LOUDNESS高崎&二井原は、なぜ世界で戦い続けたか? 「『もっと行けるはず』というのが自分たちの中にあった」

二井原実(左)と高崎晃(右)。

「これは企画モノではなくてニューアルバム」(高崎)

──今回、35周年企画の一環としてセルフカバーアルバム『SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔』がリリースされました。ちょうど昨年秋に二井原さんにインタビューした際に「35周年記念アルバムを準備していて」と話していたんですが、それがこのアルバムなんですね。

二井原:ですね。その頃、ちょうどこのアルバムのミックス作業中だったんですよ。

──ということは、かなり早いタイミングからレコーディングが始まっていんたですね?

高崎:去年の6月ぐらいから制作が始まったのかな。でも『THUNDER IN THE EAST』の30周年企画もあったので、ツアーの合間にスタジオに入って録り続けてたんです。

──今作の初期3作からの選曲というテーマには、どういう意図があるんですか?

高崎:『DISILLUSION〜撃剣霊化〜』(1984年発売の4thアルバム)以降は音の密度感もあって自分たちも満足してるんだけど、それ以前の作品は録音技術の部分でも「今だったらもっとこんな音にできるのにな」っていうことを思うことが多くて。それと、最初はスタッフのほうから「デビューアルバムをもういっぺんリメイクというか再レコーディングできへんか?」っていう話をもらって。そんな中で自分たちの意見としては「1stだけをリメイクするんだったら、初期3枚の中からセレクトしたアルバムにしたほうが面白いんじゃないか?」と。そういうところから始まったんですね。

──なるほど。LOUDNESSはこれまでも『ON THE PROWL』(1991年発売の9thアルバム)や『ROCK SHOCKS』(2004年発売のセルフカバーアルバム)で、その時代のメンバーで過去の楽曲を再レコーディングしてきました。前者は2代目シンガーのマイク・ヴェッセーラが英語詞で歌い、後者は2004年当時のスタイルであるローチューニングでリメイクするという特色がありましたが、今回の作品はそういった過去のリメイクとは趣旨が異なる気がしますが?

二井原:そうですね。基本的にオリジナルに近い形で録り直していて。アレンジもそんなに変えてないし、キーも原曲のままだしね。

高崎:『ROCK SHOCKS』のときは全体で1音、曲によっては2音下げて弾いてる曲もあったし、アレンジも根本的に変えたものもあった。でも今回はできるだけオリジナルに忠実でありながらも、そこに今の自分たちのエネルギーを注ぎ込んで、今の録音技術で音の密度感を高めて作ろうと思ったんです。だから自分たちの中では“企画モノ”って言いたくなくて、本当にLOUDNESSのニューアルバムという気持ちで作りました。

二井原:普通にセルフカバーしただけだったら1曲目は「LOUDNESS」から始まるんだろうけど、今回は「STREET WOMAN」というマニアックな曲から始まるというところにこだわりが出てますしね。

「あの頃はあの頃にしか出せない、鬼気迫る表現があった」(二井原)

二井原実。

──この選曲は、皆さんの中ですんなり決まりましたか?

二井原:8割方はスッと決まったよね。やっぱり人気の曲は外せないじゃないですか。それをピックアップするだけで8割方埋まってしまうから、残り2割はタッカンや他のメンバーから「これはどうや?」っていう曲が上がったり。

高崎:「LOVING MAID」(『DEVIL SOLDIER~戦慄の奇跡~』収録曲)も入れたほうがええんちゃうかとか、いろいろあったんですけどね。僕個人は「ROCK THE NATION」をすごくやりたくて。今の俺らだったらあの頃より良い作品にできるんじゃないかと。ニィちゃんの今の歌があの曲ですごく生かされるだろうってこともだいたい想像できてたし、実際すごく良くなりましたよ。

──30数年前の曲を今演奏すると、また当時とは違った感じ方もあるのかなと思いますが?

高崎:なんかひねくれた曲ばかりですよね(笑)。何かしら途中で変化球が出てきたり、いろんなところに飛んでまた戻ってきたりする曲が多いし。でも、いちファンとしてデビュー作から3枚目は本当に好きやし、だから今回はめっちゃ楽しく制作できたんです。締め切りに追われて作ったわけではなく、満足できるまでずっと作業を続けられたし。別に自分たちだけで楽しんで、(CDとして)出さんでもええんちゃうか?ってぐらいでしたよ(笑)。

二井原:以前『PRIME CUT MASTERPIECE SESSIONS~dedicated to Munetaka Higuchi』(2014年12月発売)というDVDで、スタジオライブ形式で過去の楽曲(「SPEED」「ESPER」「LIKE HELL」など計5曲)を再レコーデイングしたんだけど、実はあれがすごく楽しかったんですよ。あのときに「今こういうことをやったら、すごく良いのができるんじゃないかな?」と思っていたので、今回のアルバムのアイデアが挙がった時は「これは絶対に良いものができる!」とやる前から予感がありましたね。

──実際に聴いてみると曲自体に古さはまったく感じられないし、原曲に忠実なアレンジ、構成だけど要所要所に今ならではのプレイやアイデアが散りばめられています。「IN THE MIRROR」なんて二井原さんが歌っているのに、マイク・ヴェッセーラ時代のテイクに入っていたコーラスが取り入れられていて、すごく興味深いアレンジだと思いました。

二井原:ですよね(笑)。そういう絶妙なバランス感で成り立っているアルバムだと思いますよ。

高崎:今回は骨組みを原曲からそんなに変えてなくても、ギターに関して言えばソロは今の感性で弾いてる部分も多いんですよ。それと、昔よりもより説得力がある音になって変わった部分もあると思う。

──確かに1音1音の重みは増してますよね。当時の音源は若さゆえのストレートさもありましたけど、今はボディブローのようにじわじわ効いてくる音というか。

高崎:そうかもしれないね。もちろん若い頃のほうが良かった部分もあるとは思うんやけど、今しか出せない味というのも出てきてると思う。

二井原:あの頃はあの頃にしか出せない、鬼気迫る表現があったと思うし。さすがに35年経つと声も変わってくるしね。

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