ザ・なつやすみバンド『映像』インタビュー

ザ・なつやすみバンド 中川理沙が語る、ブラジル音楽の魅力と自作への影響

アルゼンチン音楽のピアノの響きは独特な気がする

――ブラジル以外にも、アルゼンチンの音楽も聴いているそうですね。

中川理沙:セバスティアン・マッキやアカ・セカ・トリオなんかを聴いています。特にピアノの響きには耳がいくんですよ。

――やっぱり日本のピアノの音楽とは違うものですか。

中川理沙:アルゼンチン音楽のピアノの響きは独特な気がします。コード進行はもちろん、アンサンブルも含めてなんですけれど。

――たしかに、ミナスと同じように、アルゼンチンの音楽にも風や水など自然を感じることが多いですよね。

中川理沙:そうですね。ちょっと前に住んでいたところが小さな川の近くだったんです。私は外で音楽を聴くのが好きなのですが、河原を歩く時の定番がアルゼンチン音楽でした。

――アルゼンチン音楽からの曲作りの影響はありますか。

中川理沙:実は少し意識したことはあります。以前、NHK Eテレの『シャキーン!』という番組に、「速度のうた」という曲を作ったのですが、それはアカ・セカ・トリオの「Carcara」という曲を参考にしました。子どもたちが聴く音楽に、普段あまり聴く機会がない世界の音楽のエッセンスを入れたいなって思ったんです。そういうのが大人になった時に、「あっ、こことつながっているんだ!」って感じることが自分も多かったから、この番組の曲を作る時はそういう面白いことをしたいなって考えています。ただ、こう言わないと誰も気づかないと思うんですけれどね(笑)。

――今回のニューアルバム『映像』には、ブラジル音楽のエッセンスがかなり入っているように思うのですが、そこは自覚されていますか。

中川理沙:自分ではよくわからないんですが、敢えて言うならやっぱり「蜃気楼」ですね。この曲は、去年全然曲が作れない時期があって、ひたすらボサノヴァ・ギターのコードが書いてある本を見てひたすら練習していたんです。それでコードの型みたいなものを多少は覚えたので、ギターを弾いていたら自然とできた曲です。だから、あの曲はブラジル的なコードでできているんじゃないかなと思います。

――かなり複雑な曲ですよね。

中川理沙:ミツメと一緒に作った曲なんですけれど、私がデモを作ってアレンジをしてもらって、それをまた返してもらうというやり方をしました。でも、普通に2拍子で作って送ったら、ミツメが3拍子にして返してきたんです。「3拍子にしか聞こえなかった」って(笑)。

――たしかに変拍子かなって思うくらい、リズムが取りにくいですね。

中川理沙:アレンジは3拍子になったんですが、いまだに私は2拍子でしか歌えなくて、だからちょっと変な感じに聞こえるんだと思います。

――最初のコーラスの浮遊感も独特ですね。

中川理沙:コーラスはもともと私がデモに入れていたものです。これまでは言葉がないスキャットみたいなものはあまり作ったことがなかったんですけれど、そういうのが自然に出てきたのはブラジル効果かもしれないですね。

――アルバムの他の曲はどうですか。例えば冒頭の「風を呼ぶ」とか少しブラジルっぽいところもありそうですけれど。

中川理沙:あれはラルク(L'Arc-en-Ciel)っぽいかも(笑)。

――えっ、また意外なところがでてきましたね(笑)。

中川理沙:実は、アルバム制作の時にラルクが聴きたいモードでかなり聴いていたんです。あのベースのうねりや疾走感はかなりラルクが入っています(笑)。

――でも聴く人にはそうは伝わらないんじゃないですか。

中川理沙:でも、ある人から言われたんですよ。「ラルクみたいだけど、ブラジルっぽさも感じるよ」って。

――それはめちゃくちゃ的確な指摘ですね(笑)。

中川理沙:他の曲だと、「ミュージカル」も少しブラジルは入っているかもしれないですね。

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