アーティスト主催フェス、根強い人気の理由は? 独自性を最大限に引き上げる二つの特徴

 また、アーティスト主催フェスは地域のお祭り的な立ち位置を強くすることも多い。例えば、京都大作戦は主催バンドである10-FEETの地元である京都で開催されている。毎年、決まって京都で開催されるからこそ、単に10-FEETが主催したイベントという以上に、京都の夏の風物詩という雰囲気が生まれており、実際、開催地である宇治の街も一緒になって、京都大作戦を盛り上げている。また、チャットモンチーが主催となり、徳島で開催したこなそんフェスでは、徳島の風物詩である阿波踊りを踊る時間が設けられていたり、徳島ならではのフードメニューが用意されたりすることで、徳島に遊びにきたような気持ちになる工夫が凝らされ、そのフェスの地域性を強めていた。また、アーティストの出身地で開催されるという物語性も相まって“聖地巡礼”的な意味合いを帯びることもあり、物語性と地域性が揃うことでそのフェスの特色が強められるのだ。

 物語性と地域性。この二つの要素を最大限に引き上げるのがアーティスト・バンド主催フェスの特徴であり、これが一般的なフェスとの大きな差となる。もちろん、主催バンドのアーティストパワーが強く、単純にそのバンドが人気だからこそ集客力が強くなるという事実はあるかもしれないが、様々なフェスが勃興している中で、リスナーが求めているのは「そのフェスじゃないと体感できないもの」であることは間違いない。そして、リスナーの多くがフェス特有の物語性に強い魅力を感じている今、アーティストがフェスを主催するというその事実だけでも、すでに他のフェスにはない大きな魅力として映るのである。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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