増加する大型フェス、ヴィジュアル系シーンをどう変える? BugLug主催『バグサミ』から考察

 オーガナイザーのBugLugは大トリとして登場。1曲目の「KAIBUTSU」から、ステージに向かってオーディエンスが押し寄せるカオティックな様相を生み出す。そこからも5人はハードナンバーを連発。「言刃」や「Die s Kill」といった最新アルバム『KAI・TAI・SHIN・SHO』の収録曲や、「ギロチン」「絶交悦楽論」など、ライブの鉄板曲を一気に畳み掛けていく構成で、フロアを沸きに沸かせていた。MCでは、オーディエンスと出演バンドへ感謝を告げた後、「ヴィジュアル系をどんどん盛り上げたいし、“ヴィジュアル系って最高なんだよ!”と広めたいと思っていたけど、俺ら個人でそういうことを頑張ろうとしても、何の意味もないことがわかった。みんなパワーがあるし、いいものを持っている。そんなバンドと一緒にライブをすることで、もっとシーンが発展するんじゃないかなと、俺は思ってます」と一聖。最後は「『バグサミ』という名前ではあるけど、今日はここにいる全員が主人公だから」ということで、全出演バンドがステージに集合し、アッパーチューンの「猿」で大円団を迎えた。

一聖

 「今後も続けられたらいいなと思っている」という一聖の発言もあり、次回開催にも期待を寄せたいが、これからの流れとして、ヴィジュアル系シーンの発展を目指したアーティスト主導型イベントが増えていく可能性は、大いにあるだろう。より大規模なフェスとして行なわれるかもしれない。現状、『【beauty;tricker】~渋谷が大変~』や『びじゅある祭』といった、毎年開催されている大型フェスがヴィジュアル系にもあるのだが、筆者としては、より多くの人たちが足を運びやすいイベントがもっと必要なように感じているので、その流れは大歓迎だ。もちろん、ただ開催するだけでなく、リスナーがシーンをより楽しめるようなホスピタリティ面の向上や、ヴィジュアル系未体験の人たちがいまシーンで盛り上がっている音楽に触れやすくなるような環境づくりをすることが必要になってくるとは思うが、まずは活動しているバンドが活性化を推し進めようとする意志を持っていることが、なによりも大切だろう。熱い血が通い始めたヴィジュアル系シーンは、ここからまた何かが動き出すかもしれない。

■山口哲生
ライター/編集。音楽雑誌編集を経てフリーランスに。邦楽をメインに、雑誌・WEB・ファンクラブ会報などで幅広く執筆中。1981年生まれ。愛知県出身。新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手と地元が一緒。嬉しい。

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