柳家睦とラットボーンズが歌う、アウトローの悲喜交々 パンクスの心を掴む笑いとDIY精神とは?

 日本のアンダーグラウンドシーンの中で、1990年代後半からサイコビリーというジャンルが盛り上がりを見せ始めた。その一番の要因が、ライブイベント『TOKYO BIG RUMBLE』であることは、サイコビリーファンであれば誰もが知る事実である。

 この『TOKYO BIG RUMBLE』を主催していたのが、BATTLE OF NINJAMANZのボーカリストである柳家睦という男だ。

 サイコビリーという音楽は、この男がいたからこそ、ここまで日本に広まったと断言して良い。

 筆者は90年代初期にはすでに彼の存在を知っていたが、柳家は1994年にBATTLE OF NINJAMANZを結成以降、瞬く間に日本中にサイコビリーを根付かせていった立役者である。

 その柳家睦が、サブプロジェクトとして2011年に始動させたバンドが「柳家睦とラットボーンズ(柳家睦&THE RAT BONES)」である。

 この柳家睦とラットボーンズというバンドは、BATTLE OF NINJAMANZで培ったサイコビリーとは全く違うアプローチを見せ、またもや日本アンダーグラウンドシーンに旋風を巻き起こしている。

 その柳家睦とラットボーンズの5thニューシングル『そして熱海秘宝館』が、3月15日に<BIG RUMBLE PRODUCTIONS>から発売された。

【PV】柳家睦&THE RATBONES 5thシングル『そして熱海秘宝館』in熱海 ・ 2nd Albumより『夜は男の万華鏡』in USA

 柳家睦とラットボーンズの音楽は、どんなジャンルにもカテゴライズすることのできない、オリジナリティに溢れたエンターテインメントであるのだが、本人曰く「ムード歌謡」「エレキ歌謡」「アイドル歌謡」に、フォークミュージック、カリビアンミュージックのリズムを加えたレベルミュージック、アウトローフォーク歌謡ということのようだ。

 アウトローたちの昭和を彷彿させるサウンドや歌詞、メロディーは、昭和を生きた人間にはたまらないものがあり、昭和を知らない世代でもノスタルジックに浸れ、旧き良き昭和を感じとれるのではないだろうか。

 東京アンダーグラウンドシーンで活躍するサイコビリーズ、パンクス、スキンズが集まり、PINK PARTY POODLESの女性ダンサーも加えた12人以上の編成からなるステージは、経験に裏付けされた確かな演奏力とともに、睦のMCやフルートのキシとのコント的な掛け合い、踊り子の女性のインパクトなど、観客の目を釘付けにするパフォーマンスにより爆笑の渦に巻き込まれ、いつのまにか柳家睦ワールドに惹きこまれていることに気づかされるだろう。

 東京近郊での公演では、踊り子の女性がいることがほとんどなのだが、地方公演では踊り子の女性たちが参加しない場合も多い。しかし「柳家睦一座」と名乗る場合には、確実に踊り子の女性も加わったステージになるようだ。

柳家睦 & THE RAT BONES @ KAPPUNK 2016 DAY 3 (2016•05•02)

 一見ふざけたお笑いコミックバンドのように思えるかもしれない。しかし、それだけでアンダー/オーバーグラウンドシーンで名だたるバンドとの共演や、多数のビッグイベントへの出演、自らの主催公演に多くの観客を集め、アメリカ公演を果たすことなど不可能だ。

 アウトローたちの悲喜交々を、アウトローフォーク歌謡と自らカテゴライズするサウンドにのせ「笑い」という、誰もが受け入れやすい感情で訴えている。

 基本的に下ネタやお笑いが多いが、今回のシングル3曲目「お嫁に来ないか」では、ふざけたように聞こえながらも、過疎化に悩む地方の現状を笑いとエロチシズムの中、クールな視点をラテン風リズムに乗せ伝えている。

 1stシングル『柳家睦 素晴らしき男の世界』に収録されている「素晴らしき男の世界」の歌詞などは、昭和の男でなくとも感動することは間違いない名作である。

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