ceroが提示する、音楽と音楽の間にある見えない“流れ” 主催イベント『Traffic』レポート

 8月11日に新木場スタジオコーストにて開催された、cero主催イベント『Traffic』。ceroが敬愛するアーティストを招き、“Traffic”と名付けたこのイベントは、その名の通り多種多様な音楽が交錯する場となった。

 メインステージには主催者であるcero、クレイジーケンバンド、Seiho(Band Set)、ランタンパレード、OMSB & Hi’Spec。入口付近に設けられたバーステージにはSTUTS(Live Set)、Dorian(Live Set)、XTAL(Live Set)に加え、DJとしてcero、MINODA(SLOWMOTION)、COMPUMA、サイトウ”JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)、MURO、MOODMANという豪華出演陣が顔を揃え、飲食ブースでもceroメンバーとの関わりが非常に強いRoji(阿佐ヶ谷)、えるえふる(新代田)などの出店もあり、フェスのような様相を見せた。

クレイジーケンバンド

 この日最初のライブアクトとしてメインステージに立ったのは、クレイジーケンバンド。1曲目から代表曲「タイガー&ドラゴン」を披露し、早速会場を温める。MCで横山剣が「ceroのアルバム全部持ってる。ファン代表で参加してます」と発言すると、会場からは驚き混じりの歓声が上がった。その後は、8月3日にリリースしたばかりのアルバムの表題曲「香港的士- Hong Kong Taxi -」も交え、「タオル」「GT」「ガールフレンド」と、涼しげなサマーチューンを次々に演奏。ベテラン揃いの安定した演奏陣と、横山の軽妙なパフォーマンスは、若い観客(会場の主な客層は10代~20代であるように見られた)の目を釘付けにし、その心を確かに捉えていた。

Seiho

 続いては、Seihoがドラム(松下マサナオ)とキーボード(Kan Sano)を引き連れたバンドセットで登場。披露されたのは主に今年5月にリリースしたアルバム『Collapse』の収録曲だ。ライブでの定番となった、花瓶に牛乳を入れ飲み干すというパフォーマンスも決め、視覚的にも彼の世界が展開される。トラックメイカーである彼が、なぜライブで生楽器を取り入れようとするのか疑問であったが、そうすることによって生まれる“即興性”が理由ではないか、と今回のライブを観て感じた。自身ではコントロール不能な要素を取り入れることによって、ライブが予定調和に陥ることを回避し、スリリングなものにする。そして、会場で誰よりもそのスリル/ある種の楽曲の崩壊(=Collapse)を楽しんでいるのは、他でもないSeiho自身であるように思われた。

ランタンパレード

 その後、アコースティックギターを抱えたランタンパレードが、ウッドベース、ドラム、エレクトリックギターを含む4人編成でステージへ。先ほどのSeihoとは一転して、アコースティックで柔らかな音色が会場に響く。ランタンパレードこと清水民尋の歌声は、実際に生で聴くと予想以上に力強く、耳元までダイレクトに届く印象だ。最後に披露したリズミカルな代表曲「甲州街道はもう夏なのさ」では、ギターのイントロが流れた時点で拍手が起こるほどの盛り上がりを見せ、余韻を残したままステージを去った。

OMSB & Hi’Spec

 続いてステージに立ったのは、SIMILABのメンバーでもあるOMSB(MC)とHi’Spec(DJ)。OMSBは「この規模を1人でやるのは初めてなんすよ」と少し緊張する様子を見せるものの、ひとたびHi’Specがトラックを流すと堂々とした身のこなしで、序盤からコール&レスポンスで会場に一体感を生み出す。OMSBが一番好きな曲だという「Think Good」、地元・座間市のことを歌った、Hi’Specとの共作曲「Goin Back To Zama City」など、人気曲を次々披露。質量すら感じさせる重いビートにOMSBのフロウが絡みつくと、体を揺らさずにはいられない。

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