King & Prince、デビューシングルで誓う“永遠”の意味 荻原梓『シンデレラガール』評

<やがて シンデレラガール/魔法が解ける日が来たって/いつになっても 幾つになっても/ボクはキミを守り続ける>

 この一節を引っ提げて、今年5月23日に満を持してデビューを果たしたKing & Prince。真っ白な王子様風の衣装に身を包みながらテレビ番組で歌う姿は、長く日本の芸能~歌謡界を牽引してきたジャニーズの伝統をまるで継承するかのような鮮烈な登場であった。デビュー曲は、少年隊であれば「仮面舞踏会」、KinKi Kidsなら「硝子の少年」、嵐であれば「A・RA・SHI」、KAT-TUNなら「Real Face」など、ジャニーズアイドルにとってその後のイメージを決定付けてしまうほど重要である。おそらくジャニーズ事務所から平成最後のデビューとなるであろう彼らの1stシングルを聴き、彼らの登場がどのような意味を持っているのかを見ていきたい。

「キャッチーさ」ではなく「質」を感じる楽曲アレンジ

King & Prince『シンデレラガール』通常盤

 デビューで最も重要なのが表題曲なのは言うまでもない。そしてそのイントロは最大の注意が払われる箇所だ。その導入部。平野紫耀が<キミは シンデレラガール My precious one>と歌い出す。と同時に、キラキラとしたウィンドチャイムが鳴る。このランダムな音粒が徐々に整列されたハットの刻みに変化し、やがて四つ打ちのキックが現れると、それに誘われるようにしてバイオリンの美しい響きがクレッシェンドする。この見事な楽器の連携による上品なアレンジに、彼らがデビュー曲に「インパクト」や「キャッチーさ」ではなく「質」で勝負を挑もうという気概を感じた。

 その意味で、先に挙げたグループでたとえるならKinKi Kidsのような穏やかなデビューだが、<時がたてば 宝石もガラス玉さ>という一文が歌詞にあるのを見るにつけ、”宝石”も”ガラス玉(=ビー玉)”もどちらも登場した「硝子の少年」の音楽的性質をこの曲は企図しているようにも思える。ガツンと耳に訴えかけるものはないが、スッと心に染み入るセンチメンタリズムがある。力技ではない、緻密な音作りを感じ取れるのだ。

 作曲は河田総一郎と佐々木望の2人(河田は作詞も担当)。Soulifeとしてユニットを組んでいる2人で、作家としての活動はまだ数年経ったほど。代表曲には欅坂46「二人セゾン」がある。逆に、編曲を担当した船山基紀は日本の歌謡界を支え続けてきた重鎮で、彼が関わった曲を数え出したら切りがない。「日本の歌謡史の権化とも言うべき存在が、未来ある若き才能をバックアップ」。そんなテーマを今回の制作体制からは受け取れる。

「ジャニーズ的」なカップリング曲と新鮮な表題曲の対比

 カップリングの「Funk it up」は馬飼野康二が書くときのSexy Zone路線、あるいは『Are You Happy?』期の嵐を踏襲したかのようなジャニーズファンク。一方で、「YOU, WANTED!」は今風の激しいダンスナンバーだ。どちらのカップリング曲もライブでの盛り上がりが大いに期待できる曲に仕上がっている。だが、これらの2曲が非常に「ジャニーズ的」なサウンド/布陣を見せているためか、表題曲の新鮮さがより際立つものとなっている。

 特に、「シンデレラガール」全体に渡って鳴り響いている柔らかな電子音や、ボーカルを凌駕するほどのボリュームで奏でられる流麗なストリングスアレンジは、今までの「ジャニーズサウンド」にはあまり感じられなかった要素ではないか。女性アーティストに多く楽曲を提供してきた作曲者の得意分野が、中性的な魅力を持ったメンバーの多いKing & Princeのアイドルイメージをよりクリアに浮かび上がらせている。

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