女性アイドルはなぜ“走る”のか? AKB48、ももクロらの楽曲から考察

 近年は、数え切れないほどの女性アイドルたちが活躍しているが、人気アイドルの“楽曲”を聴き続けると浮かび上がってくる、ひとつの疑問がある。それは、「アイドルたちはなぜ走るのか」ということだ。楽曲によりその目的は様々だが、彼女たちはとにかく走る。本稿では「アイドル戦国時代」が叫ばれ始めた2010年前後から現在までを区切りとし、時系列をたどりながら、その意義を考察してみたい。

 今日に至るアイドルブームの象徴的な存在として、目立つのはやはりAKB48である。結成こそ2005年12月8日までさかのぼるが、ブレイクのきっかけとされるのは2008年10月22日発売の『大声ダイヤモンド』だ。まさに“青春まっただ中”というイメージの疾走感溢れるメロディに乗せて歌われるのは、プロデューサー・秋元康ならではの特徴ともいえる一人称の“君”と“僕”が歌詞の中に共存する世界観。サビのフレーズを思い起こせばわかるように、この曲も主人公が“走る”楽曲のひとつである。

 片想いというシチュエーションを連想させるこの曲の主人公は、伝えたくても伝えられない、もどかしい恋心を届けたい一心で、相手の元へと全力で走る。辿り着いた先で叫ぼうとする自身の気持ちこそがタイトルの通り「大声ダイヤモンド」となるが、この曲で走ろうとするのは純粋かつ素朴な理由だ。つまり、溢れ出る気持ちを抑えきれない衝動から“走る”に至っている。

 それは、いわゆるアイドルソングないし女性ボーカルの楽曲において、王道ともいえるテーマ“恋愛”をストレートに想起させるものである。しかし、その後リリースされたいくつかの“走る”楽曲をたどってみると、次第にその意義が新たに広がっていくさまが垣間見える。

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