藍井エイルの「翼」なぜ大反響? ポップシーンの“新たな担い手”を読み解く
各所で大きな反響を呼んだNHKの音楽番組『SONGS』6月9日放映の『アニソンSP』。トップバッターを飾ったシンガー・藍井エイルを番組は「アニソン界のニューヒロイン」と称した。
決してその言葉は大仰ではなかった。かかる期待以上に、藍井エイルは目覚ましい活躍ぶりで、大舞台へと歩みを進め続けている。
昨年だけを振り返っても、5月のミュージックステーション出演、自身初となる世界ツアー『ROCK THE WORLD!』は10カ所でのべ5万人の動員、11月には初の日本武道館単独公演『WORLD OF BLUE』を成功させ、年末には『COUNTDOWN JAPAN 15/16』という国内最大級のロックフェスにも出演と、まさに充実の日々。
今年に入ってからはさらなる熱を増す。今春にかけて行われた全国ツアー『D'AZUR-EST』は軒並み完売、追加公演となったNHKホール単独公演も大成功を収めた。5月にはニューヨークでの単独公演も実施、「エイ・エイ・ルー!!」と現地のファンが声を張り上げる姿は今月13日出演した日テレ系『スッキリ!!』にて放送された。間髪入れずに16日には TBS『音楽の日×CDTV』にも出演。さらにはつい先日のMステ生出演。Twitter上は“すごい歌声!”という賛辞の言葉であふれかえる。改めて彼女の力強い歌声は、多くの人の心に届く訴求力を持っていることを証明する一夜となった。
世間での注目度も高まる中、その勢いを象徴するかのように放たれた待望の新作「翼」は、iTunes総合を始めとした各配信チャートで、西野カナ「Have a nice day」やE-Girls「E.G.summer RIDER」ら並みいる強豪を抑え19冠に輝く快挙を成し遂げる。iTunesチャートでは今稿執筆の段階(7月25日)も不動の1位。藍井は期待の新星から次代のアニメソング界、ひいてはポップミュージックシーンを担うべき存在へ成長したのだ。
なぜここまで「翼」は大きな反響を呼んでいるのか? それは彼女の歌声はもとより、多くの人へと歌を届けることを意識したメッセージソングだからだ。
まず、キービジュアルからして何かが違うと感じさせる。彼女の持つクールさ、繊細さといったイメージをパッケージしてきたジャケット。しかし「翼」での藍井の表情は逞しさをたたえている。キッと前を見据えた目には力強さが宿る。強い覚悟や意思を感じさせる作品である、ということを視覚からまず訴えてくる。
そして藍井の歌唱も、今までにない新たな側面を見せることに。彼女の最大にして最高の武器としてあげられる、天を突き抜けるような伸びやかな高音。しかし「翼」ではその武器はなりを潜め、情感あふれる声で物語の到来を告げるAメロ、繊細で美しく響く低音から、徐々に高まる情感がクライマックスへと走り出すBメロ。そしてエモーショナルながら決して張り上げず、一言一句に重みを感じさせるサビでの歌声……と、今まで以上に“言葉が持つ想いを届ける”ことに注力したかのような声を響かせている。