Ivy to Fraudulent Gameはバンドの美学を徹底的に追求する Zepp DiverCityワンマンレポ

 「じゃあ、新曲です聴いてください」そうあっさりと紹介し、アルバム未発表の楽曲を演奏する4人。バックスクリーンに高原の映像を映し出しながら、シューゲイザー的なウォール・オブ・サウンドと、ポストロック的な幾何学アンサンブルを交互に繰り出していく。さらに、「もう1曲サプライズを用意しているんだけど」と言って披露したのは、寺口が初めてバンドのために持ち寄ったという曲。演奏中に寺口が「ちょっと明るすぎるかな」と客席に向かって照れくさそうに語りかけていたのが印象的だった。

 ライブ後半は、駆け上がるシンセのフレーズと、抑揚たっぷりのメロディが特徴の人気曲「革命」や、変拍子が入り混じるプログレッシブな「青写真」などを畳み掛け、1stミニアルバム『行間にて』から「青二才」で本編は終了。アンコールでは、彼らがまだ10代の頃に書いたという「trot」と、美しく叙情的なメロディの「故郷」を演奏し、この日の公演は幕を閉じた。

 「今日で空っぽになっちゃうくらい“今を生きている”と思えたし、今日という日に僕たちを選んでくれた、あなたの前で歌えて良かったです」。本編後半で寺口がそう挨拶した通り、今のIvy to Fraudulent Gameが持てる“すべて”を出し切ったような、密度の濃いステージだった。

(写真=Yusuke Satou)

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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