BUMP OF CHICKEN『aurora arc』レビュー:バンドの歩みが“オーロラの弧”のように結実

 BUMP OF CHICKENが、9thアルバム『aurora arc』を完成させた。タイトルは、アーク(=弧)を描くオーロラのかたちを「オーロラアーク」と呼ぶところに由来する。すでにシングルとしてリリースされている「Aurora」が引っ張っているアルバム、という単純な想像に留まらない。美しい光彩を放ちながら、ぐるりと私たちを包み込むような14曲が収録されていると言った方が、しっくり『aurora arc』というタイトルと今作がつながる気がする。そして、老若男女が憧れる、壮大で純粋なオーロラと、BUMP OF CHICKENのイメージが、絶妙に重なり合うという意味でも、素晴らしいタイトルだと思う。

 前作から今作まで、約3年5カ月。その間、彼らは作品を伴わないツアー『PATHFINDER』を行い、映画やアニメ、ゲームやドラマなど、様々なメディアとコラボレーションした楽曲を発表してきた。つまり、歩みを私たちに(ほぼ)見せ続けてきたのだ。今作には、そうやって発表されてきた楽曲も数多く収録されており、こういったタイプのアルバムは、豪華さがある一方で、“バラバラの楽曲がひとつになったことで継ぎ接ぎ感が出てしまう”あるいは“すでに聴いている楽曲ばかりで物足りなさを感じてしまう”危険性もあったと思う。しかし今作を聴いても、これらのネガティブな印象は感じない。また、正直に言うと“豪華”という感じとも少し異なる。いや、もちろん内容として豪華ではあるのだけれど、ギラギラした華美なイメージはなく、ああ、私たちが見てきた彼らの3年5カ月の歩みは、このオーロラの弧に結実しているのだな、とスッと腑に落ちるような物語性を感じるのだ。彼らは、アーティストとして、年々スキルアップを重ねて、コラボレーションに取り組み、それぞれの作品に寄り添う楽曲を生み出してはいるが、軸足は結成以来“BUMP OF CHICKENの物語”から外れたことはない。こういったタイプのアルバムだからこそ、そのブレのなさが見えてくる。

BUMP OF CHICKEN「Aurora」

 そして今作には、“BUMP OF CHICKENの物語”の構造がよくわかる楽曲が目立つ。藤原基央の心の内が見えてくる「ジャングルジム」、メンバー4人の姿が浮かび上がってくる「リボン」、そして私たちリスナーも共に物語を紡いでいるのだと実感する「流れ星の正体」。図式化したくなるような、BUMP OF CHICKEN解剖学が展開されているのだ。今作を聴いて、だから私はBUMP OF CHICKENが好きなんだな、と改めて思う人も、少なくないだろう。

BUMP OF CHICKEN「リボン」
BUMP OF CHICKEN「流れ星の正体」弾き語り

関連記事