凛として時雨がライブで示した、“3人の特別さ” 初期曲と最新曲の対比から浮かぶもの
もう1つの新曲である「laser beamer」は、まるでサンプラーで出しているかのようなエフェクティブなTKのギターがとにかく耳に残る。「Neighbormind」のよれを生かしたようなフレーズも含め、よりシンプルに、かつカラフルに、インパクトの強いフレーズを生み出すことが、今の時雨におけるTKのギターの命題なのかもしれない。もちろん、フロントの2人を下支えするのはピエール中野のドラムであり、この日はソロコーナー前のMCもなく、ドラムソロでは4つ打ちのバックトラックに合わせて変拍子やポリリズムを猛烈な手数足数で叩きまくる、まさに圧巻のプレイであった。
初期曲と最新曲の対比から浮かび上がる、凛として時雨の変わらない軸と止まらない進化。それが明確に体現されたのが今回のツアーであり、これからさらに新たな楽曲を生み出していくであろう3人にとって、重要な通過点となったはずだ。「また3人でライブをやるので、ぜひ遊びに来て下さい」という345の最後のMCに会場から割れんばかりの大歓声が起こったのは、この日のライブの素晴らしさを物語ると同時に、すべてのオーディエンスがこの3人が集まることの特別さを再度噛みしめていたからに違いない。
(写真=河本悠貴)
■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。