星野源が「ドラえもん」で表現した、藤子・F・不二雄の影 歌詞に込めた思いとは?

 「『ドラえもん』、大好評ありがとうございます!」

 1月23日放送の『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)はこんな言葉で始まったが、1月16日の初オンエア後には番組に3000通以上も感想メールが届くなど、星野源の新曲「ドラえもん」(『映画ドラえもん のび太の宝島』主題歌)は発売前から大きな支持を得ている。

星野源『ドラえもん』(通常盤)

 “笑点とニューオーリンズのハイブリッド”を目指したというサウンドはコアなリスナーにとっては分析しがいのあるものであると同時に、メロディは非常にキャッチーで、つい一緒に歌いたくなる楽曲だ。メロディに加え、『ドラえもん』を思わせる歌詞には星野らしいユーモアセンスが溢れている。しかし、歌詞について星野は「聞いた人が考えて、それに当てはめたり、自分が『こうなんじゃないかな?』って思ったものを正解にしてもらえれば……」と多くを語らなかった。番組中、「ドラえもん」に関して届いたメールを読み上げ、「全部正解」と様々な解釈を受け入れていたのは、これまでの「恋」や「Family Song」とも通じる星野らしい姿勢だ。

 番組で唯一解説していたのが、冒頭の<指先と机の間 二次元>という歌詞。そもそも、「ドラえもん」は「藤子先生という影みたいなものが楽曲の中にフワッと表現できたら」という思いから作られたのだという。藤子・F・不二雄がSFを「少し不思議」と解釈していたことを思わせる、冒頭の“少しだけ不思議な”という歌詞含め、たしかにどことなくその姿を彷彿とさせる。サビの最後以外の歌詞で直接的な言葉を使わず、『ドラえもん』らしさや藤子・F・不二雄の姿を思わせる星野の手腕には改めて感嘆してしまう。

 <指先と机の間>にはペンと原稿用紙があり、その中に<二次元>の漫画が描かれていくーーキャラクターが暮らす三次元の世界、ドラえもんのもつ四次元ポケットなど、1枚の紙の中に色々な次元が同時に混在していることを曲の中で表現したかったのだ、と星野は語った。

 「ドラえもん」という新たな名曲を聴くとつい、もっと彼の曲を聴きたい、と思ってしまう。1月30日の放送では、バナナマンが登場。バナナマンといえば、日村勇紀の誕生日を記念して星野が製作した楽曲が「Family Song」や「SUN」の原型となっていることでも知られている。この日は昨年の誕生日に制作された「ラジオ」を再びオンエア。実はこの回は“星野の誕生日の放送に日村が番組に出る”、という「ラジオ」の歌詞を実現した放送だった。ラップも交えた「ラジオ」は、今後の新曲に生かされていくのか、そして今年の“日村誕生日ソング”はどんな楽曲になるのか……。つい期待してしまうが、まずは「ドラえもん」、そして『映画ドラえもん のび太の宝島』挿入歌「ここにいないあなたへ」をじっくりと聴き込みたい。

(文=村上夏菜)

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