いよいよ日本上陸へ Spotifyの現状と強みを改めて分析してみた
また、日本では『LINE MUSIC』『AWA』など自国発のサービスが次々とローンチされ、“定額制音楽配信サービス”という仕組み自体の認知が広がり、Spotify上陸騒動があった2014年ごろとはまったく違った状況になっている。これから『Spotify』が後発のサービスとして参入した場合、どのような展開が予想されるのか。鈴木氏は『Spotify』の特徴を踏まえ「Spotifyが日本で浸透するまでに、少し時間がかかるのではないか」と解説する。
「Spotifyはこれまで“先行逃げ切り型”として、マーケットにいち早く参入し、フリーミアムやSNSの連携機能を使いつつ浸透していくという勝ちパターンを取ってきました。しかし、日本だと『Apple Music』などのサービスが先行していること、端末としてもiPhoneのシェアが非常に高いことから、レコメンデーション機能を気にしないユーザーにとっては『Apple Music』がファーストチョイスであり続ける可能性が高いです。日本ではテレビCMなどマス広告の効果も高いため、ライトユーザーをどのように引き付け、獲得するのかが重要になってくるでしょう。機能面では、邦楽のデータベースをどのような形式で収集し、キュレーションの精度を高めるのかどうかが気になります。フリーミアムのビジネスモデルとともに、サブジャンルまでしっかりと行き届くのであれば、マーケットを制する可能性は高まりそうです」
最後に、鈴木氏は『Spotify』の特徴でもある「フリーミアム(原則無料で一部機能が有料)モデル」が日本でも導入されるかどうかについて、こうコメントした。
「2015年にローンチした国内サービスの動きを見ていると、現在は『有料課金をしたくない』という層のほうが多いという印象です。しかし、イギリスなどにSpotifyが参入したときも、最初は『価格が高い』と批判されながらも、2~3年の時間を経て、サービスの内容や定額制という概念が浸透し、”適正価格”と思えるユーザーが多くなったそうです。日本は定額制サービス自体が始まったばかりなので、浸透もまだまだこれからですし、価値をユーザーが理解するまではもう少し時間がかかるのかもしれません。YouTubeや脱法ストリーミングアプリも成長の障壁になると考えられるため、そのあたりをどのように突破してくるのか、楽しみにしたいですね」
海外に遅ればせながら、2015年の『音楽ストリーミングサービス元年』を経て、変容の一端を見せつつある日本の音楽シーン。今回の『Spotify』参入報道が真実ならば、2016年もまた、音楽シーンが大きな変革を遂げるための重要な一年になりそうだ。
(文=中村拓海)