こういうハイトーンのシンガーって、本当に数えるほどしかいないしね。

SYU:僕たちがやりたかった音楽にふさわしい声がようやく見つかって、それを普通に表現したらドーン! みたいな。今でもよく覚えているのが、『RESURRECTION』という小野さんとTAKAさんが加入して最初のアルバムでのライブがSHIBUYA-AXであったとき。そのときは以前よりデカめの会場だったので緊張するかなと思っていたんですけど、それよりも小野さんの歌を早くみんなに聴かせたくてたまらない! という気持ちで、リラックスしてできた記憶があります。きっと、すごいドヤ顔で弾いていたと思いますよ(笑)。

SHO:僕は歌い手としては、正直セルフプロデュース力みたいなものが皆無なんですよ。ちょっと大げさな例えですけど、SYUくんが太陽だとしたら僕は月で、照らしてもらわないと光らないタイプなんですね。さっき人間関係の話がありましたけど、音楽活動以外のプライベートの人間関係も含めて、SYUくんやみんなによい部分を引き出していただいて、本当にありがたいですよ。

SYU:いやあ、小野さんがこういう性格で本当によかったと思います。

ーー小野さんのように、ご自身でヒット曲を持っているシンガーがヘヴィメタルバンドに加入するケースって世界中を探してもあまりないですよね。それこそ小野さんはテレビアニメ『HUNTER×HUNTER』(日本テレビ系)のオープニングテーマ(「departure!」)も歌ってきましたし、そのあとにはGALNERYUSとしても同作のエンディングテーマ(「HUNTING FOR YOUR DREAM」)を提供しています。そういった機会はバンドのファン層を広げるきっかけにもなったんじゃないでしょうか?

SYU:そういう部分も非常にあると思います。

SHO:ソロのほうで言えば、オープニングテーマの「departure!」はまず曲が最初にあって、アニメ制作の人たちが「これを誰に歌ってもらおうか?」という中で、縁があって僕が歌うことになったんですね。そこからのつながりで、「じゃあGALNERYUSにエンディングテーマを」みたいな流れになって。僕は今、専門学校に歌を教えに行ったりしているんですけど、学生さんは『HUNTER×HUNTER』世代で、その親御さんは「You're the Only…」を知っている世代。そういう影響力はありますから、GALNERYUSがエンディングをやったことで少なからずアニメをきっかけにGALNERYUSを聴き始めた人もいるんじゃないかと思いますね。

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