韓国アイドルと事務所を巡る問題に解決の兆しは? SUPERNOVA、2PMらの動向を機に考える
韓国の6人組男性グループ超新星が、英語表記であるSUPERNOVA(スーパーノバ)に改名した。契約期間が残っているソンモ以外のメンバー5人がMAROO企画との契約を5月末で満了。事務所の退所に伴い、5人は“超新星”のグループ名が使えなくなってしまったという。今後は自ら立ち上げた新事務所・SV ENTを窓口にして日本での活動を行っていく。なお、“超新星”の名前がどうなるのか、ソンモが合流するのかについては現在未確定の模様だ。韓国の芸能界では、グループ名の使用についての問題が定期的に発生している印象があるが、そもそもグループ名やアーティスト名は誰に権利があるものなのか。エンターテインメント業界に詳しい弁護士の小杉俊介氏は次のように話す。
「まず、日本の芸能界では、事務所のほとんどが契約の時点で本名含め芸名を使う権利は事務所に属するものとしています。逆にそういった契約がなければ、芸名はアーティストのものとなります。アーティストの権利の代表例にパブリシティ権(有名性に対する権利)がありますが、日本の芸能界では、先行投資で有名にしてその有名性を使ったビジネスが展開されている。だからこそ事務所側の投資は守られなければならないという意識があるんです。韓国も芸能界は事務所の力が強いことで有名ですが、アーティスト名の権利が事務所に属するという決まりや、事務所の投資が守られるという部分が日本とよく似ています。一方、アメリカではアーティストが事務所よりも強い力を持っていることが多い。それが成り立つのは事務所が育成に手をかけてなくてもよいという状況があるからでしょう。英語圏は市場が大きいため、自由競争に任せて出てくるアーティストと契約を結べばいいのです」
芸能事務所が基本的にアーティストを抱えて育てるという仕組みを持った日本と韓国。しかし、韓国ではデビュー前に設けられた“練習生制度”によってダンスや歌唱力などを徹底的に鍛える仕組みが整えられていることで、事務所の力がより強くなっているのだとK-POP事情に詳しいライターの西門香央里氏は語る。
「韓国の練習生制度はSMエンターテインメントのイ・スマンがジャニーズの養成制度を参考にして取り入れたのが最初と言われています。それ以来、アイドルはデビュー前から事務所がお金と時間をかけて育成することがスタンダードになってきました。タレント一人あたりにかかる育成費は1000万円以上とも言われていますが、お金をかけてもデビューできるとは限らない。デビューできずに辞めていくタレントもいる中、デビューすることでやっと育成費を回収し始めることができるのです。BIGBANGのG-DRAGONのように、SMエンターテインメントで5年、YGエンターテインメントで6年、計11年の練習生期間を経てデビューを果たすこともあります。通常、ブレイクしてもすべてを回収するまでに2~3年はかかるそう。だからこそ精算できるまでの縛り、契約上の縛りが日本よりもシビアなのではないでしょうか。EXOの元メンバー・タオが事務所を相手取って裁判を起こし契約途中で辞めようとしましたが、敗訴したという事例もあります」
韓国では、東方神起やBEASTなど、これまでにも多くのアイドルグループたちがグループ名の使用について事務所と争ってきた。それらのほとんどが、今回のようにグループのメンバーの一部が元の事務所に残り(グループ活動自体を続ける場合も)、そのほかのメンバーが新たな事務所に移り活動を続けていく際、グループ名を使用しようとしてトラブルになっているのだ。しかし、ここ最近、新たな動きがみられると西門氏は続ける。
「2PMのメンバーでJYPに所属していたテギョンが、今年の7月に51Kとの専属契約を発表しました。その他のメンバーがこれまでどおりJYPで2PMの活動を行うことはもちろん、テギョンも2PMでの活動を続けていくとのこと。今まではメンバーが事務所を移籍するとグループ活動を続けることができなかったので、この仕組みが成功すれば一つ新たな流れが生まれることになります。また、かつてSMエンターテインメント所属だった神話は契約満了後、2011年にメンバーたちが共同出資で神話カンパニーという神話専用のマネージメント事務所を設立。個人では各メンバーがバラバラの事務所に所属するというスタイルをとりながらも順調にグループ活躍を続け、今年デビュー20周年を迎えました。圧倒的な力を持つ事務所に所属するだけでなく、個人事務所設立や事務所を横断するスタイルなど、選択肢が増えることでグループが活動を続けられる環境が整っていくかもしれません」