柴 那典が4つのジャンルからの影響を紐解く

ゲーム×ラウド×アニソン×アイドルの融合体!? 魔法少女になり隊の“過剰にもほどがある”世界

 「魔法少女になり隊」とは一体何者か。

 筆者が最初に彼らのライブを観たのは昨年のROCK IN JAPAN FESTIVALのステージ。第一印象は「カオス」だった。そこにはハードコアがあり、スクリーモがあり、エレクトロがあり、アイドルポップスがあり、アニソンがあり、ゲームミュージックがあり、オタ芸があり……とにかく様々な音楽ジャンルと日本のポップカルチャーが濁流のように流れ込んだ極彩色の坩堝のような存在だった。

 というわけで、この記事では9月21日にシングル『KI-RA-RI』でメジャーデビューを果たした彼らの背景にある文化を一つ一つ分析していきたい。

 まず一つ目はゲームカルチャー。これが最もわかりやすく彼らのキャラを示している。バンドのキャッチコピーは「ラウドでポップでファンタジーなRPG系バンド」である。魔女に呪いをかけられてしゃべることができない火寺バジルがボーカルをつとめ、歌という魔法を使ってその呪いをとくためにウィ・ビトン(G)、明治(G)、gari(VJ&Vo)というメンバーと共に冒険の旅を繰り広げている――というのが彼らのプロフィールだ。

魔法少女になり隊 序章

 RPGにもいろいろあるけれど、オフィシャルYouTubeに公開されている動画を見るかぎり、彼らが参照元にしているのはファミコン版の初期ドラクエ(ロト三部作)、および初期ファイナルファンタジー。つまりは8-bitゲーム機のビジュアルやサウンドをイメージの源泉にしている。

 そういう意味で彼らの先達にあたるのは、2003年に結成、2008年にメジャーデビューしたYMCK。ファミコンの8-bit音源にこだわったサウンドとドット絵のキャラクターで、「チップチューン」というジャンルをJ-POPのフィールドで成立させたユニットである。

YMCK / DOWN TOWN

 二つ目は、ラウドロック。それも「過圧縮」なミクスチャーロックの系譜を受け継いでいる。カラフルなシンセとヘヴィーなギターサウンドが融合し、デス声のシャウトとキュートな女性ボーカルが一曲の中で同居する「ごった煮」のサウンドだ。

 日本のバンドシーンにこういう潮流が生まれたのは、おそらくマキシマム ザ ホルモンの存在がとても大きい。その背景には、90年代以降「ミクスチャー・ロック」という和製英語がメディアやファンやミュージシャンの間に当たり前に広まっていたことがある。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのように、本国では「ラップ・メタル」や「ファンク・メタル」のように紹介されていたバンドたちが「ミクスチャー・ロック」という呼称で日本に紹介された。Dragon Ashのように、それを自ら名乗るバンドも多く現れた。そういう流れから00年代には「ミクスチャー」の拡大解釈が進み、いろんな音楽を雑食的に混ぜ合わせる発想が生まれてきた。それを推し進めたのがマキシマム ザ ホルモンだった。ハードコア、パンク、メタルから歌謡曲まで様々なテイストを合体させ、一曲の中に過剰な情報量を搭載する曲調を実現させた。ポスト・ハードコアにトランスやゲームミュージックを合体させたFear, and Loathing in Las Vegasや、西荻系ショートパンクとポスト渋谷系を合体させたWiennersも、やはり同じ「過圧縮」なサウンドセンスを持ったバンドと言えるだろう。

関連記事