ガンズ・アンド・ローゼズに感じた“成熟” BABYMETALも健闘の日本ツアー最終公演を観て
さて、BABYMETALが海外アーティストのサポートアクトを務めるのは、Red Hot Chili Peppersのイギリス・ツアー、Metallicaの韓国ソウル公演に続いてガンズで3バンド目だ。この後には再び、レッチリのアメリカ・ツアーに帯同することが決まっている。
いずれも1980年代から活動を始めた、これら3バンドの歩みをふり返ってみる。まず、ガンズは、ケバケバしい衣裳やメイクが特徴で長髪揃いのためヘアメタルと呼ばれた流行における、荒ぶる異端児だった。また、過去にはガンズと一緒にツアーをしたこともあるMetallicaは、もともとは重いギター・リフを高速で演奏するスラッシュ・メタルのパイオニアだった。それに対し、ヒップホップ由来のラップをロックのバンド演奏に乗せることを一般化したレッチリは、1990年代初頭にはヘアメタルに象徴される商業的ロックに対抗するオルタナティブ・ロックの代表選手とみられていた。3バンドとも強い個性を持ち、独自のファン層とポジションを得ていたわけである。だが、バンドとしてキャリアを重ねるうちに、いずれもそれぞれの歩みかたでより間口の広いロックへと変貌していった。昔は、わかる人にはわかるといったバンドだったが、今ではほどよく大御所になり、往年の曲はビンテージ化して立ち居振る舞いも軟化したため、以前より近づきやすくなったのだ。
3バンドのボーカリストの年齢をみてみると、レッチリのアンソニー・キーディスが54歳、Metallicaのジェイムス・ヘッドフィールドが53歳、ガンズのアクセルが54歳(ちなみに、ハイスピードのメタルという点でスラッシュ・メタルに対する日本からの応答であり、BABYMETALのリスペクト対象でもあるX JAPANのYOSHIKIは51歳)。そして、SU-METALは19歳だ。3バンドとBABYMETALは、年齢からすると親子のような距離感である。
さいたまスーパーアリーナ公演終了後、ガンズのバンド・メンバー全員とBABYMETAL3人の集合写真がネットにアップされた。悪童だったあのアクセルが、ポーズをとる少女3人の後ろで保護者の1人であるかのように立っている。この組みあわせは微笑ましいものだった。
■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。