ラ・ラ・ランド、スター・ウォーズ…シネマコンサートはクラシックへの入り口に? 増加背景を探る

 近年、『LA LA LAND - IN CONCERT -』、『スター・ウォーズ in コンサート』、『ハリー・ポッター in コンサート』、『「君の名は。」オーケストラコンサート』といった映画音楽を再現するコンサートが増加している。一見敷居が高いように思えるクラシックコンサートだが、シネマコンサートの増加により以前よりも身近に感じられるようになっている。そこで日本クラシックソムリエ協会代表理事を務める、田中泰氏にシネマコンサート増加の背景を聞いた。

「2000年頃に公開されたディズニー映画『ファンタジア2000』が、シネマコンサートの走りになり、じわじわ浸透していったように感じます。クラシックに新しいジャンルができた、と言っても過言ではないかもしれません。足を運んでいるのは既存のクラシックファンとは全く異なる新しい層であり、コアな映画ファンとも違う。というのも、シネマコンサートで扱う映画はあくまで近年や過去のヒット作ですから。クラシックやオーケストラに興味はあるが、何を選んでいいか分からないので、分かりやすいところから入っていこうという人が参加しているのではないでしょうか。フィギュアスケートの浅田真央選手が演技で使用した曲からクラシックに入ったりするのと似ている気がします。『ラ・ラ・ランド』や『スター・ウォーズ』では作品で使われた楽曲を再現していますが、『相棒コンサート』などは作中で使われたクラシック音楽を演奏するので、クラシックの名曲を聴くことができます」

 続けて田中氏は、通常のクラシックコンサートとシネマコンサートでは公演の選び方が異なると教えてくれた。

「通常のクラシックコンサートの場合、①誰が、②何を、③どこでやるか、という順番でコンサートを選びます。誰が、というのが一番大きくて、例えば①辻井伸行さんが、②ベートーベンを、③サントリーホールで演奏する、という順番で選んでいく。クラシックのコンサートの一覧表を見ても、演奏者やオーケストラの名前が大きく扱われているんです。ところがシネマコンサートなどの場合は、①何を、②どこで、③誰がやる、という順番で選びます。誰が、というのを選ぶには、相当な知識がないと難しい。それに比べると何を、というのを選ぶのは簡単なので入口として最適なんです」

 『美少女戦士セーラームーン25周年記念 Classic Concert』や『ドラゴンクエストコンサートなどに足を運ぶ層も、通常のクラシックファンとはやはり異なるという。こうしたクラシックの裾野を広げる試みは他にも行われている、と田中氏は続ける。

「今年で14回目になる『ラ・フォル・ジュルネ音楽祭』という世界最大のクラシック音楽祭も、まずテーマがあって、そのテーマに基づいて色々な音楽が選ばれて、それを音楽家が演奏するというように入り口を広げています。また、松竹が開催している『METライブビューイング』。これはNYのメトロポリタンミュージアムで上演されているオペラの映像を、世界各国の映画館で上演しているんです。映画館なのでポップコーンを食べたり、ワインを飲んだりしながら、通常3〜5万円のオペラを3000円くらいで観ることができる。映像なのでもちろん音などは生のものとは異なりますが、世界最高峰の最新のものを楽しめます」

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